なぜ甘い? 映画やドラマの鉄道考証──蒸気機関車C62形「129号機」のナゾ:杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)
映画やドラマの「鉄道考証」は、なぜズサンなのだろうか。制作側にも諸事情ありそうだし、駅や列車の場面は重要ではないかもしれないが、鉄道ファンには気になる。でも見方を変えると、そのズサンなところに資料的な価値が見つかったりもする。やっぱり映画は面白い。
『銀河鉄道999』と『大いなる驀進』のナゾ
「C62形」蒸気機関車といえば、デゴイチことD51形と同じくらい有名な機関車だ。鉄道に興味がなくても、松本零士作の漫画『銀河鉄道999』のスリーナイン号を牽引する機関車といえば分かる人も多いはず。「もう帰らない乗客のために、最新鋭の技術を使いながら、わざとノスタルジックな外観にした」という設定だ。このC62形のナンバープレートは「C62 48」。つまり48号機である。これは松本零士氏が実際にコレクションしている本物のナンバープレートが由来という。
ところが、テレビアニメ版のスリーナイン号は「C62 50」になっている。なぜ50号機かというと、実際のC62形蒸気機関車は49号機まで存在していたからだ。その続き番号として、スリーナイン号は50号機となった。アニメスタッフのC62形への敬意が込められている。そして劇場版では48号機に戻った。これは原作を踏襲したと言うことか。あるいは、テレビ版と映画版は別の話ですよ、と示唆したかったか。
このC62形が登場する映画で、もう一つ興味深い作品がある。1960年公開の『大いなる驀進』だ。鉄道マンの奮闘ぶりが描かれた作品で、主演は中村嘉葎雄、当時の芸名は中村賀津雄。歌舞伎役者 中村獅童のおじにあたる。マドンナは佐久間良子だ。中村はブルートレインの車掌で、上司の車掌長は三國連太郎が演じた。三國はこの半年前に、実話を元にした鉄道マンの半生を描く『大いなる旅路』にも主演している。当時の国鉄はこの映画を高く評価し、半年後に国鉄の全面協力で『大いなる驀進』が作られた。
『大いなる驀進』の舞台は東京発長崎行きのブルートレイン「さくら」だ。前述した『喜劇急行列車』の数年前のこと。東京からはEF58形電気機関車が牽引する。しかし、当時の電化区間は岡山まで。岡山からはC62形蒸気機関車にバトンタッチする。この蒸気機関車のナンバープレートがおかしい。「C62 12x」と読めるが、1の位は画面の縁に隠れてしまって識別できない。DVDでストップモーションをかけて見たりもしたけれど、どうもハッキリしない。
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