1日約100万人に「ネスカフェ」を広めるアンバサダーたち:なぜ人は“動く”のか(1/2 ページ)
「ミリオンセラー」ともいわれるように、100万は大ヒットを示す1つの指標である。それだけに当然ながら、一筋縄では動いてくれない。複雑さを増してくるメカニズムを掘り下げていこう。
集中連載「なぜ人は“動く”のか」について
本連載は、本田哲也、田端信太郎著、書籍『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋、編集しています。
映画『アナと雪の女王』は、なぜ1000万人を動かしたのか?
LINEは、なぜ4億ユーザーの心をつかんだのか?
誤発注されたプリンは、なぜ完売したのか?
インターネットの普及などにより流通する情報量が爆発的に増える一方、生活者はネットやHDDレコーダーなどを活用し、自分で情報を選択するようになっています。そんななか、旧来のマス広告やメディア露出では、昨今、人は動かなくなっています。
大々的な広告キャンペーンやメディア展開をせずに人を動かすことに成功した事例を、1000人、1万人……、1億人、10億人と、スケールごとに分析。生協のプリン誤発注からアナと雪の女王、LINEまで、そのヒットの秘密を探っていきます。
広告・メディア業界人はもちろん、企業経営者、マーケティング担当者も必読の一冊です。
コンビニエンスストアがいれたてコーヒーの販売を本格展開するなど、競争は激しさを増す一方のコーヒー業界。ネスレ日本は「ネスカフェ アンバサダー」という独自の制度を展開する。アンバサダーは「大使」の意。応募すると「ネスカフェ」のコーヒーマシンをオフィスで無料使用できる。ネスレ日本はマシン専用のコーヒーカートリッジを販売し、収益を得る。コーヒーの値段は1杯あたり約20円。
オフィス需要を狙った食品ビジネスを展開する企業は少なくない。しかし、従来のサービスとの大きな違いは、コーヒーカートリッジの購入から補充、集金までアンバサダーにすべて任せる点だ。
この制度は2012年11月に本格スタートし、約1年半でアンバサダーは約10万人に達した。それぞれの職場で1つのコーヒーマシンを10人が使用すると考えると、1日で約100万人が「ネスカフェ」を飲む計算になる。
アンバサダーの役割は「職場におけるコーヒーの世話役」にとどまらない。ネスレ日本では、アンバサダーを対象とするグループインタビューやアンケートを実施。新商品やサービスなどのアイデアについても意見を求める。また、全国10カ所でサンクスパーティを実施。アンバサダーやその家族、友人約5000人を招待し、手厚くもてなす。
2013年12月にはカプセル式ティー専用マシン「ネスレ SPECIAL.T(スペシャル.T)」を利用できる新コースを開設。紅茶や日本茶の分野でもオフィス需要の拡大をはかり、2014年夏には、アンバサダーを通じて、オフィスにアイスコーヒー用の冷蔵庫も設置する。
ざっくり言うと……
- ネスレ日本は「ネスカフェ」のコーヒーマシンの無償提供を実施。
- スタートから約1年半でアンバサダーは約10万人に到達。
- アンバサダーは新商品への意見を求められるなど、役割は多岐にわたる。
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