インタビュー
どんな人が向いているの? 葬儀会社で働く人が感じる壁:仕事をしたら“葬儀を安く”できた(後編)(3/5 ページ)
数年前に映画『おくりびと』がヒットしたが、葬儀会社で働くのにはどんな人が向いているのだろうか。葬儀業界で40年近く働いているティアの冨安社長に話を聞いた。
経験者は採用しない
土肥: 同業他社で働いた経験がある人は採用しないそうですね。それはなぜですか?
冨安: 他社で働いた経験がある人は「葬儀とはこういうもんだ」という考えが固まっているから。「この部分は省いてもいいや。遺族には分からないから」といった感じで、横着するんですよね。
土肥: どういった部分を省こうとするのでしょうか?
冨安: やっても手当てにならないことは、やらないんですよ。逆にいうと、お金に換算できなくても、このことをやれば遺族は喜んでもらえる、ということをやりません。
弊社でこんなケースがありました。ある家族の父親が亡くなったので、担当者は「お父さんは、どんな方でしたか?」と遺族にヒヤリングをしました。その人は不動産屋を経営されていて、仕事一筋でした。釣りやカラオケといった趣味はなく、とにかく仕事ばかり。家と会社の往復でしたが、毎朝とある喫茶店でモーニングを食べていたんですよ。それが日課でした。
そこで、担当者は早出をして、その喫茶店に足を運び、オーナーにこのようなことを言いました。「故人の霊前にモーニングセットをお供えしたいんです。ご用意していただけますか?」と。
こうしたことって、損得勘定を考えればなかなかできないことですよね。朝早く起きなければいけないし、手当てはつかないし、面倒なことだし。でも、遺族に喜んでいただきたい、という気持ちがあったから、その担当者は動いてくれたんだと思っています。
関連記事
- 葬儀代を明朗会計にした会社――すぐに“嫌がらせ”をされた
不透明な葬儀業界において、明朗会計で料金をガラス張りにした会社がある。それは、名古屋市に本社を置く「ティア」。葬儀代金をオープンにして、価格を安くしたら、すぐに“嫌がらせ”を受けたという。同社の冨安徳久に話を聞いた。 - なぜ世の中に悪い人は少なく、いい人が多いのか
「また騙された。正直者がバカをみる世の中はおかしい」と感じたことがある人も多いのでは。トクをするのであれば悪い人が増えそうだが、この世はいい人のほうが多い。なぜか? そこで動物の行動に詳しい、竹内久美子さんに人間の生き方を聞いた。 - 「映画は熱意で大きくなっていくもの」――滝田洋二郎監督、『おくりびと』を語る
第81回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の滝田洋二郎監督は4月16日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見を行った。アカデミー賞受賞の反響や死生観について語った会見の内容を詳細にお伝えする。 - “葬式鉄”に学ぶ、不要なモノと別れる方法
鉄道路線や寝台特急の廃止が決まると、全国から鉄道ファンが集まってくる。そうしたファンのことを“葬式鉄”と呼ぶ人がいるが、彼らが行う儀式にモノとの別れ方の手本があるかもしれない。 - 「家族葬」とは? 押さえておきたい注意点と落とし穴
家族が亡くなったとき、身内だけで見送りたいという「家族葬」を望む人が増えています。ただ、実際には一般的な家族葬のイメージとはギャップがあるようです。こんなはずでは……ということにならないよう、家族葬とその注意点について紹介します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.