ICTの新たな潮流か──企業や行政機関が「フューチャーセンター」を推進、なぜ?:松岡功の時事日想(3/3 ページ)
企業や行政機関で「フューチャーセンター」と呼ぶ施設を設ける動きが活発化している。取り組むのは「オープンイノベーション」だ。この2つの言葉はこれから注目のキーワード。国内最大級のフューチャーセンターを運営する富士通エフサスの今井社長にその狙いを聞いた。
フューチャーセンターに見るリアルコミュニケーションの復活
こうした規模や最新設備もさることながら、同社の施設が他のフューチャーセンターと異なるのは、(Fureken Labに見られるように)同社社員の「人財研修の場」であり、そこで蓄積した人財育成のノウハウをフューチャーセンターでも活用していることだ。前述した施設の正式名称に「イノベーション」が入っているのは、それを意図している。
実はこのイノベーションという言葉が、同社がフューチャーセンターを開設したきっかけにもなっている。今井氏によると「当社はかねて保守サービスを中心に事業を展開してきたが、ICT市場の変化にともない、もっと幅広くBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)もにらんだトータルサービスを手掛ける必要があると考え、この数年、経営の舵を切ってきた。当社にとってまさに“サービスイノベーション”を起こす必要があった」と言う。
そこで同社は、2010年にサービスイノベーションを企画・推進する専任組織を設け、社外の有識者なども招いた形で、全社員一人ひとりが現場起点でイノベーションを実践できる組織を目指す「サービスイノベーション・フォーラム」を2011年に開始した。このフォーラムを重ねる中で、オープンイノベーションを取り入れ、フューチャーセンターを開設する道筋ができたという。
では、フューチャーセンターを開設して約1年が経った今、成果のほどはどうか。「開設して1年の区切りで見ると、ワークショップはおよそ200回を数え、4000人以上のお客様をお迎えできた。その数字もさることながら、当社の社員がこの施設を通じてお客様に自信を持ってサービスイノベーションを説明し、お客様の課題に対応した提案をしっかりと行えるようになってきたと実感している」(富士通エフサスの今井社長)と確かな手応えを感じているようだ。
その一方で「これからはサービスイノベーションを推進する“サービスマネージャー”のような人財をもっと増やしていく必要がある。そのためには、フューチャーセンターを軸にオープンイノベーションの取り組みもさらに進化させていかなければならない。富士通エフサスのフューチャーセンターに行けば、いろんな人を呼んできてくれて、自分たちの課題解決や新たなアイデア創出につながる、と多くのお客様に言っていただけるように、さらに精進したい」(富士通エフサスの今井社長)と自らの気を引き締めるように語った。
今回、富士通エフサスのフューチャーセンターをじっくり取材し、今井氏の説明を聞いて感じたのは、SNSなどのICTによるコミュニケーションがどんどん発展する一方で、改めてフューチャーセンターのようなリアルコミュニケーションが求められるようになってきているのではないかということだ。主旨は違うが、ハッカソンや異業種交流会が盛んになってきたのも通底している動きに見て取れる。
こうした動きは、企業にとっても社会にとっても厚みができて「健全な方向に進んでいる」のではないか。そう信じたい。
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