第4回 「iBeacon」と「NFC」のちょっとした誤解をひもとく:ビジネスパーソンが理解しておくべき、新時代のキーワード(1/3 ページ)
iPhone 6/6 PlusへのNFC搭載と新サービス「Apple Pay」は、今後の決裁のあり方を変えると期待されている。では、iBeaconとNFCとの関係はどうなのか。一部で誤解されている部分を簡単におさらいしよう。
以前、「iBeaconは、NFCに取って替わる技術」と紹介されていたのを見たことがある。
確かに、iBeaconもNFCも(規格は違えど)近距離無線通信の技術を用いたスマホ向けのサービス・機能だ。さらに、どちらも似た場所で、似たスタイルで使うので、混同してしまうかもしれない。今回は、この部分をじっくり整理しよう。
Beaconサービスは、今のところiOSデバイス向けのサービス Android対応は今後じわじわ
2014年現在、さまざまなiBeacon連動サービスが登場している。その多くは「iPhoneユーザー」がターゲットだ(2014年9月時点)。理由としては、iPhoneならば「iPhone 4S以降のハードウェアで、iOS 7以上のOSを導入したデバイス」がすべて対象となり、現時点ではほぼすべての利用者を対象にできるからだ。iPhone所有率が高い日本では特にそうと言える。
iBeaconは、(iOS 7以降を搭載した)iPhone 4以降で使える。アップルによれば、2014年7月27日時点のデータで、iOSデバイスにおいては、iOS 7の利用者が90%超(関連リンク参照)と報告している。少なく見積もっても現iPhoneユーザーの8割はiBeacon機能をすでに利用できると考えてよい。当然、iOS 7より新しいiOS 8で動作する新しいiPhone 6/6 Plusも、iOS 8にアップデートしたiPhone 5sも利用できる。
一方、Androidはどうか。こちらは少し事情が違う。Beaconシステムは、近距離無線通信規格Bluetoothの省電力版「Bluetooth Low Energy(BLE)」を用いて信号をやりとりするものだ。Android OSは、「Android 4.3(Jelly Bean)」以降のバージョンでこのBLEに正式に対応した。
ただ、例えばNTTドコモの「2013年冬〜2014年春モデルスマートフォン」だと、Android 4.2までがラインアップの中心。Android 4.3は「2014年夏モデル」でようやく多く登場したのが(例外はあるが)国内における機器ベースでの大まかな状況だ。もちろん一部のモデルにはOSのバージョンアップが提供されることもある。ただ、OSのバージョンこそ要件を満たすとしても、ハードウェアがBLEをサポートしていないかもしれない。そのあやふやさが難しい部分だ。Androidデバイスは機種のラインアップが多く、開発・仕様の自由度もiOSデバイスより高いだけに、“では、どれが確実に対応しているか”が分かりにくい。つまり、Beaconサービスが使える“可能性”は、今のところiOSデバイスのほうが高いということになる。
GoogleによるAndroid OSのバージョン別シェア(2014年7月7日時点)によると、Android 4.3以上に該当する(開発コード名:Jelly Beanの一部、ならびに開発コード名:KitKat)バージョンのシェアは26.9%で、Androidデバイス全体の3割程度しかない。4.3以降のOSバージョンのシェアが70%を超えるには、おそらく今後1年近い期間が必要と思われ、ハードウェア仕様としての対応も含めてiOSデバイスに近い約8割の水準に達するには、あと1年半〜2年ほどは必要と想定されている。
Android OSのバージョン | 開発コード名 | シェア |
---|---|---|
2.2 | Froyo | 0.7% |
2.3.3〜2.3.7 | Gingerbread | 13.5% |
4.0.3〜4.0.4 | Ice Cream Sandwich | 11.4% |
4.1.x | Jelly Bean | 27.8% |
4.2.x | Jelly Bean | 19.7% |
4.3 | Jelly Bean | 9.0% |
4.4 | KitKat | 17.9% |
2014年7月7日時点のAndroidのバージョン別シェア(出典:Google) |
とはいえ、Androidデバイス利用者も相応に多いのはご存じの通り。当然、デバイスとOS側の対応が進むにつれ、Android対応のBeaconサービスもグッと増えるはずだ。実際、ACCESSのBeaconシステムによる位置連動型コンテンツ配信ソリューション「ACCESS Beacon Framework」など、Android OSも対応済みとするソリューションはすでに存在する。
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