「次」の情報セキュリティ──私たちは、何を考えるべきか:松岡功の時事日想(4/4 ページ)
昨今多発している「情報漏えい事件」、これは人ごとではない。モバイル機器の普及と次なるIoT化──。では、私たちは「次の情報セキュリティ」で何を考えればいいのか。情報セキュリティの最新トレンドと将来展望を、セキュリティ大手米マカフィー幹部の話をもとに考察する。
企業に求められるのは、「利便性とセキュリティ」のバランス
では、ビジネスパーソンとしてセキュリティ対策を今後どう考えればよいか。
デイビス氏は、マカフィーが2014年8月に日本を含む世界12カ国で実施した消費者向けオンライン調査「2025年の未来におけるテクノロジーとセキュリティに関する調査」の結果を示しながら、情報セキュリティの将来展望を語ってくれた。
以下の図は、2025年の情報セキュリティ対策において、それぞれ消費者の期待度や懸念の割合を日本、米国、グローバル(12カ国)に分けて示したものだ
「指紋認証による支払い」への期待度は、グローバルが31%、米国が30%なのに対し、日本は19%にとどまった。これは日本の消費者が支払いに対し、さらに精度の高い認証手段を求めている表れと見て取れる。対して、「アイスキャン(目のスキャン)でデバイスのロック解除」への期待度は、日本が43%と、グローバルの42%、米国の38%を少し上回った。こちらは、日本の消費者による、より高度な認証技術への期待をうかがわせる。「サイバーセキュリティへの懸念」および「オンラインアイデンティティの管理がよりシンプルに」といった点については、いずれも60%台で地域によって大きな差はなかった。
デイビス氏が懸念するのは「現在、かつてない量の個人情報が収集、配布されている。今後、IoTがいっそう進展するならば、情報の漏えいのリスクがますます増える。これまで以上に高度な攻撃や詐欺のリスクに直面することが予測される」ことだ。上記の4つは、今後の対策手段をどうするか、ある程度のヒントになるキーワードとなろう。
2014年は、個人情報漏えいの問題と課題がこれまで以上に深刻化した。その一方で、スマートデバイスと連携するウェアラブル端末などもいよいよ本格的になり、クルマの自動運転技術やセンサー技術も大きく進展している。やはりIoTの世界が着実に広がってきていることを実感する年でもある。
デイビス氏が「利便性とプライバシー」について言及したように、カギは「利便性とセキュリティのバランスをどう取っていくのか」にありそうだ。ここはIT担当者でないので、自分は関係ない──で済ます課題ではない。2014年は、今後の業務においても、いや人間社会にとって、この大きな問題を強く突きつけられたターニングポイントになるのではないか。
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