北陸新幹線効果で企業移転が相次ぐ、その理由は?:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
北陸新幹線の金沢延伸開業まであと半年。特急料金も発表され、石川県、富山県では観光誘致に勢いが付く。そして、企業も北陸に注目し始めている。北陸に進出する企業の動向をふかんすると、北陸新幹線の利便性だけではない理由があった。
北陸新幹線の開業で危機感を持つべきは「静岡、神奈川、愛知」の3県
富山市にはシステムインテグレーター大手インテックの本社がある。鉄道ファンには富山ライトレールの「インテック本社前」という電停名に記憶があるだろう。ゲームファンには、かつてPCエンジン向けゲームタイトル『ザ・プロ野球』を出していたメーカーとして懐かしい。同社のデータセンター事業は、東京の企業からの引き合いが増えているという。こちらも震災リスクに対する評価といえそうだ。
他にも、コールセンター大手のプレステージ・インターナショナルが、富山県射水市で1000人規模のコールセンターを開所する動きがあるなど、事例を調べるとキリがないほど多い。もちろん、これらの事例は北陸新幹線の建設決定、あるいは開業日確定からの動きだ。北陸新幹線の運賃が決まり、出張経費などの見積もりを出せるようになった。東海地域ほか関東から北陸への移転、進出は今後も増えそうだ。
北陸新幹線の開業で、ライバルとなる航空路線は見直しを迫られるだろう。しかし航空業界には次の活路がある。羽田空港の発着回数に限りがあるから、仮に羽田―小松便、羽田―富山便を減らす事態になったとしても、他の収益が見込めそうな路線を増やす手立てがある。
むしろ、北陸新幹線の開業で危機感を持つべきは「静岡、神奈川、愛知」の3県だ。新幹線が開業すると、その地域がストロー現象(交通網の整備によって、途中の小都市が経路上の大都市の経済圏に吸いとられてしまう効果や現象)で衰退するという話もある。東京からは見えにくいけれど、北陸新幹線のストローの口は「太平洋岸と日本海岸」に開いている。
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