生産台数9000万台超! ホンダのスーパーカブがスゴい:仕事をしたら“世界で”売れた(3/7 ページ)
世界中で販売されているスーパーカブ(ホンダ)の累計生産台数が9000万台を超え、あと数年で1億台を突破しそうだ。50年以上前に発売されたスーパーカブは、なぜ今でも売れ続けているのだろうか。ホンダの広報部に聞いた。
ベトナムでスーパーカブが売れている理由
広報: 話は変わりますが、スーパーカブは東南アジアでよく売れています。その要因は何だと思いますか?
土肥: かつての日本のように舗装率が低いからでは?
広報: その通りです。東南アジアの中で……いや、世界で最もスーパーカブの人気が高いのはベトナムなんですよ。現地では「ホンダ」がバイクの代名詞になるほど、定着しているのですが、なぜスーパーカブの人気が高いと思いますか?
土肥: うーん、ベトナムの舗装率はかなり低いから?
広報: いえ、戦争にからんでいるんですよ。ベトナムでは1960年に南ベトナム開放民族戦線が結成され、翌61年から75年まで南ベトナム政府との戦闘状態が続いていました。その戦時下でスーパーカブが人気を集めました。
当時のベトナムは激しい戦闘状態が続いていたので、多くの住民は逃げ回っていました。いつ亡くなるか分からない状況だったので、夜中でも逃げ出せる道具が必要でした。では、なぜスーパーカブがよかったかというと、4ストだったから。もともとベトナムはフランスの植民地なので、欧州から輸入された2ストが多かったんです。でも、2ストだと耐久性が弱い。
土肥: 具体的にどのように弱いのですか?
広報: 当時の2ストは、ガソリンに潤滑油オイルを混ぜて混合油で走行していました。混合比率を間違ってしまうと、濃くなったり、薄くなったりします。その結果、エンジンが焼け焦げたりすることもありました。そうしたトラブルが多かったのですが、それでは困りますよね。敵から逃げようとしているのに、バイクが動かなければ命を失うかもしれない。
また、逃げるときに、多くの人はスーパーカブにたくさんの荷物を載せていました。家財道具など大事なモノを積んで、戦火から逃げ切った人がたくさんいました。
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