人工知能の怖さは予測精度にある:今どきの人工知能(4/4 ページ)
人工知能は、“人間らしく”する必要はありません。ただ単純に、予測精度が高ければいい。鉄腕アトムのような形でもなく、また、人間のようなふるまいもしないのです。
自分の遺伝子を解析できる時代に
塩野: 精度を上げていくには、データ量は大きいほうがいいと思いますが、例えば遺伝子の情報とかは、極めて大きなデータですよね。米国のトゥエンティスリーアンドミー社(※10)のような会社に頼んで自分の遺伝子情報を解析してもらい、かかりそうな病気を調べるとか、そうした例も人工知能のデータ解析に近いのでしょうか。
松尾: あれはどちらかと言うと「ルールベース(※11)」の話です。ある遺伝子に着目し、それがある病気になりそうかどうかは、医学論文から参照してきたルールを用います。あのシステムのすごいところは、どちらかと言えば、医学論文をたくさん読み込んでしっかりルールを作っている部分ですね。
(※11)ルールベース=「もし〜なら、〜と判断する」のような形式で記述されたルールの集合。「エキスパートシステム」などで用いられる。
本来の姿というか、もう少し高度になると、遺伝子のデータと診断データを組み合わせ、医学論文を通したルールベースではなく、事例をベースにしたり、いろいろな要因間の関連性を調べたりといった方法で、確率の計算ができるようになっていくと思います。
塩野: そういった設計をする際も、自分の遺伝子と医療データ、医学論文のマッチングが基本になるのだと思います。この設計にしても、先ほどの広告ビジネスにおけるユーザーのクリックと広告表示の設計にしても、人工知能や解析の世界では同じようなことをやっているのですか。
松尾: 同じですね。遺伝子のデータからある病気になる確率を求めることと、購買履歴から別の商品を買う確率を出すことは一緒です。さらに言えば、将棋で、ある盤面のときにこの手がいいという確率を出す、自動車の自動運転においても、こうした道路状況ではこう運転するのがいいと判断する手順も同様です。
こうして見ると人工知能がやっているところは、結局はすべて同じ問題なんですね。そう考えると、適用可能性は非常に広い技術と言えます。
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