女の子の学力をぐーんと伸ばしてきた、長野雅弘さんをインタビュー:働くこと、生きること(3/7 ページ)
「自分が行きたい学校に行ける」「自分がなりたい職業に就ける」――。さまざまな不安から伸び悩む生徒たちを、次々に有名大学に導いた教育者は、何を考え、何を行ってきたのだろうか。
女の子は、いつも押し込められている
20年の間に積み上がるものは大きい。その時点では進路指導と生徒指導、さまざまな部門の責任者としての実積があったため、他校から誘いを受けることに。結果的には一宮女子高校に教頭として赴任し、翌年から校長になった。
「一宮女子は当時は評判がいまひとつの学校で、例えば生徒の募集をお願いするために中学校をまわっても、渡した名刺を投げ返されたり破られたりしました。でも、改革は難しいことではありませんでした。なぜなら、先生を変えればいいからです。先生たちの心のなかのロウソクを燃やしてあげれば、状況は一気に変わるのです」
ちなみに「心のなかのロウソク」とは、先生にとって重要な要素なのだそうだ。
「どんな先生も、『先生になりたい』『子どもの成長に役立ちたい』など、なんらかの火(目的)がついたロウソクを持って教師になります。しかし現実的に、心のなかのロウソクについた火はいつまでも燃えているわけではありません。さまざまな出来事が原因となって、あっという間に消えてしまうのです。
だからこそ、消えてしまったロウソクを、また燃やす必要があるのです。それが新たな原動力となり、子どもたちの心へと伝搬していくからです。事実、1年目でだいぶ変化し、3年目には定員を超すほどになりました。圧倒的な進学実績を出し、毎年のアンケート調査に基づく生徒の満足度と保護者の満足度が100%近くまで跳ね上がったんです。
端的にいえば、満足して学校生活を送り、納得できる進路先を得て卒業できる学校になったということですね。あまり評判がよくない学校でしたが、先生が情熱を燃やせば、その気持ちが生徒にも伝わるんです。評価もどんどんよくなって、名刺をちゃんと受け取ってもらえるようになりましたよ(笑)。その先生方とは、いまでは笑いながら酒が飲める仲です」
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