なぜ人が集まる? 2014年に人気上昇した都道府県を鉄道目線で斬る:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
なぜ今年は四国が盛り上がらなかったんだ……。皆は四国へ行かずドコへ行ったのか? その手掛かりを見つけた。2014年に楽天トラベルで最も予約実績を伸ばした都道府県ランキングが発表されたのだ。さて、1位はドコだ?
8位:大分県
湯布院・別府温泉などの温泉を擁する大分県。楽天トラベルの説明でようやく鉄道ネタが紹介された。「ななつ星を見に訪れる鉄道ファンで『湯布院』駅がにぎわっています」とのことだ。「ななつ星 in 九州」そのものは乗客定員が少ないため、観光人員の上昇には寄与しにくい。しかし、1周年を迎えたななつ星 in 九州は、デビューからずっとテレビや雑誌などで紹介されている。ななつ星 in 九州関連の立ち寄り先のPRに貢献していると言えそうだ。また、中津城は、先述した熊本城と同じく軍師官兵衛のゆかりの地である。
9位:栃木県
日光は世界文化遺産認定から15周年となった定番の観光地である。楽天トラベルによると、那須高原は「動物とのふれあい・温泉・自然スポット・アウトレット・遊園地まで揃うリゾート地」としてファミリー層に人気だという。動物とのふれあいという意味で、人気急上昇のアルパカを集めた「アルパカ牧場 那須ビッグファーム」がある。私の注目はイチゴ。水分が多く出荷に耐えられない「とちひめ」は、地元でのイチゴ狩りに行かないと食べられない。
鉄道ネタとしては、2014年3月から烏山線で画期的な蓄電池駆動電車「ACCUM」の運行が開始した。真岡鐵道ではSL列車が走り、2013年に真岡駅隣接地でミニ鉄道博物館「キューロク館」がオープンしている。
10位:兵庫県
“天空の城”、竹田城の人気が根強い。そのブームは2012年の高倉健主演映画「あなたへ」の登場でピークに達した。天空の城というキーワードでは、宮崎アニメ「天空の城ラピュタ」も根強い人気。竹田城は幅広い世代にとって「行きたいところ」に挙げられたようだ。来訪者の急増によってゴミ問題や迷惑駐車問題が発生、管理費用がかさみ、2013年10月から入城料金の徴収が始まり、2014年から史跡保護のため冬季は全面入城禁止となったという。
竹田城は鉄道にも好影響のようで、最寄り駅は播但線の竹田駅。この路線は大阪と兵庫の日本海側を結ぶ特急「はまかぜ」が通る。JR西日本は竹田城観光の人気を受けて、竹田駅に「はまかぜ」定期列車3往復のうち2往復を臨時停車させている。
兵庫と言えば姫路城も「平成の大修理」が実施されており、真っ白な天守閣が姿を現した。こちらは2015年3月から一般公開が再開される予定だ。来年も同様の調査があるならランクアップの可能性がある。
番外編
楽天トラベルのほかのランキングも興味深い。「旅行好きが選ぶ、オススメローカル列車ランキング」は異論なし。どの路線もオススメ。そして「2014年、年末年始国内旅行ランキング」を見て安心した。四国4県のうち、高知県が5位、徳島県が8位、愛媛県が10位に入っていた。よかったよかった。(初稿で徳島県を見落としていました。徳島の皆さんごめんなさい。私は阿波尾鶏大好きです!)
それにしても、このランキングは旅のヒントがいっぱいだ。このランキングを見たら、またどこかへ出掛けたくなった。来年はどこへ行こうか。
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