なぜ人が集まる? 2014年に人気上昇した都道府県を鉄道目線で斬る:杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)
なぜ今年は四国が盛り上がらなかったんだ……。皆は四国へ行かずドコへ行ったのか? その手掛かりを見つけた。2014年に楽天トラベルで最も予約実績を伸ばした都道府県ランキングが発表されたのだ。さて、1位はドコだ?
6位:滋賀県
琵琶湖観光の拠点の滋賀県。2014年は琵琶湖畔の約200キロメートルを一周する観光「ビワイチ」がジワジワと人気上昇中。元々は自転車による琵琶湖一周を指した言葉で、上級者は1日で回る。一般には途中で宿泊して2日〜3日かけるそうだ。滋賀県はビワイチ向けのサイクリングマップも発行している。現在は徒歩、オートバイによる「ビワイチ」も行われていて、関連イベントも開催しているようだ。
自転車のビワイチの背景は、「ツールド・フランス」のようなロードバイクレースや、ポタリングという自転車散歩旅の人気があるらしい。そういえば、東京の街中でもロードバイクで通勤する人や、何台も並んで走る人たちの姿を見掛ける。マンガ「弱虫ペダル」のアニメ化の影響もあるかもしれない。
鉄道と自転車と言えば、地方鉄道で自転車の同乗を認める事例が増えている。乗客が少なく車内空間にゆとりがあることや、通学や買い物の乗客を鉄道に取り込むための施策だ。JRグループでは1999年から、解体して輪行袋に入れた自転車の持ち込みが無料になっている。駅前の観光案内所にレンタサイクルも多いし、鉄道と自転車を組み合わせた旅はもっと流行っても良さそうだ。
滋賀県と言えば、以前連載でも紹介したように、11月に復帰した信楽高原鐵道に注目(関連記事)。2015年の躍進に期待したい。
7位:群馬県
世界遺産の「富岡製糸場と絹産業遺産群」で観光客が急増している群馬県。著名な温泉地も多く、藤岡・妙義・安中・磯部温泉エリアは前年比約20%の予約増となったという。もっと上位にランキングされても良さそうだけど、首都圏からのアクセスが良すぎて、新幹線を使えば日帰り圏内。宿泊数を基にしたランキングには反映されにくいか。
鉄道にこじつけると、群馬県は関東のSLスポット。高崎から水上へ、横川へと毎週末にSL列車が運行している。富岡製糸場へは上信電鉄が便利(関連記事)。最新情報として、上信電鉄は12月22日に新駅「佐野のわたし」を開業する。南高崎駅と根小屋駅の間だ。地元の要望による請願駅として、主に通勤通学用に作られたわけだが、付近には高崎駅の駅弁業者「たかべん」の本社がある。11月1日に本社前に「たかべん食堂」がオープン。高崎駅で朝だけ限定販売される「上州の朝がゆ駅弁」をバイキングで楽しめるそうだ。
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