10年分の志望企業ランキングが映し出す、就活生たちの姿(2/3 ページ)
毎年、就活に関するさまざまなデータが公開される中、注目されるのは「志望企業ランキング」。今回は、この10年を通して学生の志望度が安定していた業界、および経済指標などとの関連性が見られるかどうかについて考察する。
この10年間で衰退した業界
続いては、この10年間で出現回数が低くなった業界です。最たる例は、自動車関連企業などを中心とした機械・電機・材料業界です。
2007年までははっきりと分かる人気を保っていましたが、2008年以降、平均以上を保ってはいるものの急激にその値が減少したことが分かります。これを引き起こした原因は2007年から2008年にかけて起きたリーマン・ショックであることは明らかでしょう。
2007年、米国で起きたサブプライムローンバブルの崩壊を皮切りに、米国経済は主に金融業界を中心に大打撃を受けました。日本でその影響を大きく受けたのが、米国経済に大きく依存していた輸出産業、中でも自動車産業です。
具体例としてトヨタの株価推移を見てみます。用いたのは調整後終値です。
2007年2月の8002円を最高値とし、それ以降は2009年12月まで下降トレンドが続いていました。
もちろんこれはトヨタに限った話ではなく、日本経済全体が大きくネガティブな影響を受けましたが、とくに自動車産業の受けたショックは大きいと言えます。就職活動を行う学生側もその厳しさを感じ取っていたのかもしれません。
横断的な視点1:学生の志向は多様化しているのか
ここまでは特定の業界に限定してその推移を確認しました。ここからは、さまざまな業界を横断的に見ていきます。
1つめは、「学生の志向が多様化しているかどうか」です。
冒頭で、リクルートは2010年以降ランキングの発表を取りやめたと書きましたが、その理由は「学生の志向が多様化しているから」というものでした。
リクルートは13日、毎年4月に発表していた大学生・大学院生の就職人気企業ランキングについて、今年から公表しないことを明らかにした。大学・短大への進学率が50%を超え、学生の志向が多様化する中、一律のランキングを提示する意味が薄れたとしている。
(「就職人気企業ランク発表せず 志向多様化でリクルート」2011年4月13日 共同通信)
では、実際にその「多様化」は確認できるのでしょうか。どれだけ多様化しているのかを表す指標として、参考にするのは「標準偏差」というものです。
標準偏差は、平均からのばらつきを示す指標だと言われています。この値が大きければ大きいほど平均から離れている項目が多く、逆に小さければ小さいほど平均に近い項目が多いことを示しています。
これを踏まえて、次のグラフを見てみましょう。
このグラフでは、左軸に平均値(業界ごとに何社がランクインしたか)、右軸に標準偏差を表しています。年々、標準偏差が多少なりとも下降傾向が見られる一方で、平均にはそうしたトレンドが表れていないことが見て取れます。
つまり今回用いたデータで見る限りにおいては、各項目が平均に近づき、その差が少なくなっています。リクルートの言葉を用いるなら「学生の志向が多様化している」と言えるでしょう。学生たちはこの10年を経て、興味の幅を広げてきているようです。
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