富士通、今期は増収減益の見通し 「事業を見直し、ビジネスモデル変革の1年に」:15年3月期通期決算(2/2 ページ)
富士通が2015年3月期通期の連結決算を発表。売上高はやや減少した一方で、ビジネスの見直しや円安の影響もあり、減収増益となった。一方で、今期はユーロ安による部材高騰の影響や、経営課題解決への投資を行うため、増収減益を見込んでいるという。
2015年度は“ビジネスモデル変革”の年に
富士通は2014年に発表した中期経営計画で、2015年度(2016年3月期)に営業利益2000億円、2016年度(2017年3月期)に過去最高の営業利益2500億円を達成することを目標としている。今期の営業利益の見通しは1500億円と目標に500億円届かない。
減益としたのは2つの理由がある。まずはさらなるユーロ安の進行により、部材調達コストが増えて利益を圧迫するという予測。これで200億円程度の影響が出るとみている。残りの300億円は「全社的なビジネスモデル変革」のための投資だ。「外部要因に左右されないビジネスモデルを構築したい。為替による影響と投資を除けば、実質的な営業利益は2000億。中期経営計画のラインからは外れていない」(田中氏)
全社的なビジネスモデル変革については、詳細な内容は明かさなかったものの、塚野氏は「マインドセットから組織全体を変えるようなイメージ。個人的には肥満型から引き締まった筋肉質な組織になるべきだと思っている。単に人員を削減するといった話ではない。事業全体の見直しを通してリソースをシフトしていくことは考えている」と述べた。
「過去に積み上げてきたものを生かすために、マーケットやユーザーの動向を見つつ、新たなビジネスチャンス、ビジネスモデルを見出していく。これがひいては他社との差別化につながっていく」田中氏は語る。そして今後の成長のため、“グローバル化”やビジネスのスピード向上も取り組むべき課題としながらも、最も重要なのは、クライアントのニーズに合わせたソリューションの提供だという。
田中氏は「富士通は高い技術力があるものの、各部門がバラバラの方向に進んできたところがあり、そこは反省すべきだと考えている。富士通が提供できるさまざまな技術を統合し、新たな価値を顧客に提供していける体制を作るのが急務だ」と旧来の“縦割り”体制を見直すことを示唆した。
2015年度は、田中氏が会社のトップとして舵を切る最初の1年だ。しかし、その道のりは平たんではない。「物足りない数字と言われるのは覚悟しているが、これからぶつかるであろう課題は分かっている。対症療法ではなく、課題の本質を見据えて対処していかなければならない」と田中氏はアピール。すでに経営方針を役員や各部門長には伝えたとのことで、「近日中に改めて、具体的な施策を説明する機会を設ける」(田中氏)という。
関連記事
- 富士通の田中新社長が考える、真の「グローバル化」とは?
富士通が社長および会長人事を発表。16代目社長に就任する田中氏は、歴代の社長では珍しい営業出身のキャリアを持ち、海外ビジネスにも明るい。現社長の山本氏が“成長ドライバー”として期待を寄せる田中氏は「グローバル化の深化」が最大の課題だと話す。 - 「ヒューマンセントリックIoT」推進、IoTビジネスは顧客との共創で──富士通・香川執行役員
身近な家電から、自動運転自動車、社会・公共システムまで。もうすぐ、ヒト・モノ・環境のあらゆる情報がデジタル化され、ネットワークにつながる「IoT」時代が訪れる。企業は何を考え、実行すべきか。富士通のIoTビジネス担当執行役員 香川進吾氏に同社のIoT戦略を聞いた。 - 富士通が初公開した「新Web OS技術」は世界に広がるか
富士通研究所が「IoT」の実現に向けて必要となり得る「新Web OS技術」を初公開した。発想はあの「Java」と同じだが、果たして世界に広げることができるか。 - 富士通とNECのトップが語るクラウド事業の攻めどころ
富士通とNECが先週、2013年度の連結決算を発表した。それぞれの会見に臨んだ両社のトップに、クラウド事業の攻めどころについて聞いてみた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.