ボンカレーの販売が伸びている2つの要因:レトルト食品の“元祖”(1/2 ページ)
大塚食品が1968年に発売したレトルトカレー「ボンカレー」の売り上げがここ数年好調だ。レトルトカレー市場全体はコモディティ化が進む中、同社の取り組みとは一体……?
「じわじわと売り上げが伸びている高価格帯で攻勢をかける」――。
レトルトカレーの“元祖”といえる「ボンカレー」シリーズを販売する大塚食品 製品部 レトルト担当プロダクトマネジャー(PM)の垣内壮平氏はこう意気込む。
2015年2月に発売した新商品「The ボンカレー」は、希望小売価格が500円(税別)と、レトルトカレー市場の中では高価格帯に入る。同社の「ボンカレーゴールド」(同160円)、「ボンカレーネオ」(同250円)と比べても約2〜3倍高いが、これまでのところ販売は順調のようだ。「安さ優先だった消費者のマインドが変わり、品質の良いものであれば多少お金を払ってもいいという動きが出てきた」と垣内氏は説明する。
ただし、レトルトカレーの市場全体は決して活発とは言えない状況である。公益財団法人 日本缶詰協会が公表するデータによると、レトルトカレー全体の生産量は微増傾向にあるものの、苛烈な価格競争、商品は飽和状態と「典型的なコモディティ市場」(垣内氏)になっている。
電子レンジ対応商品で売り上げアップ
そうした中でボンカレーシリーズは2013年から売り上げを年率2割ずつ伸ばしている。親会社の大塚ホールディングス(HD)が2015年5月に発表した今期第1四半期の連結決算からもボンカレーの好調ぶりがうかがえる。
その要因の1つに垣内氏は「電子レンジ対応」を挙げる。2013年に主力のボンカレーゴールドが電子レンジに対応したことで、消費者の調理の手間が減り、売り上げアップにつながった。長らくレトルトカレーはパウチ(レトルト食品を封入する袋)を熱湯に沈めて温める湯せんが“常識”とされてきたが、近年メーカーの商品開発が進み、ふたを開けて箱ごと電子レンジで温められるような商品が増えてきた。
大塚食品では他社に先駆けて電子レンジ対応の開発を進め、2003年には商品化。2009年に発売したボンカレーネオも当初から電子レンジでの加熱が可能だった。しかし、100円台という低価格のボンカレーゴールドでは、ボンカレーネオで使う電子レンジ対応のパウチでは製造コストが高すぎた。そこでいかにしてコストを抑えるかなどに苦心したという。
「コストや品質などのバランスから、ボンカレーネオのパウチは流用できず、新たにボンカレーゴールド用に開発する必要があった。その結果、商品化に時間がかかってしまった」(垣内氏)
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