ポカリ6億本の流通を止めない秘策、大塚倉庫の「ID戦略」とは?:売り上げ倍増へ(3/4 ページ)
ポカリスエットやオロナミンC、ボンカレーなど、大塚ホールディングスの多種多様な商品を全国の消費者に届けるべく、その物流業務全般を担うのが、グループ会社の大塚倉庫だ。近い将来、現状の倍となる売上高1000億円を狙う同社が推進する事業改革に迫った。
配車作業のこだわりを捨てよ!
大塚倉庫の物流改革は配送センター内だけにとどまらない。「倉庫内作業の最適化だけを考えるのではなく、物流全体の効率化を実現しなければ飛躍的な改善にはつながらない」と西牟田本部長。そこで同社が2015年3月から取り組みをスタートしたのが「ID運輸」である。全国で約1300台のトラックとパートナー契約するうち、現在は都内を中心とする約100台に導入済みだ。
コンセプトはID倉庫と同様で、こちらは運輸業務の可視化を実現するものだ。具体的には、納入先に向かう配送トラックの状況をリアルタイムで管理し、全体の進ちょくを把握することで、例えば、メーカーから「荷物が今どこにあるのか」などといった配送センターへの問い合わせをなくすことができるようになる。
加えて、ID運輸ではトラックにiPhoneを搭載し、配送ルートや納品時の諸注意などの情報をドライバーに適時伝えていく仕組みも持つ。配送ルートなどの指示データはGPSを活用してシステムに蓄積していくので、溜まれば溜まるほどデータの精度が高まり、より効率的な配車が可能になるという。
配送プロセスにおいて、最も手間暇がかかるのが配車作業だという。大塚倉庫では複数メーカーの商品を扱っているため、同じ納品先でもメーカーごとに住所や会社名称などの表記が異なる場合が少なくない。そこでいわゆる「名寄せ」を行い、そこから配送ルートの選定に入る。
ルートも単純に近い納品先から順番に並べていくわけではない。例えば、最も遠方だけど朝一番に納品しなければならなかったり、近隣だが午後に時間指定されていたりとさまざまな条件がある。それらを基に何台のトラックを使えば最も効率が良いのかをエリア、積載重量、距離などで区切って配車担当者が考えるのである。「これまでは配車作業全体で約2時間かかっていた」と、同社 ロジスティクス本部の村田敏洋氏は述べる。
長年の経験と勘に裏付けされた配車作業だったが、ID運輸のシステムを活用してほぼ自動化を実現したことで30〜40分に短縮した。「配車はこだわり続けたらキリがない。配車マンのこだわりのために長時間費やせば、その後工程の作業がその分後ろ倒しになってしまう」と西牟田本部長は力を込める。
当然、導入時には配車担当者と意見の食い違いなどもあった。それに対して具体的な実績や成果を示しながら徐々にID運輸の有用性を認めてもらったのだという。最終的には5分くらいで配車作業が完了するような完成度を目指している。
関連記事
- アスクルはなぜ当日配送が可能なのか?
法人向けにオフィス用品などを通信販売する事業からスタートし、今では一般消費者にもネット通販サービスでさまざまな商品を提供するアスクル。何と言っても同社の強みは「物流スピード」だ。その裏側をお伝えする。 - 人手不足が深刻な宅配企業、次の一手は?
ネット通販の普及によって宅配便の取り扱い個数が急増。併せて顧客サービスの拡充にも取り組んできた宅配企業は今、現場が限界を迎えつつある……。 - ボンカレーの販売が伸びている2つの要因
大塚食品が1968年に発売したレトルトカレー「ボンカレー」の売り上げがここ数年好調だ。レトルトカレー市場全体はコモディティ化が進む中、同社の取り組みとは一体……? - 配達の“遅れ”が少なくなる? 佐川急便の数年後
佐川急便は2014年の春から、ビッグデータを本格的に稼働させている。特に「品質」と「実績」に注目しているというが、どういう意味なのか。IT部門を担当している部長に話を聞いたところ……数年後の姿が見えてきた!? - 特集「進化する物流ビジネス最前線」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.