Mobile:NEWS 2002年5月21日 12:00 PM 更新

赤外線が携帯を変える──504i(2/2)


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 リンクエボリューションの北角氏は、「504iの機能だけで、ホームネットワークの機能の7〜8割が実現できるのではないか」と語る。いわゆるホームネットワーク構想では、これまですべての家電がネットワークに接続される未来像が描かれていた。しかし、「冷蔵庫と洗濯機をネットワークで接続してどうするのか」(北角氏)という根本的な疑問もある。高価なネットワーク接続機能を各家電に搭載するよりも、家電には安価な赤外線通信機能だけを搭載し、「複雑な計算やインターネット接続機能は、携帯のアプリケーションが肩代わりする」(北角氏)世界のほうが現実的かもしれない。

ドコモを経由しない、初めての通信方法

 もう1つ、赤外線が大きなインパクトをもたらすのは、近距離であれば無料で、比較的速いスピードでやりとりできるようになったことだ。

 これまでの赤外線搭載端末ではアドレス帳など決まったデータのやりとりしかできなかったが、504iではiアプリから自由に利用できるのが大きなメリットだ。「Javaベースで通信プロトコルを設計したり、やりとりするデータを決められるようになった。ゲーム会社がキャラクターを交換したり、待受画像を交換したり、着メロデータを交換したり、Javaで取り込めるものであれば、交換できるようになる」(千葉氏)

 504iで搭載された赤外線の規格は「IrMC」(用語)と呼ばれるものだ。赤外線通信には「IrDA」(用語)と呼ばれる主に物理層を定義した規格の上に、さまざまな用途向けの規格が存在している。ちょうどBluetoothのプロファイルのようなものだと思えばいいだろう。

 リンクエボリューションの北角氏によると、IrMCが定義する機能は主に3つ。1つはIrCOMMと呼ばれるモデム機能、2つ目はOBEXと呼ばれるデータ交換用のプロトコルだ。vCardなどを使ったデータのやりとりもここに含まれる。3つ目はRTCONというリアルタイム通信機能だ。

 504iでは3つすべてに対応しているわけではないが、OBEXの機能については互換性を持っている(5月20日の記事参照)。「サーバモードとクライアントモードがあり、それぞれの状態でGETとPUTがJava向けのAPIとして提供されている」(北角氏)。プログラマは赤外線通信であることを意識せず、通常の通信と同じように赤外線を使ったデータのやりとりが可能になっている。

504iの登場で、Bluetoothを受け入れる土壌が整う

 近距離無線通信を知っている人から見れば、「どうしてBluetoothではなく、今赤外線なのか?」という疑問もあるだろう。これは1つにはコストのせいだ。Bluetoothの市場はまだ立ち上がっておらず、消費電力やコスト面でまだ成熟していない。「Bluetoothは1システムがハードだけで1000円くらいかかる。(携帯のようにボリュームが大きい場合)赤外線ならばトランシーバの部分は100円くらい。ソフトとハードを合わせても何百円だ」(北角氏)

 また、「(自動販売機に)コインを入れる速度に匹敵するのは赤外線だけだ」(北角氏)というメリットもある。近くにいるだけで接続できてしまうBluetoothの場合、どうしても認証の手間は避けられない。赤外線の場合、意識して向かい合わせるという手順が必要なため、面倒な認証を省略することが可能だ。Bluetoothを使ったPOSレジの試作なども進められているが(1月30日の記事参照)、現在のBluetoothの認証の速度では、“向かい合わせればすぐにiアプリが起動”という世界は実現できない。

 つまり、赤外線がBluetoothに置き換わるのではなく、「Bluetoothと赤外線で用途を使い分ける」(北角氏)のが現実的だろう。

 しかし、504iに赤外線が乗ったことはBluetoothにとっても先行きが明るい話だ。504iが使うIrMCのOBEXという機能は、実はBluetoothでも使われているもの。プロトコルスタックの上位層では、赤外線とBluetoothは互いに互換性が高い(2000年12月の記事参照)。OBEXに対応したアプリケーションは、物理層を赤外線(IrDA)からBluetoothに変更しても大きな改良は必要ない。

 Bluetoothがこれまで普及しなかった背景には、コストや消費電力の問題のほかに、「Bluetoothを使って何をするのか」という疑問があった。実際にBluetoothが搭載された機器を使っても、Bluetoothならではのメリットを享受できることが少なかったのだ。

 しかし赤外線のOBEX対応ソフトが充実してくれば、次はBluetoothだ、という機運が盛り上がることも期待できる。先ほどの例でいれば、赤外線対応ビデオデッキで予約録画をするには向かい合わせる必要があった。しかしこの物理層がBluetoothに変われば、向かい合わせる必要さえなく携帯電話からビデオデッキを操作できるようになる。

 赤外線通信によって近距離無線を使ったインフラが整い、ユーザーが無線で各種機器を操作するという経験を持つ。Bluetoothが普及する土壌を、赤外線が作り出す──504iにはそこまで期待ができるのではないだろうか。

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関連リンク
▼ ケイ・ラボラトリー
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[斎藤健二, ITmedia]

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