インタビュー

スライド型レンズカバーと有機ELが形成する“ダブルフェイス”――「Cyber-shotケータイ S001」開発陣に聞く「Cyber-shotケータイ S001」(後編)(2/2 ページ)

画質が向上した8.1Mカメラに加え、「おかませシーン認識」や「おすすめBestPic」を搭載するなど、「Cyber-shotケータイ S001」はデジタルカメラに迫る進化を果たした。後編では、光学ズーム搭載を見送った理由や「Idou」とも類似するデザインの意匠、有機ELディスプレイ搭載の苦労などについて聞いた。

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総合的に性能アップした有機ELを搭載


電気設計担当の福田氏

 “撮る”だけでなく“観る”にもこだわり、S001ではディスプレイに有機ELを採用した。「有機ELは液晶よりも色再現性が高く、高コントラストで引き締まった黒を表現できるのが大きなメリットです。KDDIさんの意向もあり、映像を軸として攻めるため、有機ELを訴求することになりました」(冨岡氏)

 一方で有機ELは、屋外、特に直射日光の当たる環境では見にくいというデメリットもある。この点について電気設計担当の福田氏は「その懸念はもちろんありましたが、可能な限り輝度を上げ、屋外でも見やすくなるよう調整しました」と説明する。

 「S001はカメラに特化したモデルなので、屋外でもしっかり画面を見られるのは必須です。ベンチマークテストを重ねた結果、auの2008年秋冬モデルで搭載した有機ELと同等かそれ以上の高い視認性を実現できました」(冨岡氏)

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 同時に、消費電力を抑えるためのチューニングにも取り組んだ。「バックライト方式の液晶は、どの絵を表示しても消費電力は変わりませんが、有機ELは表示内容によって電力が変わるので、調整と評価が大変でした。ここはソフトUIのデザイナーに協力してもらい、有機ELに合わせたUIを作った結果、液晶と同等かそれ以下の消費電力を実現できました」と福田氏は苦労を振り返る。

 さらに、「斜めから見たときに色味が変わるのを抑えるよう、視野角を広げました」(福田氏)。このように、視認性、消費電力、視野角――など、S001の有機ELは従来の有機ELよりも総合的な性能アップを果たした。

 Cyber-shotケータイならではの“観る”機能である「フォトビューアー」も進化させた。S001のフォトビューアーは、日付別にサムネイルを表示する「タイムライン表示」と、人物や子どもの顔を検索できる「顔検索」が可能になった。

 ただし顔検索の対象となるのは「子ども」「笑顔」「人物」「顔情報なし」の4種類で、特定の人物の顔だけを探すことはできない。「顔検出機能が市場で盛り上がってきているので、そういう使い方も検討したいですね」と冨岡氏。この特定人物の顔検出機能はデジタルカメラにはすでに実装されており、ケータイでもソフトバンクが2007年冬モデルとして発売したSamsung電子製の「920SC」に搭載されている。

フォトビューアーは撮影日ごとに写真を表示できるように(写真=左)。人物や子どもの顔を優先して検索できる(写真=右)

タッチパネル搭載も視野に――今後のCyber-shotケータイ

 スペックに注文をつけるときりがないが、3.3インチの大型ディスプレイを備えるのなら、本家Cyber-shotのようにタッチパネルも搭載してほしかったところ。冨岡氏も「タッチパネルは撮影の使い勝手向上には必須だと考えています」と話すが、「タッチパネルを搭載する際には、物理キーを上回る使い勝手を実現できなければ意味がないと考えています」と慎重な姿勢。

 「本家Cyber-shotがタッチパネルを長期間続けているので、そこのノウハウを参考にしながら、ケータイならではの使いやすさを提案したいですね。Idouもタッチパネルを搭載しているので、開発チームとの情報交換はしています」(冨岡氏)

 光学ズームやスーパーマクロなど省かれた機能もあるが、S001のカメラ性能そのものはデジカメにいっそう近づいたといえる。Cyber-shotケータイは今後“デジカメに取って代わる存在”になるのだろうか。この点について冨岡氏は「デバイスの制約もあり、ケータイのカメラがデジカメの代用品になるとは言い切れません」と話す。

 「Cyber-shotケータイのポジションは、“Cyber-shotの競合品”というよりは“カメラの入り口”だと考えています。例えば学生さんが初めて手にするカメラがCyber-shotケータイで、就職したらデジカメを購入するという具合に、同じユーザー体験を求める人をライフステージごとにサポートできればと思います。そしてもう1つ、写真でコミュニケーションを深められるのは、ケータイならではのメリットです。そこを深掘りすることで、デジカメとは違う付加価値を提案していきたいです」(冨岡氏)

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