注目集める“第3のOS”/ドコモのマルチキャリア展開とは/ウィルコムがiPhone 4Sを販売する狙い:石野純也のMobile Eye(2月19日~3月8日)(2/3 ページ)
今回は、2月19日から3月8日までの3週間にわたって発表されたニュースをピックアップ。Mobile World Congress 2013では“第3のOS”がにわかに注目を集めた。これまでとは違った兆しを見せているドコモが発表した新サービスや、ウィルコムがソフトバンク版iPhone 4Sを取り扱う狙いにも迫る。
ドコモがIDのオープン化へ、上位レイヤーのサービスに本腰
- →ドコモ、創作市場に注目 “小説から家具まで”カバーする「dクリエイターズ」開設へ
- →立ち寄るだけで店からポイントをもらえる――ドコモのO2Oサービス「ショッぷらっと」
- →新健康プラットフォーム「わたしムーヴ」開始 ヘルスケアに注力するドコモ
総合サービス企業をスローガンに掲げ、サービスの拡充を目指すドコモ。2月18日から3月8日にかけ、新サービスを相次いで発表し、その動きを加速させている。2月18日には、個人のクリエイターが作成したハンドメイドの商品を販売するためのプラットフォーム「dクリエイターズ」の開設を発表。小説や写真といった個人発のデジタルコンテンツを手がける「エブリスタ」と合わせて、市場の拡大を狙う。
2月20日には「O2O(Online to Offline)」のサービスを可能にする「ショッぷらっと」のトライアル提供を開始した。専用の音波装置を店舗に設置し、ユーザーが来店時にチェックインすることで「star」と呼ばれるポイントが付与される仕組みだ。参加企業は東急百貨店やタワーレコード、シダックス、カフェ・カンパニーなど。ドコモが主導するサービスだが、iOSアプリも公開される予定で、マルチキャリア展開を狙う。
3月6日には、オムロンと共同で設立したドコモ・ヘルスケアが、スマートフォンで健康状態を可視化するプラットフォームの「WM(わたしムーヴ)」を発表。ドコモの「docomo Healthcare」とオムロンの「ウェルネスリンク」を統合したプラットフォームで、4月1日には6ジャンル、16コンテンツの利用が可能になる。オムロンの健康測定機器と連携するのもポイントだ。また、6月には基礎体温などのデータから服装や所持などのアドバイスを受けられる「カラダのキモチ」というサービスも開始する。
すでにドコモは「dビデオ」「dアニメ」などのデジタルコンテンツに加え、「dショッピング」をはじめとする物販事業にも乗り出しているが、新サービスの投入で布陣を強化する格好だ。一方で、これまでのサービスは、「dゲーム」などの一部を除き、対象者がドコモユーザーに限られていた。現時点では「docomo ID」も回線にひも付いている。サービスに魅力があればドコモにとっての契約獲得の武器にできるが、オープンでキャリアを選ばない競合がある中で、見込めるユーザーの母数がドコモの契約者に限られるのは大きなハンデになりかねない。総合サービス企業を掲げ、サービスという上位レイヤーでも十分な収益を上げていく方針とは、やや矛盾した状態になっているとも言える。
こうしたドコモの方針にも、変化の兆しが見え始めた。ショッぷらっとの担当であるドコモ スマートコミュニケーションサービス部 オープンサービス企画担当部長の斎藤剛氏は「これまで回線にひも付いていたサービスを、IDベースに変えていく施策を進めている」と語り、サービスレイヤーを切り離し、他社ユーザーへの提供を積極的に行っていく方針を明かした。実際、上述のようにショッぷらっとは他キャリアのAndroid端末にも対応する。「総合サービス企業という流れから言うと、(ショッぷらっとの対象となる)店舗にはドコモユーザーという概念は存在しない。本日(会見時点)で、iOSもマーケットにはアプリを申請中」と、キャリアやプラットフォームを超えたサービスを展開していく。
dクリエイターズもドコモ以外のキャリアで利用でき、回線ではなく、IDでユーザーの認証を行う形にするようだ。対するWMは当初、ドコモ限定で提供されるものの、「健康に関わるサービスなので、キャリアに関係ない事業環境にしていきたい。その基盤を作っていく」(ドコモ 代表取締役社長 加藤薫氏)と、他社への開放にも積極的だ。
ドコモの加藤氏がMobile World Congressのキーノートスピーチで、「プラットフォーム事業とサービス事業、2つのモデルを並行して提供していく」と宣言していたが、ドコモにとって、4月1日から始まる来期はサービス事業者としての一歩を踏み出す1年になりそうだ。もちろん、サービスレイヤーという意味ではライバルも少なくない。分野によっては、“巨人”とも言える存在がすでにいることもある。こうした激しい競争環境の中で、ある意味“新参者”でもあるドコモがどう戦っていくのか、今後の展開にも注目したい。
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