AQUOS CRYSTALがアメリカでは縛り無しで149ドルで販売━━安価なはずの端末を安く買えない割賦販売は「制度疲労」か:石川温のスマホ業界新聞
ソフトバンクと米Sprintとの共同開発モデル「AQUOS CRYSTAL」が発売された。日米で端末価格が大きく異なることの意味を考えてみたい。
8月18日、ソフトバンクモバイルはスプリントとの共同調達モデル「AQUOS CRYSTAL」(シャープ)を発表した。特長はフレームレス構造を採用し、とにかく画面だけを持っている感覚になれるという点だ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年8月23日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
共同調達モデルであるため、防水性能、おサイフケータイ、ワンセグなどの日本特有機能には非対応。デザイン性は優れるが、機能面で他のAndroidと見劣りする部分があり、このあたりが日本のユーザーにどう評価されるか注目と言える。
今回の発表で特に驚いたのが、端末価格だ。ソフトバンクでは「Harman Kardon ONYX STUDIO」のスピーカーがついて、一括価格で5万4480円となっている。新規やMNPでの購入であれば、2年間使い続ければ実質0円となる。
一方、アメリカでは、スプリントが239.99ドルで、同社のMVNOであるヴァージンモバイル、ブーストモバイルでは149.99ドルという設定になっている。149.99ドルは「縛り無し」での購入が可能だ。
この価格差を見る限り、日本ではソフトバンクの売り上げを上げようと、強引にスピーカーを付属して、値段をつり上げているようにしか見えない。
2年間使えば「実質0円」であるため、ユーザーのことを考えれば、このような売り方のほうが良いのかも知れない。しかし、日米で共同調達をして、コストを下げたにも関わらず、コスト削減効果が見えないような売り方をしては意味がないのではないか。
2年縛りの割賦販売、さらに毎月、割引を適用させ続けるという売り方は、確かに高価な端末を売るのには最適だった。ユーザーへの負担も少なく、一方でキャリアはユーザーを2年間縛り、しかも、かなりの利益を乗せられるとあって、ソフトバンクに続いて残りの2社もこぞって導入したのも納得だ。
しかし、今回のAQUOS CRYSTALのような、シャープという日本メーカーで149.99ドルで売れるような安価な端末が出てきたとなると、素直に1万5000円で売った方が、わかりやすくていいような気がしてならない。
スプリントにおいても、毎月10ドルで24回払いという仕組みを導入するようだ。アメリカで売られるAQUOS CRYSTALの仕様を見ると、他社でのネットワークでは使いづらい周波数帯となっているため、SIMロック以上の縛りがあるという見方もできる。他社に流出しづらく、安価な値付けをしやすいという背景もあるだろう。
しかし、せっかく、孫社長も「日本市場とアメリカ市場でのシナジーがある」というのであれば、アメリカ流の売り方を日本でも採用してくれても良かった気がする。
それこそ、AQUOS CRYSTALの日本での売価を2万4000円にして、月1000円の分割で買えるという方が、よっぽど消費者の為のような気がしてならない。
確かに、端末価格をあえて高価にしておき、月月割を仕込んでおけば、2年未満で辞めたいというユーザーに対して、高額な残債請求をすることができて、ユーザーを囲い込むことができるのは理解できる。
しかし、もはやそうした売り方は制度疲労を起こしているのではないか。
AQUOS CRYSTALのような製品であれば、ソフトバンクではなく、ワイモバイルでシンプルな分割払いで購入できた方がいいだろう。
せっかく出来の良い製品にもかかわらず、過去に縛られた売り方が足を引っ張っている気がしてならないのだ。
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