端末と通信を分離するワイモバイル、統合するフリービット――その理由は?:石野純也のMobile Eye(11月10日~21日)(2/3 ページ)
この2週間では、ワイモバイルとフリービットが新サービスなどを発表して話題を集めた。ワイモバイルはNexus 6やシェアプランを、フリービットは新プランやフランチャイズ制の導入を発表した。2社の戦略から見えてきたキャリア事情の今とは?
2台目、3台目需要を掘り起こす「シェアプラン」
Nexus 6を同社の“顔”に据える一方で、発表会では新たに「シェアプラン」の詳細も明かされた。シェアプランは、ワイモバイル契約者が自身の契約しているデータ量を、ほかのSIMカードと分け合えって使えるプランのことで、追加で3枚、合計4枚のSIMカードを発行できる。3枚まで追加可能なSIMカードは、データプランのみ。音声通話には利用できない。
ここまでの内容は他社と大きな差はない。ドコモやソフトバンクは新料金プランとともに家族や個人でシェアできる料金プランを開始し、KDDIも「データシェア」をキャンペーンとして提供中だ(このキャンペーンは延長に延長を重ね、いまだに正式プラン化していない)。ただし、いずれも基本使用料が比較的高い。ドコモの場合、個人で2回線シェアする場合は、「2台目プラス」への加入が必要で、この定額料が月額500円。さらに、2台目の端末は、いずれかの料金プランに加入しなければならず、基本使用料がスマートフォンなら2700円、タブレットなら1700円、ルーターやデータカードなら1200円かかる。特定のデバイスだけを対象にした「デバイスプラス500」や「デバイスプラス300」なら、それぞれ500円、300円と料金は安いが、通常は、シェアのために1700円から3200円のお金がかかる。インターネットに接続するために、さらにspモードやmoperaUを契約しなければならない。
ほか2社の詳細は割愛するが、「それなりの料金がかかる」という点はドコモと同じだ。これに対し、ワイモバイルのシェアプランは、よりユーザーフレンドリーな料金設定になっている。シェアプランには980円という基本使用料が設定されているが、月7Gバイトまでデータを使える「スマホプランL」にひもづけると、割引がかかり料金が相殺される。つまり、無料で最大3回線の小回線を持てるというわけだ。月3Gバイトの「スマホプランM」では、割引が490円で合計490円、月1Gバイトの「スマホプランS」では980円がそのままかかる。低容量のプランで料金がかかるのは残念だが、それでも他社より安い。また、スマートフォンにタブレットやWi-Fiルーターを加えることを考えると、大容量プランを選択するのが現実的。シェアの恩恵を受けるユーザーは多いだろう。
このシェアプランを生かす端末も、ワイモバイルから発表された。1つ目が8インチタブレットの「MediaPad M1 8.0」。Huawei製の端末で、SIMロックフリーでも販売されているモデルだが、SIMロックフリー版がAndroid 4.2なのに対し、ワイモバイル版はAndroid 4.4を採用しているのが大きな違いだ。このタブレットは、端末単体でも購入できるようにしていくという。残念ながらMediaPad M1 8.0にはSIMロックがかかっているため、単体で入手しても用途は限られてしまうが、とりあえず端末を買っておき、モバイルネットワークを使いたくなったらシェアプランを契約するといったことは可能になる。
もう1つの「Car Wi-Fi」は、よりシェアプラン向きの端末となっている。この端末はカテゴリー的にはWi-Fiルーターだが、通常の製品との大きな違いは、車のシガーソケットに挿しっぱなしにしておく用途を想定していること。常に持ち歩くわけではなく、車に乗ったときだけ使うため、わざわざ専用のデータ回線は契約しづらい。逆に考えると、データシェアプランがあるからこそ導入できた端末といえるだろう。
取締役兼COOの寺尾洋幸氏が「MediaPad、Car Wi-Fiなどさまざまなインターネットにつながるデバイスが出てくるが、ネットワークにつなぐためには使いやすい料金にする必要がある」と述べているように、ここにはスマートフォンにとどまらず、インターネットに接続するデバイスを気軽に使えるようにしたいという狙いがある。「ビジョンとして、あらゆるものをインターネットにつないでいこうというのがある」(同)というように、その先にはIoTも見すえていることもうかがえる。
寺尾氏が「1個1個の端末を売るときに回線を付けるのではなく、我々はSIMカードだけを販売する形になる」と語っていたように、この発表会でワイモバイルが打ち出したのは、端末や料金プランにとどまらない。明確に、端末と回線を分離するというビジネスモデルを示したのだ。端末購入に伴う回線の割引という複雑さを廃し、その分料金を下げ、複数端末でも使いやすいシェアプランを導入したというわけだ。従来型の仕組みと、ワイモバイルの仕組みのどちらが選ばれるかは実際にプランが始まってみるまで分からないが、ユーザー間の不公平感が小さくなる点は高く評価できる。
関連キーワード
Y!mobile | SIMロック | SIMカード | MediaPad M1 8.0 403HW | Car Wi-Fi | SIMロックフリー | シガーソケット | 華為技術(Huawei) | Android 4.4 | Nexus 6
関連記事
- 「石野純也のMobile Eye」バックナンバー
「iPhoneは競合ではなく選択肢。Androidファンを増やしたい」 ━━「Nexus6」でメガキャリアとLCCに対抗するワイモバイル
SIMロックフリースマホ「Nexus 6」を発表したワイモバイル。低価格な料金プランや「Yahoo!」との連携などで、独自色をどこまで出していけるのか。ワイモバイルが「Nexus 6」を投入する理由、「シェアプラン」で目指す世界とは
GoogleのAndroid 5.0搭載スマホ「Nexus 6」を、国内キャリアではワイモバイルが唯一取り扱う。ハイスペックだが価格は7~8万円台と高額だが、なぜこのモデルを選んだのだろうか。また「シェアプラン」を投入する狙いとは。ワイモバイル、「Nexus 6」を12月上旬以降に発売
ワイモバイルが、Android 5.0搭載の「Nexus 6」を12月上旬以降に発売する。Googleが発売するものと同じ仕様のSIMロックフリーモデルとなっている。ワイモバイル版「Nexus 6」の価格は? 割引施策はある?
ワイモバイルが発売する「Nexus 6」は、Google版と価格はほぼ同じ。割引サービスはあるのだろうか?ワイモバイルが8型タブレット「MediaPad M1 8.0 403HW」を12月4日に発売
ワイモバイルが8型Androidタブレット「MediaPad M1 8.0 403HW」を12月4日に発売する。スマホとセットで契約してお得に利用できる「シェアプラン」が利用可能。ワイモバイル、車内専用のWi-Fiルーター“Car Wi-Fi”を2015年春に発売
車の中でWi-Fiデバイスを使う機会が増えそう――。ワイモバイルが、車内専用のWi-Fiルーターを2015年春に発売する「freebit mobile」通信速度倍増&高速チケットが300円/1Gバイトに
「freebit mobile」の通信速度と高速通信チケットの内容が大幅に改定された。非スマホ層の買い換え狙う「freebit mobile」 フランチャイズ展開や“創れる料金プラン”も
サービス開始から1周年を迎えた「freebit mobile」。既存サービスを大幅にアップデートするほか、全国の非スマホユーザーにリーチするため、フランチャイズ展開も行う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.