スマートフォンの大画面化が目立った2014年――ウェアラブルの“左腕争奪戦”も:ITmediaスタッフが選ぶ、2014年の“注目端末&トピック”(ライター山根編)
2年ぶりにフルモデルチェンジしたiPhoneを筆頭に、今年のスマートフォンはディスプレイの大型化が目立った。またGoogleの本格参入が始まったスマートウォッチは新製品が相次ぎ、市場がようやく盛り上がりを見せ始めている。
スマートフォンのスペック競争は一段落を迎え、CPUやカメラ画素数の性能アップは2013年に比べるとやや落ち着いた印象を受けた2014年だった。その一方ではスマートフォンの大画面化が進み、各社の新製品は5型以上のものが目立っている。9月に登場した新型iPhoneも4.7型モデルだけではなく、5.5型モデルも登場。いわゆるファブレットと呼ばれる超大型画面のスマートフォンも新旧入り乱れてさまざまな製品が相次いで登場した。そしてそれらスマートフォンと連携して利用するスマートウォッチも、GoogleのAndroid Wearの製品が複数登場し、早くも“左腕争奪戦”が始まっている。
そんな中で、筆者が印象に残ったモデルを選びたい。
世界初の曲面ディスプレイ搭載「Samsung GALAXY Note Edge」
フラッグシップモデルのGALAXY Sシリーズが若干息切れ状態のサムスン電子。だが大画面モデルのGALAXY Noteシリーズは各国で高い人気を保ち続けている。中国などの新興メーカーは5.5型クラスの製品にこぞって「Note」の名前を付けるのがはやっているほどで、例えば新興メーカーとして話題の“シャオミ”も、一番の売れ筋は大画面の「RedMi Note」。GALAXY Noteはファブレットの代名詞になっているのだ。
GALAXY Noteは毎年9月に新製品がリリースされ、2014年9月には「GALAXY Note 4」が発表された。だが2014年はもう1機種の派生モデルも発表されたのだ。それが世界初をうたう曲面ディスプレイ搭載の「GALAXY Note Edge」だ。「Edge(=側面)」の名前が付くこの製品はディスプレイの右側が湾曲しており、右側面をそのまま細長いディスプレイにしている。このディスプレイ部分に情報を流したり、専用のアプリを起動させたり、あるいは通知を表示したり、そしてアプリアイコンのショートカットを配置したりできる。
サムスン電子が「エッジディスプレイ」と呼ぶこの側面ディスプレイはスマートフォン本体のディスプレイを単純に拡張するだけではなく、別のアプリがその部分単体で動くことから、本体の横にあたかも「細長いディスプレイを持ったもう1台のスマートフォン」を取り付けたような使い方もできる。またスリープ時にメモや写真を表示しておくことも可能だ。ほかには本体にフリップカバーを取り付けると、このエッジディスプレイ部分は覆わないサイズとなっている。つまりカバーを閉じてもエッジディスプレイは表示された状態となり、カバーを付けているときのみネオンサインのような時計を表示することもできるのである。
このようにエッジディスプレイはいろいろな応用が期待できるわけだ。とはいえ、サムスン電子が提供する予定表示やゲームなど、エッジディスプレイ用のアプリの数は現時点ではまだあまり多くない。SDKが公開されているので今後アプリ数も増えると見込まれるが、デベロッパーもまだこのエッジディスプレイをどう使えばいいか用途に悩んでいることだろう。しかし2015年に発表される見込みの「GALAXY S6」にもエッジディスプレイが搭載されるといううわさがある。フラグシップモデルにもエッジディスプレイが搭載されるようになればアプリも増え、今までにはない新しいスマートフォンの使い方が生み出されるかもしれない。
そんな未来を先取りできるかもしれないGALAXY Note Edge、今年最も注目すべき製品として筆者はイチオシしたい。
Huaweiの本気が詰まった「Ascend Mate7」
GALAXY Note Edge同じ9月に発表されたHuaweiの「Ascend Mate7」は、大画面・高機能な新しいフラッグシップモデル。これまでの同社の製品イメージを大きく変える、チャレンジングな製品だ。同社の製品は、どちらかといえば低価格からミドルレンジの製品が多いという印象を受けるだろうが、7月に発売した「Ascend P7」と合わせ、高性能な製品が相次いで投入された。
Huaweiのスマートフォンブランド「Ascend」は、2012年に「G」「P」「G」「Y」と4つのラインに整理された。だが2013年には大画面ファブレットの「Mate」が加わり、2014年からは中国を中心にコストパフォーマンスの高い「Honor」という新しいブランドの展開も始めている。このように複数のラインが入り乱れる中、Ascend Mate7は大画面モデルから「ファブレットかつハイエンドなフラッグシップモデル」として登場したのだ。
Ascend Mate7の本体サイズは85.7(幅)×163.5(高さ)9.9(奥行き)ミリ。ディスプレイは6型、フルHDを搭載する。この本体の縦横サイズは5.5型ディスプレイのiPhone 6 Plusとほぼ同等であり、同じ大きさながらも一回りも大きいディスプレイを搭載しているのだ。実際に両者を比べてみると、本体前面に無駄なスペースがないと感じさせるAscend Mate7のベゼル幅の狭さには驚かされる。しかも本体背面は金属素材で高級感もある。カメラの下に備えられた指紋センサーの認識率も高く、カメラのシャッターボタンにもなるなど使い勝手も高い。なお指紋は5つまで登録でき、指紋データはチップセット内に保存されるなど、セキュリティも高い。
Ascend Mate7のチップセットは子会社HiSiliconの「Kirin925」を初搭載し、通信速度は最大300MbpsのLTEカテゴリー6にも対応。同社設計のデュアルアンテナも搭載し、LTEの感度をさらに高めているという。そして4100mAhと大型のバッテリーを搭載しつつも、独自の省電力機能を搭載して駆動時間も伸ばしている。日本ではSIMロックフリーモデルとして販売されているが、円安の関係もあり海外の実売価格よりもかなり安く、お買い得感が高い。ハイスペックなファブレットに興味のある人に自信をもってお勧めできる1台だ。
スマートウォッチの本来の姿を示した「LG G Watch R」
2014年は各社から多数のスマートウォッチが出そろった。最も大きな話題はAppleの「Apple Watch」かもしれないが、発表だけが先に行われ、製品が出てくるのは2015年になってから。製品発売スケジュールが明確ではないにも関わらず、Appleがスマートウォッチを発表した背景には、Googleのスマートウォッチプラットフォーム「Android Wear」対応製品が立て続けに市場に登場したことへのけん制の意味もあったと思われる。
そのAndroid WearはMotorola、サムスン電子、LGエレクトロニクス、ASUS、そしてソニーモバイルコミュニケーションズから、いろいろなタイプの製品が登場した。その中でもMotorolaの「moto360」は、丸形ディスプレイを採用した美しいデザインで発売前から大きな話題となった。
これに対し、他社のスマートウォッチはディスプレイが正方形型で、時計というよりもデジタルガジェットという印象を受ける。アーリーアダプター層ならこぞって購入して腕にはめるだろうが、、一般のコンシューマー層にとってはまだまだ腕時計ライクなデザインの製品の方が違和感がないだろう。そのためか、製品数は増えているものの、まだ街中でAndroid Wearの製品を付けている人は多くは見られない。
LGもAndroid Wearの第1弾モデルとしてMotorolaやサムスン電子と同時に「LG G Watch」を発表した。ボタン類の出っ張りが少なく、シンプルな外観はスタイリッシュだ。スクエアな文字盤はちょっと先を行く未来のデバイスという印象で好感が持てるが、コンシューマー層にとっては購入のハードルは高かったかもしれない。
そのLGは9月に早くも2機種目の製品を投入、それが「LG G Watch R」である。全体の機能はほぼ変わらないが、大きく変わったのはデザイン。見た目はスポーツウォッチのようで、アナログ時計の文字盤を表示すれば、もはや市販されている腕時計にしか見えないだろう。本体の厚みは増したものの、高級感があり、ベルトが交換できることもあってスーツにもカジュアルウェアにも合わせられる。腕に装着することも全く違和感なく、時計として使いながらスケジュールやメールやソーシャルサービスの通知を受けられるわけだ。
LG G Watch Rを使い始めると、時計のフェイスはシンプルなアナログ時計のものだけを使う人が多いのではないだろうか。Android Wearもバージョンアップされ、より多くのフェイスも選べるようになったが、このルックスの製品にはアナログ表示がよく似合うのだ。スマートウォッチは「さて、次の予定はなんだろうか」と意気込んで使うものではなく、腕にはめていることすら普段は忘れてしまう存在であってほしい。そして日々の生活の中でスマートフォンからの通知をさりげなく、タイミングよく表示してくれるというのがスマートウォッチの本来あるべき姿だと思う。LG G Watch Rはそれを実現した製品として高く評価したい。
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