FREETEL SIMは「ブッチギリだと思う」/端末は「全部自社で開発」――増田社長が語る新戦略:MVNOに聞く(2/3 ページ)
「freetel」から「FREETEL」へブランドを一新したプラスワン・マーケティング。ドコモとの相互接続でサービスを提供している「FREETEL SIM」は、想定を超えた反響を得ているという。通信サービスから端末まで手広く手がける同社の戦略を、増田社長に聞いた。
「セットじゃないと○○ができない」売り方は大嫌い
―― 端末は端末、SIMはSIMということで、意地悪な質問をすると、FREETEL以外の端末が使われることもあると思います。メーカーとして、端末の販売にプラスになるような形に誘導することもあるのか、この点を教えてください。
増田氏 他社の端末を使っても、まったく問題はありません。私自身も、縛られるのは、そもそも嫌いですからね(笑)。FREETELもそれぞれにいいものを追い求めて作っていますが、SIMだけがFREETELというユーザーの方も、もちろんいます。そういった方々にも、同じように丁寧に対応していきます。
―― 逆のパターンもありそうですね。
増田氏 セットじゃないと何々ができないという売り方が今までのメインでしたが、そういう売り方は大嫌いです。一体、誰のためにやっているのでしょう。
―― ビジネスモデルなので、提供している会社のためではありますね。
増田氏 マーケットは、エンドユーザーさんが作っていくものだと思っています。その視点がなかったら、独りよがりになってしまう。うちはそういった意味では、貫いてやっているつもりです。
うちは10年で世界一になろうと思っています。ただ、単に世界一になるのは簡単です。サムスンさんより1台でも多く作って、1円でばらまけば、一瞬だけかもしれませんが1位になれますから。でも、それじゃあまったく意味がない。長期的に考えたら、エンドユーザーさんとの信頼関係が重要で、それこそが利益です。
うちも会社としての力が足りず、いいものを作り切れなかったこともありましたが、会社としても力をつけています。去年(2014年)は4人しかいなかった人員も、今では海外を合わせて100人ぐらいになりました。しっかりいいものを作り、長期的にお客様との信頼関係を築ける。そんな会社にしていきたいですね。
アプリごとに速度を変える仕組みを導入予定
―― 通信サービスの話に戻しますが、記者会見では、アプリごとに速度を変える仕組みを導入するとお話していました。これについて、教えてください。
増田氏 その仕組みは、投資したシステムの中に持っています。当然それは、やっていくつもりです。
―― ということは、現時点ではまだ導入はされていないということでしょうか。
藤田氏 まだやってはいません。方向性としては、みなさんが使いたいものを優遇するようなものです。
―― MNOの一部(ドコモとauは、ユーザーの申告で解除可能)で導入されている、画像や動画の圧縮とは違うということですね。ただ、実際に、通信内容を見ているとなると、通信の秘密との兼ね合いも気になるところです。
藤田氏 通信の内容を見ているのではなく、アプリを識別できるようにしておくだけです。通信の秘密に踏み込んでいるわけではありません。
増田氏 高速道路でもいくつか車線がありますが、動画だとバーッと走れるようなものです。
―― その機能を入れることで、どの程度体感できるものなのでしょうか。
藤田氏 通常利用でも体感的には遅いと感じないため、もしかすると効果は分からないかもしれません。ただし、平日の昼間など、混雑しやすい時間でも、ストレスを感じないといった効果はあると思います。この機能によって、速度だけでなく、あるパケットには課金しないなど、いろいろな切り分けができるようになりました。また、制御はユーザーごとの単位ででき、一律でもありません。
―― なかなか高度な制御ですね。
藤田氏 法人のお客様もいて、エンドユーザーといってもニーズはさまざまです。それに対し、最適なものを提供できます。
―― FREETELなら、ハードウェアを出しているからこそのサービスもありそうですね。
増田氏 はい。今おっしゃったようなSIMカードも出せますね。
藤田氏 実際に、いくつかそういったものは考えていて、近日中に出す可能性はあります。
フィーチャーフォンは独自のSIMになる?
―― ここまで通信サービスを充実させたのであれば、端末の発売も合わせてしまった方がいいのではと思ったのですが、やはりそれは難しかったのでしょうか。
増田氏 あー、そういう意味では、確かに日付は発表してないですね。順番で言うと、今日の2時にpriori 2のLollipopアップデートを発表します(インタビューを行ったのは同発表があった8月6日)。順番で言うと、次はSimpleですね。
―― Simple、ついに発売ですか(笑)。
増田氏 時間がかかってしまったのは、インターネットにつながらない製品で、あとからファームウェアの書き換えができないからです。完全にいい製品に仕上げるために、時間がかかりました。Androidだと開発は簡単ですが、フィーチャーフォンは独自OSが載っています。発表会のときにもお話したことですが、「ぱぴぷぺぽ」という音がどうもうまくいかない(キーと連動しない)ことがありました。発表したときから使っていて、電波のつかみは最高ですし、1回充電すると1週間ぐらい使っていられるので、いいと思うんですけどね。
―― 確かに、ここまで機能を絞ったフィーチャーフォンは、日本だと珍しいと思いますし、一定のニーズはありそうです。ただ、そうなると、データ通信サービス自体が必要ないのではないでしょうか。端末に合わせたSIMカードということは、音声通話のみのサービスも期待できそうですね。
増田氏 そうですね。それは、会社として公式に発表できるタイミングで発表します。
Windows Phoneを「8.1」で出さない理由
―― 端末のお話になった流れで伺いますが、Windows 10 Mobileの2機種についてはいかがでしょうか。いつ頃出すなど、目途があれば教えてください。
増田氏 うちは準備万端ですが、RTM(製造工程向けのリリース)を待っている状態です。私はもともとDELLにいましたが、それがけっこう大きいですね。DELLは世界一のPCメーカーだったわけで、マイクロソフトさんとはリレーションも深い。そのときから、Windows Phoneに関しては、開発陣との関係も含めて密にやっています。
―― 先に8.1で発売して、あとからアップデートでWindows 10 Mobileにするという提供形態は検討されたのでしょうか。
増田氏 もちろん考えましたよ。考えましたが、OSでいえば、Windows 10はWindows Phone 8.1からの伸びが段違いだと思っています。けっこう前からディベロッパープログラムには参加して見ていましたが、これはすごい。Windows 10 Mobileを早く出したいと思っていました。
ただ、アップデートに関しては、PCでもやはり不具合が出てしまうことがあります。詳しい人なら自分で解決できるからいいのですが、ハードとソフト、それにOSは表裏一体の存在です。OSに合わせてハードを作った方が絶対にいいですし、「使えます」より「完ぺき」にしたかったんです。
そもそも、PCとPhoneではなぜWindows 10の提供されるタイミングが違うのか。それは、ハードウェアが全く違うからです。PCやタブレットはWi-Fiにつなぐぐらいですが、携帯電話は通信がメインです。アップデートに関してはPCの方がよっぽど楽で、携帯電話は大変です。それなら、フルチューンで合わせていった方がいいんです。
―― なるほど。確かに、万が一アップデートが失敗しまうと、大変ですからね。特にメインの携帯電話として使っていたら……。
増田氏 エンドユーザーさんにとっても大変以上のことになってしまいます。ソフトも使えなくなったり、不具合がいっぱい出る可能性は捨てきれません。ですから、(Windows 10 Mobileの)タイミングを待って、最速で出すことにしました。
―― Windows Phoneに関しては、法人導入もにらんでの開発でしょうか。
増田氏 Microsoftさんの一番強いところは、やはり法人なんだと思います。ただ、今回はPhoneということもあり、思った以上に一般コンシューマーからの期待も強く感じています。実際に製品を触っていると、これがけっこういいんですよ。コンシューマーの人が買いたいと思うのも分かります。
―― となると、まずはWindows Phoneでのシェア1位も目指されるのでしょうか。
増田氏 もちろん狙っていきます。ハードと製品に対する積み重ねが、1位につながるのだと思います。DELLで携帯事業の責任者をやっていて、こういうふうにやったらいけるという仕組みを経験してきました。相当なリレーションもあります。ただハードだけを出すメーカーではなく、法人のお客様、コンシューマーのお客様にも喜んでいただけるパートナーシップを進めていきます。Windows Phoneのメリットを受けたい方にとっても、今の時点で2ラインアップそろっているのは、うちだけですからね。
―― 確かに、Windows Phoneもフルラインアップ戦略ですね。
増田氏 2つで終わるかは分かりませんけどね(笑)。
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