Appleらしい「ユーザー体験の再発明」――iPhone 6s/6s PlusとiPad Proが作り出す新たなスタンダード:神尾寿のMobile+Views(3/3 ページ)
2015年のApple新商品発表会では、iPhone 6s/6s Plusをはじめ、iPad Pro、Apple Pencil、新しいApple TVといった多彩な製品が披露された。今回の発表で、Appleは世界に何を示したのか。あらためて振り返ってみたい。
基本性能は着実に進化。日本ではLTE-Advancedの恩恵も大きい
3D Touchに比べると地味ではあるが、iPhone 6s/6s Plusでは基本性能も着実に進化している。Appleではデザインが大きく変わらない「s」シリーズにおいては、内部的な性能向上を重視したモデルチェンジを行っている。その点でも、iPhone 6s/6s Plusは熟成したモデルといえる。
まず一般ユーザーのニーズが高いカメラ機能だが、メインカメラの画素数が800万画素から1200万画素に向上。センサーも一新し、高画素化のデメリットである色再現性の低下やノイズの問題を抑えたという。さらに写真撮影の新機軸として、シャッターを切った前後の動きとサウンドを記録し、写真をピークすると被写体が動く「Live Photos」を搭載。このLive Photosは、iPhone 6s/6s Plusだけでなく、ほかのiOS端末やOS X搭載のMacでも表示できる。動画は4Kサイズの撮影をサポート。iMovieを使って4K動画の編集も行える。
一方、セルフィーで重要度が増しているインカメラは、画素数が500万画素になった。さらにディスプレイを光らせることでフォトライトのように活用する新機能も搭載されている。
次に基本性能を左右するCPU周りだが、メインプロセッサは64ビット「A9」チップとなり、先代の「A8」チップと比べてCPUの性能が70%、GPUの性能が90%向上したという。また、加速度センサーや電子コンパスなどの処理を担当するコプロセッサーはM9になり、低消費電力制御技術を向上された。これにより、Siriの常時待機やアプリによるセンサー使用時のバッテリー消費量が抑えられたという。指紋センサーの「Touch ID」は第2世代になり、認証速度が2倍になった。
また、日本市場で考えると恩恵が大きそうなのが、通信機能の進化である。iPhone 6s/6s Plusでは、下り最大300MbpsのLTE-Advancedに対応。すでにドコモが9月25日からiPhone 6s/6s Plus向けに、下り最大262.5Mbpsの通信サービスを提供することを表明している。今のところドコモ以外がどう対抗するかは不分明だが、日本はLTEインフラの整備が進んでいる国のひとつ。通信品質もすごぶる高い。ドコモの動きに触発されて、auやソフトバンクでもLTE-Advancedへの投資を加速すれば、日本のiPhone 6s/6s Plusはさらに快適な通信環境で利用できるようになる。
またWi-FiではMIMO技術をサポートし、最大866Mbpsの通信が可能になっている。家庭内で大容量コンテンツを楽しむ際などには、Wi-Fi側の性能向上も嬉しいところだろう。
このようにiPhone 6s/6s Plusは基本性能の進化だけみても大きなものがあり、そこにスマートフォンの未来を感じさせる3D Touchが搭載されている。デザインは大きく変わっていないが、中身の進化だけ見れば、近年まれに見る大きなものである。2年縛りがちょうど終わるタイミングのiPhone 5s/5cユーザーはもちろん、iPhone 6/6 Plusのユーザー、そして多くのAndroidユーザーにとっても買い換えの誘惑は強いものになりそうだ。
Appleが示した“新しい基準”
iPhone、iPad、Apple TV。
今回のApple Special Eventを通じて垣間見えたのは、Appleの神髄が「ユーザー体験を作り出すこと」にあるということだ。iPhone 6s/6s Plusにおける3D Touchも、iPad ProにおけるApple Pencilも、Apple TVにおけるリモコン+Siriも、すべてはユーザー体験の向上であり、再発明だ。
そして今回、Appleが提示した新しいユーザー体験は、おそらく数年後には広く世の中に普及し、新しい基準(スタンダード)になっている。その意味でも、今回発表された新製品は注目といえるだろう。
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