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普段の買い物でも利用可能に、キャリアのポイントが相次いでリニューアルした理由佐野正弘のスマホビジネス文化論(2/2 ページ)

スマホのポイントプログラムが大きく変化している。キャリア各社が相次いでポイントプログラムをリニューアルしている背景には何があるのだろうか。

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ポイントの価値向上は長期利用者の獲得につながる

 そしてもう1つ、大きな理由となっているのが、ポイントの利便性を高めることで、ユーザーの継続利用へとつなげる狙いがあることだ。

 大手キャリアはこれまで、端末の割賦払いや2年契約を前提とした割引によって契約期間を縛ることにより、ユーザーに長期間契約してもらう“2年縛り”を主体とした戦略を採ってきた。だが最近ではそうした縛りの存在が、ユーザーに不便を与え、キャリア間の競争を妨げているとして問題視されるようになり、現在では総務省主体でSIMロック解除の義務化が進められたほか、2年縛りの見直しも検討されているさなかだ。

 それゆえ各キャリアは、ユーザーを直接縛る以外の形で、長期利用してもらうための取り組みを進める必要が出てきた。2015年より解禁されたNTT東西の光回線卸売を受け、キャリアが新たに固定・携帯のセット割を実施するようになったのはその象徴的な例で、「auスマートバリュー」の成功を受け、携帯電話より解約がしづらい固定電話とのセットによる割引を提供することで、長期利用につなげることが大きな狙いとなっている。

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 そうしたユーザーの継続利用に向けた施策の一環として、キャリアが目を付けたのがポイントプログラムの強化であったと考えられる。これまでのポイントプログラムは、利用範囲がキャリアのサービス内に閉じられていたため、機種変更などを頻繁にしない人にとっては、ポイントに価値を見いだせないというデメリットがあった。だが、そのポイントが近所のお店でも利用できるとなれば、端末の買い替えに興味がない人にとってもポイントの価値は大きく高まり、継続利用によるメリットが得やすくなる。

 dポイントやTポイントはオープンなポイントプログラムなので、キャリアを問わず利用すること自体は可能だ。だがキャリアとポイントを紐付けて利用すれば、普段支払う携帯電話代でポイントが一層ためられるし、ソフトバンクの利用者がファミリーマートやガストなどで決済するとTポイントが通常の3倍たまるように、特定キャリアとの契約でより多くのポイントを獲得できるなど、メリットは大きい。


ソフトバンクはTポイント陣営との連携を強化

同社の利用者がファミリーマートやガスト、TSUTAYAで買い物するとTポイントが3倍になる施策を展開している

 加えて各キャリアは、au WALLETに代表されるように、ポイントプログラムと決済を結び付けることで、よりポイントをためやすくするなど、お得に利用できる施策に力を入れている。これには、決済とポイントのバリューチェーンによって、ポイントを生活上手放せない存在とすることによって、やはり長期的な利用へと結び付けたい狙いがあるといえるだろう。

ポイントが第2のキャッシュバックになる?

 2014年にメディアでも多く取り上げられた、携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)利用者に対するキャッシュバックは、頻繁にMNPして端末を買い替える人だけが得をし、あまり端末を買い替えない人が損をするとして、問題視されることが多い。だが新しいポイントプログラムの場合、機種変更をしない人でも日常生活でポイントが利用できることから、より多くの人が恩恵を得られるというメリットがある。

 しかしながら、ポイントプログラムもキャッシュバック同様、キャリアや関連する企業からの“持ち出し”によってユーザーがお得になる仕組みだ。それだけにキャリア間の競争が過熱するあまり、ポイント増額競争に走る懸念もないとは言い切れないだろうし、MNPより利用の幅が広いとはいえ、ポイントを利用する人と利用しない人との差という問題はどうしても発生することになる。この点をどう考慮していくかは、今後の各キャリアの動向を考える上で、大きな要素の1つになってくるだろう。

 ちなみに携帯キャリアのポイント競争は、既存の3キャリアだけに限ったものではない。国内のポイントプログラムでは最大手ともいえる「楽天スーパーポイント」を抱える楽天が、2015年に入ってからMVNOの「楽天モバイル」で、楽天スーパーポイントと連携した施策を積極的に展開している。しかも楽天は「楽天ポイントカード」(旧Rポイントカード)で、リアル店舗でのポイント利活用も進めていることから、今後は楽天モバイルでも、ポイント加盟店を活用した施策を打ち出してくる可能性が十分考えられそうだ。


楽天モバイルは2015年より、楽天スーパーポイントとの連携した施策を積極的に導入

ポイントによる支払いもできるようになった

 一方、ポイントのアライアンスという視点で見た場合も、既存のポイントプログラムに大きな会員基盤を持つキャリアが次々入り込んできたことで、従来の構図が大きく変化しようとしていることは見逃せない。特に5400万の会員を持つNTTドコモが、オープンなポイントプログラムを開始したことの影響は非常に大きいと見られ、今後は一層、各陣営が入り乱れての激しい競争が繰り広げられる可能性が高いといえそうだ。

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