メッセンジャーを軸に、LINEはスマートフォン時代の新たなポータルになる――LINE 出澤剛社長に聞く:新春インタビュー(1/3 ページ)
日本を代表するプラットフォームサービスとなった「LINE」は、コミュニケーション分野で大きな存在感を示し、デジタルコンテンツ、物販やO2O、タクシー配車などさまざまな分野に裾野を広げている。LINEは2016年にどこへ向かうのか。出澤社長に聞いた。
日本を代表するスマートフォン向けサービスとなったLINEは、2016年、どこに向かうのか。2015年、新社長に就任した出澤剛氏に話を聞いていく。
スマートフォン時代の到来を追い風に、日本を代表するプラットフォームサービスとなった「LINE」。まずはコミュニケーション分野で携帯電話会社の“キャリアメール”を圧倒し、その後、ゲームや音楽といったデジタルコンテンツ、物販やO2O、タクシー配車などさまざまな分野にLINEのサービスは裾野を拡大している。
日本を代表するスマートフォン向けサービスとなったLINEは、2016年、どこに向かうのか。2015年、新社長に就任した出澤剛氏に話を聞いていく。
さまざまな新サービスを投入した2015年
―― 2015年は社長就任後の最初の1年となったわけですが、出澤社長にとってどのような1年でしたでしょうか。
出澤氏 私の社長就任前から経営体制の刷新は行われていましたので、経営方針自体は(社長就任前と就任後で)大きく変わってはいません。プラットフォーム事業の強化やアジアを中心とした海外展開の積極化など基本姿勢は同じですが、事業の規模が大きくなり、難易度が高い領域に入ってきたと感じています。スマートフォン市場全体も成熟期に入っていますので、プラットフォーム事業の競争も激しくなってきている。しかし、そのような中でも、インドネシアでLINEがトップシェアを獲得するなど、一定の手応えを得ています。
―― 2015年の新春インタビューで、出澤社長は「(ユーザーの)LINEの接触時間を伸ばしていきたい」とおっしゃいました。コミュニケーション以外のサービス領域において、この1年の手応えはいかがでしょうか。
出澤氏 コンテンツ分野ですと、LINEゲームは引き続き好調です。そして2015年に始めたものとしては、「LINE MUSIC」があります。LINE MUSICのダウンロード数は一気に860万DLとなりまして、日本の定額制音楽サービスとしてはトップになりました。グローバルで見ても、売り上げで9位、ダウンロード数で5位になりました。
他にも、「LINE NEWS」のアカウントメディア化で、初日だけでフォロワー数が300万人を突破し、24媒体が参加しました。また動画配信サービスの「LINE Live」では初日で500万再生となるなど、新サービスの好調な滑り出しにより、ユーザーのLINEとの接触時間は順調に伸ばしています。
コンテンツ分野以外では、O2O系の「LINE@」が好調ですね。既に日本で20万店舗以上が(LINE@を)使用しています。またLINE予約では飲食店の予約サービスを始めましたが、こちらの対応店舗も4万5000店舗を超えています。これはオンライン予約サービスとして、日本でトップだと自負しています。また海外でもインドネシアなどで始めています。
ユニークなところとしては、求人情報サービスの「LINEバイト」も始めました。このサービスではLINEらしい特性として、求職者がバイトの採用担当者とLINEを通じて気軽にコミュニケーションが取れる機能などを実装しています。
決済サービス事業は2016年の重点項目の1つ
―― 定額制音楽サービスについては海外では「Spotify」が成功していますが、日本では各社が「有料課金への移行」に課題を抱えています。無料期間は多くの人が利用するのですが、なかなか有料課金率が高くならない。この点について、LINE MUSICはいかがでしょうか。
出澤氏 状況的には、日本の(有料課金の)難しさについては同じだと思いますね。日本のユーザーは「音楽を無料で聴く」ことに慣れているので、それを変えていくというのはとても時間がかかることでしょう。しかしLINE MUSICは有料課金への移行率が全てかというとそうではありません。ユーザーの(LINEとの)接触時間を伸ばすことに貢献していますし、定額制による有料課金以外にもさまざまなビジネスの展開があると考えています。
―― 音楽ビジネス全体で見ますと、収益の確保を「物販」や、ライブやフェスといった「興業」や「箱物」にシフトする動きがあります。LINE MUSICの将来像として、コンテンツ配信以外の音楽ビジネスを手掛ける考えはありますか。
出澤氏 LINE MUSIC自体は音楽コンテンツ配信を柱に展開していきますが、われわれの強みは何かというと、LINE全体を通した若年層ユーザーとの接点ということになります。そこで音楽ビジネスとの関わりを作っていきます。
具体的な例を申し上げますと、われわれは(動画配信の)LINE LiveやLINEブログ、さらにLINEの公式アカウントといったものがあります。それらをミュージシャンやレーベルに使っていただき、若いファンとの間にコミュニケーションを取るのに最適なツールがある。さらにLINEにはコマースやペイメントのサービスもありますので、そこで物販や投げ銭的なビジネスを展開することができます。
―― ミュージシャンとファンのコミュニケーションを土台にして、その上で物販など周辺ビジネスの場を作る。LINEとしては、そこでの課金などでも収益を上げていくということですね。
出澤氏 チケッティングなどもあると考えています。ミュージック単体のビジネスではなく、われわれ が持つさまざまなサービスが複合的に重なり、新たな価値やビジネスを作っていきます。
―― 最近ですと、コンテンツ制作の現場でクラウドファンディングを活用する事例が増えてきました。LINEとしてクラウドファンディングサービスを提供する計画はないのでしょうか。
出澤氏 クラウドファンディングという文脈でのサービスはないのですが、小額課金を用いたファンクラブなど、似たような機能を持つサービスについては検討を進めています。
―― コンテンツはもちろんですが、今後のスマートフォン向けビジネスにおいて「課金ポイントを押さえる」ことがとても重要になってきます。LINEでは、既に決済サービスや個人間送金で使える「LINE Pay」を導入していますが、現在の利用状況やビジネス的な手応えはいかがでしょうか。
出澤氏 詳しい数字はお話できないのですが、ペイメントに関しては強化の施策に取り組んでいる最中です。今は日本とタイと台湾でLINE Payを展開していますが、まずはこの提供エリアを広げたい。また決済については国ごとに違いが大きく、クレジットカード利用率が高い国もあれば、低い国もあります。日本は特にクレジットカード利用が低い地域ですので、ここではパートナーシップが重要だと考えています。
―― 日本でネット企業が決済サービスを提供する場合、クレジットカード以外では、通信キャリアが提供するキャリア決済サービスの加盟店になるか、自らが口座引き落としやコンビニ払いのスキームを提供するかの二択があります。後者はまさしく(決済サービスにおいて)「キャリア的な立ち位置に立つ」ことでもあるわけですが、LINEが目指す方向性はどちらですか。
出澤氏 目指すべき方向でいえば、後者ですね。LINE Payでは既に大手主要銀行での口座引き落としが利用できるようになっていますし、今後もそういった取り組みを続けていきます。クレジットカードをお持ちのお客様に登録を促していくのはもちろんですが、今後は非クレジットカードユーザー向けの決済サービス拡充に力を入れていきます。
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