VR市場が急拡大し、“モノのスマートフォン化”が進む――CES 2016を振り返る:佐野正弘のスマホビジネス文化論(2/2 ページ)
「CES 2016」取材で見えてきたIT業界の新たなトレンド。それが、VR市場の急速な広がりと、IoTを通り越した車や家電など、“モノのスマホ化”だ。
家電や自動車で急速に進むスマートフォン化
VRに続いてもう1つ注目されるのが自動車分野である。今回のCESでは自動車に関する発表や展示が相次ぎ、電気自動車や車載インフォテインメントシステム分野で大きな盛り上がりを見せていた。
専門家ではないのであまり詳しい話をすることはできないのだが、今回のCES取材を通じ、自動車とITの結び付きが今まで以上に急速に進化していることを肌で実感できた。その流れが携帯電話からスマートフォンへと変化した時と重なって見えたのも、また事実だ。
例えば多くのIT関連企業が力を入れている車載インフォテインメントシステムは、位置情報や地図の表示、音声・メールなどのコミュニケーション、動画などのエンタテインメントコンテンツの再生、そしてネット接続と、求められている要素がスマートフォンと極めて近い。搭載されているチップセットもスマートフォンと同種のものであり、こうしたシステムの普及はまさに、自動車のスマートフォン化ともいえる状況になっている。
そしてこうした“モノのスマートフォン化”の流れは、自動車に限ったことではない。SamsungはCESに合わせて「Family Hub」という冷蔵庫を発表したが、これも冷蔵庫に21.5型ディスプレイを備え、冷蔵庫を開けることなくその中身を表示でき、さらに写真や音楽を再生。不足した食材をタッチ操作で直接注文できるなど、スマートフォンのような使い方ができる冷蔵庫となっている。
CESのこうした流れを見ていると、あらゆる機器をインターネットに接続するというIoTの概念を通り越し、あらゆる機器がスマートフォン化していくという流れが起きつつあるようにも感じられる。実際、スマートフォン向けチップセットの大手であるQualcommは、通信機器向けだけでなく、自動車やロボット、ドローンなどさまざまな機器に向けた汎用チップセットと、それを導入しやすくする仕組み作りを進めるなど、さまざまなデバイスがスマートフォン化する将来に備えている。
スマートフォンはITの世界で非常に大きな成功を収め、多くの人々に普及した存在だ。それだけに、他の家電やデバイスがスマートフォンを手本として、新たな進化を遂げようという流れは、今後急速に強まっていくだろう。それがかつてのスマートテレビのように、必ずしも成功するとは限らないが、IoTの先を見据えた動きとして、大いに期待が持たれるところではないだろうか。
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