2in1で先行するWindowsタブレット、iPad Proに負けない優位性とは:「モバイル・ファースト」時代のWindows最前線
Appleが発売した9.7型「iPad Pro」。PCの置き換えを狙うデバイスで、キーボードとペンを組み合わせた姿はMicrosoftのSurfaceシリーズをほうふつとさせる。
Appleは3月31日、9.7型「iPad Pro」を発売した。前モデルと同じくPCの置き換えを狙うデバイスと位置付けられており、キーボードとペンを組み合わせた姿はMicrosoftのSurfaceシリーズをほうふつとさせる2in1スタイルだ。
だが、見た目は似ていてもその中身は大きく異なる。最新の2in1 Windowsデバイスは、デスクトップPCやノートPCと同じフル機能のWindows 10を搭載する。これに対してiPad Proは、iPhoneと基本的に同じモバイル向けOSのiOSだ。
Windows 8や8.1の時代から、Windowsは2in1デバイスの分野で先行してきた。その優位性はどこにあるのか見ていこう。
Android端末メーカーもWindowsに続々参入
Windows PCの優れている点として、さまざまな形状のデバイスを自由に選択できることが挙げられる。単に2in1といっても、タブレット単体で使える脱着型だけでなく、ノートPCの状態からディスプレイを360度回転してタブレットに変形するものもある。
例えばLenovoのThinkPad X1シリーズは、脱着型の「ThinkPad X1 Tablet」に加え、360度回転する「ThinkPad X1 Yoga」や、従来型のクラムシェル型「ThinkPad X1 Carbon」をラインアップする。PC市場で最大シェアを持つLenovoだからこそできる、全方位戦略だ。
また、新たな動きとしてAndroidのスマートフォンやタブレットを作っていたメーカーが、続々とWindows市場に参入してきた。
2月に行われた「Mobile World Conference 2016」(MWC、スペイン・バルセロナ)では、中国のTCL Communicationが「PLUS 10」を発表。CPUにAtom x5を搭載した10.1型のWindowsタブレットに、着脱可能なキーボードを組み合わせるデバイスだ。通常は本体に搭載するLTE通信機能を着脱式キーボードに搭載し、さらにキーボードをWi-Fiのアクセスポイントとして利用できるのも面白い。
スマホ市場でシェアを急拡大する同じ中国のHuaweiも、初のWindowsタブレットとして「MateBook」を発表した。第6世代Core Mプロセッサを採用しながら冷却ファンを搭載しないファンレス設計を採用。スタンドを兼ねた別売りのキーボードカバーと組み合わせ、2in1デバイスとして利用できる。
1月の「 2016 International CES」(CES 2016、米国・ラスベガス)で韓国のSamsungが発表した「Galaxy TabPro S」は、既に海外市場で発売が始まっている。Samsungは海外でノートPC製品を展開しているためWindows製品は珍しくないが、Windowsタブレットにスマホの「Galaxy」ブランドを冠したことで驚きを与えた。ひと目で違いが分かる鮮やかなSuper AMOLEDディスプレイや、USB Type-Cを搭載した先進性が特徴だ。
既存のPCメーカーも負けていない。ドイツ・ハノーバーで開催されたB2B見本市「CeBIT 2016」では、富士通や東芝が法人向けモバイルPCとして、最新の2in1モデルを展示。欧州市場における日本ブランドの存在感を示した。
柔軟性の高さならWindows、多彩なデバイスを選ぶ楽しみも
もちろん、近年ではクラウドサービスの普及により、必ずしもPCを必要とせず、iOSやAndroidのモバイルデバイスでこなせる仕事も増えてきた。IT業界に知り合いの多い筆者の周囲でも、そもそも自宅にPCを置いていなかったり、家に帰ってまでPCを起動したくないという人は増えている。
だが、仕事ではWindowsを使わざるを得ない場面は少なくない。アプリ開発や特殊な周辺機器にPCが必須であることはもちろん、簡単なビジネス文書を作るだけでもキーボードとマウス、大きなディスプレイの組み合わせは快適だ。
確かにWindows 10は、ユニバーサル Windows プラットフォーム(UWP)アプリの種類や標準Webブラウザ「Edge」の使い勝手に問題が残っており、ユーザーインタフェースの基本でもあるフォントの品質に疑問の声は多い。それにもかかわらず、従来バージョンからの移行促進が性急すぎる嫌いはある。突然、最新CPUにおけるサポート期限の短縮を発表したかと思えば、反対の声を受けて延長するなど、迷走している感は否めない。
だがMicrosoftが主張するように、Windows 10がセキュリティに優れた最新の実装を持っていることは評価できる。最新の2in1デバイスで触れてみれば、快適に動作していることが分かるはずだ。
また、UWPアプリの不足についても、Windowsユーザーにとって本当に大事なのはデスクトップアプリやWebアプリの互換性であり、Windowsのバージョンがいくつになろうとも必要なアプリさえ動作すれば不満はないという人が大半ではないだろうか。
Windowsをタブレットとしても使いたい人には、2in1が向いている。もちろん、タブレットに関心がなければ従来型のクラムシェル型も選択できる。いずれのデバイスでも同じOSが動いており、同じアプリが動作する。同じプラットフォーム上でさまざまな形状のデバイスを使いたい人にとって、WindowsにはiPad Proにない魅力があるといえるだろう。
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