総務省タスクフォースを検証するも「理解不足」「難癖」が続出――現場を知らない人たちに、消費者のための議論ができるのか:石川温のスマホ業界新聞
総務大臣からの携帯電話料金に関する「要請」に対する、各キャリアの対応状況を確認するタスクフォースの会合が総務省で開催された。会合は中身のない議論に終始。総務省はもっとやるべき仕事があるのではないだろうか。
5月26日、総務省において「ICTサービス安心・安全研究会(第9回)、利用者視点からのサービス検証タスクフォース(第7回)合同会合」が開催された。
携帯電話料金を巡るタスクフォースにより、高市早苗総務相から各キャリアに要請が出たが、その対応がどうなったかを振り返るという会合だ。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年5月28日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。
取材に足を運んだが、構成員がそもそも各キャリアの発表した新しい施策を理解できていない、あるいは難癖をつけていたのが印象的であった。野村総合研究所の北俊一プリンシパルは、相変わらず、キャッシュバック撲滅を訴え続けるばかりで、なんとも無駄な時間を過ごしてしまった感がある。
各キャリアの渉外や営業担当、弁護士や大学教授、総務省の役人が集まって、あんなに中身のない議論を延々とできることに空いた口がふさがらなかった。
この会合の前に、日経新聞が高市総務相のインタビューを掲載。NTTドコモがタスクフォースの影響により、700億円の減収になる見込みに触れ、「予想以上のお金が消費者に還元される」と評価していた。
しかし、国の大臣が、民間企業の収益が下がったことを手放しで喜ぶという姿は理解に苦しむと言わざるを得ない。
NTTドコモでは、ライトユーザー向けの施策として「シェアパック5」を3月から提供している。これとカケホーダイライトを組み合わせ、家族3人で使うと一人あたり4500円になるから、「ライトユーザー向けの月額5000円以下をクリアした」ということにしている。
まだ、提供して日が浅いが、すでにシェアパック5は100万契約を突破するほどの人気になっているようだ。こうした影響も700億円の減収につながるようだ。
とはいえ、「安いから」とシェアパック5に飛びついたところで、家族3人で5GBというのはかなり少なすぎるのではないだろうか。子どもがいればU25応援割により、1GBがプラスされるが合計6GBでも足りないかもしれない。過去にカケホーダイ&パケあえるを導入した当初、2GBプランにユーザーが殺到し、NTTドコモの収益にダメージを与える結果となったが、結局はユーザーがより多くのデータ容量を求めるようになり、収益が改善した。
今回も、導入当初は減収へのインパクトがあるものの、いずれはシェアパック5では足りずに上位のシェアパックを契約することになるのだろう。
総務省が熱心に導入を進めるライトユーザー向けプランは、ケータイからスマホへの移行時には有用なプランではあるが、すぐに足りなくなるのは目に見えている。
本来であれば、ライトユーザー向けプランよりも、ボリュームゾーンのユーザーが使うプランをもっと値下げさせる方が、多くの人にメリットがあるはずだ。
今後、LTEはさらに高速化され、ますますデータ容量を消費するようになるだけに、ライトユーザー向けプランばかりに注力するのではなく、もっと平均的なユーザーやヘビーユーザーに優しいプランを作らせるのが総務省のやるべき仕事ではないだろうか。
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