iOS 10で進化する「iMessage」はLINE対抗にあらず――アプリ流通を「メッセージ経由の口コミ」で拡散するのが狙いか:石川温のスマホ業界新聞
Appleの開発者会議「WWDC 2016」の基調講演では、iOSの「iMessage」のプレゼンテーションに時間が割かれた。スタンプ対応を見るとLINEに対抗しようとしているようにも見えるが、アプリによるアドオン対応にこそ注目すべきだ。
WWDCでの基調講演において、アップルが注力してプレゼンしていたのが、iMessageの進化だ。
絵文字を3倍に表示したり、リンク先の画像や動画を引用して表示。強調したいメッセージは吹き出しを大きくしたり、逆に小声でささやくような表示にもできる。手書きメモを送ったり、「見えないインク」で送り、指でなぞることで文字を見えるようにしたり、画面全体に装飾を施すといったこともできる。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年6月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税込540円)の申し込みはこちらから。
iMessageをオープン化し、スタンプなどを提供できるようにもなった。
このプレゼンを見たときに「アップルはLINEやFacebook Messangerに対抗したいのか」と率直に思った。同時に「確かに機能的には上回る面もあるが、LINEもFacebook Messangerも相手がAndroidスマホでも送れるというのがメリット。どんなにiMessageが機能強化されても、LINEやFacebook Messangerから乗り換えることはないのではないか」と判断した。
とはいえ、進化したiMessageの強みといえば、オープン化され、様々なアプリがサービスを提供できるという点が大きそうだ。実際、基調講演のデモでも、相手に送金するというアプリが紹介された。iOS向けにアプリを提供しているサービスであれば、iMessage向けにアドオンするかたちで、機能を追加できる。
例えば、複数人で飲み会の日程を決められる「調整くん」系のアプリであれば、iMessage向け機能を追加することで、グループでの会話のなかで、アプリの機能を使ってもらえるようになる。
1対1、あるいは複数人でのiMessageにおいて、単にメッセージをやりとりするだけでなく、そのなかにアプリが入ることで、仮に1人しか使っていなかったアプリが、一気に複数人がダウンロードし、ユーザーが広まる可能性も出てくるだろう。
グーグルは、アプリをダウンロードしなくても、ウェブ上で、アプリの一部を使える「Instant App」という機能を発表し、アプリの普及拡大に繋げようとしているが、アップルはiMessageをベースにアプリを普及させようとしているのかもしれない。
iMessageでアプリが使えるとなると、LINEやFacebook Messangerとは方向性が異なるかもしれない。iOS向けで提供されている豊富なアプリがiMessage向けサービスを様々に展開できるようになると、これからのコミュニケーション手段が変わってくるかもしれない。
ただ、ここで気になるのが、弱点ともいうべき「Androidユーザーが使えない」という点だ。
ただ、この懸念については、WWDC開催前に「iMessageがAndroidにも開放される」という情報が流れた。結局、WWDCで正式発表されなかったが、いずれはアップルとしてもAndroidへの開放は視野に入れているのではないか。Apple MusicもAndroidプラットフォームで使えることを考えると、iMessageの開放も決して難しいことではないだろう。
果たして、iMessageが、世界で乱立するメッセンジャーたちを出し抜くことができるのか。それは、iOS向けアプリが、どれくらいiMessageに対応するかにかかっているだろう。
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