未完の大器と、進化の片りんと――新型MacBook Proに感じる「新時代への期待」(3/3 ページ)
新型MacBook Proの本命である「Touch Bar付き」の出荷が始まる。ノートPC分野におけるAppleの次世代への提案は、実際に使ってみてどうなのか。それを見ていきたい。
“プロ仕様”のMacBook Pro 15型モデル
バランスのよさから13型モデル中心で語ってしまったが、ここで新型MacBook Proの15型モデルも見てみよう。
新型MacBook Proのサイズは、349.3(幅)×15.5(高さ)×240.7(奥行き)mm、重量は1.83kgである。スーツケースやビジネスリュックに入れれば持ち歩けるサイズではあるものの、日常的なモバイル用途とは言いがたいのも事実だ。米国では自動車通勤が多いので15型モデルも“モバイル用”と定義されているが、日本の都市部のように電車通勤で毎日持ち歩くのはさすがにためらう大きさだ。どちらかというと、普段はオフィスや自宅の机に置いておき、出張時など必要に応じて持ち出す、といった使い方だろう。
また、当たり前だが、MacBook Pro 15型の大きさは利用時の机も選ぶ。特にビジネスホテルの小さなライティングデスクや飛行機や新幹線のトレイテーブル、都市部のカフェに多い小さなテーブルでは、少々持て余すサイズだ。
13型モデルよりもひとまわり以上大きいMacBook Pro 15型モデルは、コンパクトになったとはいえ、日常的なモバイル利用はやや無理がある。特に外出先のテーブルや机では、その大きさはもてあますことが多かった
しかしその一方で、本体サイズの大型化によって得られる「15型 Retinaディスプレイ」の効果は絶大だ。とりわけ新型MacBook Proでは、広域色に対応し、ディスプレイが明るくなり、視野角も広がった。これを2880×1800ピクセルの15型ディスプレイで見ると、とにかく画面の美しさに圧倒される。写真や映像関連のクリエーターならば、それだけで15型モデルを選ぶ価値がある。この新しいディスプレイは視認性がとても高いので、外部ディスプレイやプロジェクターに接続することなく、プレゼンテーションで映像をそのまま見せられるというのもメリットだ。
そしてもうひ1つ注目なのが、MacBookシリーズ最大となったトラックパッドだろう。13型モデルでもトラックパッド大型化について触れたが、15型モデルはさらにトラックパッドが大きい。iPhone 7 Plusの画面サイズよりも、新型MacBook Pro 15型のトラックパッドは大きいのだ。これだけトラックパッドが大きいと、それだけでオフィスアプリはもちろん、写真・映像編集などクリエイティブ系アプリも無理なく使うことができる。画面の大きさも快適だが、トラックパッドの大きさによる快適さの方が、筆者は強く印象づけられた。
他にも、15型モデルは標準状態でCPUが4コアのIntel Core i7プロセッサであり(13型モデルはデュアルコアのCore i5プロセッサ)、基本性能自体もMacBookシリーズとして最高峰だ。総じていえば、MacBook Proは「プロ仕様」であり、それにふさわしい内容になっている。
新世代フルモデルチェンジにふさわしい内容
誤解を恐れずにいえば、新型MacBook Proには先代のMacBook ProやMacBook Airのような「熟成された完成度の高さ」はない。新世代のノートPCに向けた挑戦と模索が随所にあり、完成度そのものはApple製品としてはやや低い。まだまだよくなりそうだと感じるところは随所にあり、その点で言えば「未完の大器」である。
しかしその一方で、未熟かというとそうではない。
12型のMacBookで先行していたTaptic Engineを用いたトラックパッドやバタフライ構造のキーボードには、すでに進化の片りんを強く感じた。ノートPCとして、仕事の道具としてもっとも大切な部分は、きちんと熟成している。
全体として見れば、新型MacBook Proは「ポストPC時代において、これからのノートPCがどうあるべきか」がしっかりと考えられている。とりわけiPhone/iPadユーザーがPC購入を考える際には、一度店頭で試してみて損はないだろう。
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