「R」と同等の画質、性能、発熱対策を――「AQUOS R compact」を快適に使ってもらうための工夫:開発陣に聞く「AQUOS R compact」(後編)
シャープのスマートフォン「AQUOS R compact」の開発者インタビュー。前編ではデザインやソフトウェアについてお伝えした。後編では、ディスプレイやパフォーマンスについての工夫を聞いていく。
シャープのスマートフォン「AQUOS R compact」の開発者インタビュー。前編ではデザインやソフトウェアについてお伝えした。後編では、ディスプレイやパフォーマンスについての工夫を聞いていく。
画質はAQUOS Rと同等レベルに
コンパクト端末ながら、画質とパフォーマンスはAQUOS Rと同等レベルを目指し、従来の60Hz(1秒間に60回)駆動よりも滑らかに表示する120MHz駆動(ハイスピードIGZO)に対応。一方、AQUOS R compactがRから変わったのは、画面アスペクト比が16:9から17:9へと縦長になったこと。通信事業本部 パーソナル通信事業部 システム開発部 課長の前田健次氏は「縦の解像度が17になった分、単純計算で16分の17、速度を上げないといけません。駆動するラインが増えたので、120Hzでスキャンできるようキャッチアップするのが難しかったです」と話す。
それでも「倍速表示には特にこだわりました」と通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 課長の楠田晃嗣氏は話す。「AQUOS R compactはAQUOS Rより画面サイズが小さい分、(例えばブラウザをスクロールする際)同じ指のスクロールに対して文字がぼけやすく、より多くの行数が動きます。文字の移動距離がドットレベルで大きくなるためです」と同氏は説明する。
タッチパネルもフリーフォームディスプレイに対応させるために、特殊な配線パターンを採用した。「タッチパネルには透明の電極が入っているので、(イン)カメラの前にあると(電極が)映ってしまいます。通常は映りませんが、光がある角度から反射することがあります」と通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏は話す。特殊な配線パターンにより、操作性にも影響が出ないそうだ。
(ディスプレイから背面まで全体を覆う)フロステッドカバーを付けても操作できるようにすることも、グローブモードに対応させることも、AQUOS Rより難易度が高かった。このように、AQUOS R compactの形状でAQUOS Rと同等の操作性を実現するためには、一歩高いハードルをクリアすることが求められた。
プロセッサはAQUOS Rで採用した「Snapdragon 835」から「Snapdragon 660」にダウングレードしているが、「これで十分」というのがシャープの考えだ。「(液晶を)倍速で動かすにもメモリのスピードが重要で、CPUのクロックは問題ではありません。この(AQUOS R compactの)スペックなら660が最適だと判断しました。ちょっと前まではSnapdragonの6と8でかなり差があった印象でしたけど、実際に触っていただければサクサク動くと分かるはずです」(小林氏)
発熱対策もしっかりと
AQUOS Rでは熱が拡散するよう内部にアルミニウム合金とグラファイトシートを採用し、温度センサーを表面近くに置くことで、発熱を大きく抑えることができた(関連記事)。この発熱の制御がAQUOS Rで好評だったと楠田氏は振り返る。AQUOS R compactでも発熱対策は施しているが、Rとはその手法が少し異なる。
AQUOS R compactはRよりもサイズが小さいので、熱が逃げにくいというデメリットがある。そこで、R compactでは面積の広い1枚タイプの基板を使うことで、CPUの熱が基板全体に広がるようにした。その下にある金属のシャシーはAQUOS Rより厚くして、(側面の)フレームまでつなげることで、熱が全体に広がるように工夫した。
「AQUOS Rは上半分に基板があったので、どちらかというと上の方に熱を逃がす構造でした。(ユーザーの手が)触れるところはあまり熱くなりにくいわけです。AQUOS R compactでは、効率よく放熱をすることでパフォーマンスを維持することにかじを切っています。若干温度は高めに感じるかもしれませんが、(熱くなっても)パフォーマンス落ちないようにしています」(小林氏)
表面温度を測りやすい場所に温度センサーを置く考えはAQUOS Rと同様で、AQUOS R compactではSIM/microSDスロット近くに備えている。
12カ月使っても、寿命の90%をキープ
バッテリーの「スタミナ」や「充電速度」に注力するメーカーは多い。AQUOS R compactもUSB-PDやQuick Charge 3.0の高速充電に対応するが、シャープは「寿命」にも着目した。
「バッテリーの持ちや充電速度と同じく、寿命を気にしている人が増えてきています。スマートフォンの買い替え周期が2年~3年弱ぐらいまで伸びてきていますが、電池が劣化するから買い替えないといけないという人もいます」(小林氏)
高速で充電をすると、バッテリーが温かくなって寿命が短くなりやすい。そこで、満充電に近い、または満充電になった後の充電を制御することで、バッテリーへのダメージを減らす「インテリジェントチャージ」を導入した。
シャープのシミュレーションでは、AQUOS R compactを12カ月使い続けても、バッテリーの寿命は90%維持できるという。ちなみに、同様の制御を施さずに12カ月使い続けると、寿命は80%まで下がるそうだ。
インテリジェントチャージは設定のメニューにあるわけではなく、「ひっそりと入っている機能」と小林氏。AQUOS R compactとAQUOS senseで採用している。なおAQUOS Rも寿命の計測はしていないが、同じような制御は行っているとのこと。
EDGEST fitがシャープの武器に
今後、シャープが投入するフラグシップモデルは、AQUOS R compactのようなEDGEST fitがベースになるのだろうか。小林氏は「先のことは申し上げにくいですが、われわれの武器であることは間違いありません」と話す。同じ画面サイズなら、額縁が狭くて小さい方がいいのは明白。スマートフォンAQUOSの中核を担うモデルも、AQUOS R compactのようなインパクトのあるデザインになることを期待したい。
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