楽天モバイルは2021年夏に人口カバー率96%へ、5Gは「大々的に発表する」と三木谷氏
楽天の三木谷浩史会長兼社長が、8月11日の決算説明会で、MNOサービス「楽天モバイル」の現状を説明した。基地局は2021年3月までに70%、2021年夏頃までには96%の人口カバー率を達成する見込み。9月末に提供予定の5Gサービスの料金プランは「驚きもある」という。
楽天の三木谷浩史会長兼社長が、8月11日の決算説明会で、MNOサービス「楽天モバイル」の現状を説明した。
4月にスタートした「Rakuten UN-LIMIT」は、6月30日に申込件数が100万を突破。100万という数字は契約数ではなく、あくまで申し込みのあった数。三木谷氏は「Rakuten Miniが売れすぎて在庫がないので、1~2カ月かかっている。また、当初は楽天市場で申し込みを受け付けており、契約するまでに1~2カ月ズレることが生じている」とその理由を明かすが、「大変好調に推移している」と手応えを話す。
5年前倒しで楽天モバイルエリアを全国展開へ
三木谷氏は好調の要因について、「バックボーンの技術を完全仮想化していること」「基地局建設が進んでいること」「楽天グループのエコシステム」の3つを挙げる。
中でも特に強調したのが、基地局建設だ。現在は2020年6月末時点で5739局の基地局が開設しており電波発射済み。この他、「建設完了しているのは1万以上だけだが、NTT回線との接続を待っている基地局が非常に多い」(三木谷氏)という。
楽天モバイルが総務省に提出した基地局の開設計画では、2026年3月末までに人口カバー率96%を目指すというものだったが、2021年3月までに70%、2021年夏頃までには96%の人口カバー率を達成する見込みだという。つまり5年前倒しで計画を達成することになる。三木谷氏は「基地局ではご心配をお掛けしたが、爆発的なスピードで建築が進んでいる」と意気込む。
なお、楽天モバイルのKDDIローミングは2026年3月末までの予定だが、インフラ整備が前倒しになるということは、ローミング契約の解除も前倒しになるのだろうか。楽天モバイルの山田善久社長は「個別の関係もあるので、詳細は申したくないが、ユーザーの方にはご迷惑が掛からない形でサービスを展開していく」と述べるにとどめた。
三木谷氏は「(エリア構築は)都市部が一番難しいが、そこを乗り切ったのが大きい。KDDIにはローミング費用を支払わないといけない。5GBまでは無料だが、回線(自社エリア)が広がれば完全なアンリミットになるので、ユーザーマーケティング的に非常に大きい」と話し、前倒しでのエリア構築は、楽天モバイルとユーザーの双方にメリットがあることを強調した。
5Gの料金プランは「驚きもある」
当初6月のサービス開始を予定していた5Gは、2020年9月末をめどに延期された。楽天モバイルは、NECとSA(スタンドアロン)方式の5Gコアネットワークを共同開発することで合意しており、2021年からの導入を予定している。また、経済産業省の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」にて、「クラウド型ネットワーク統合管理・自動最適化技術の開発」と「仮想化基地局制御部の高性能化技術の開発」の開発テーマで楽天モバイルが採択された。
5Gの提供が遅れたのは「インドでコロナの感染が増えて、データセンターへのアクセスができなかったため」と三木谷氏。それ以外は順調だとし、「料金プランは驚きもあるかなと思うが、楽しみにしていただきたい。来たるべきタイミングで大々的な発表をする」と予告した。
現在提供しているLTEサービスだけでなく、NECと共同開発する5Gのコアネットワークにはコンテナ技術を導入している。コンテナ技術とは、OS上に他のプロセスから隔離された実行環境を構築し、より少ないコンピュータリソースで仮想的な動作環境を実現するもの。三木谷氏はコンテナ技術の導入で「少なくとも30%のコスト削減ができる」と期待を寄せる。
特定のインフラベンダーに依存することなく、モバイル通信サービスネットワークの構築や運営が可能になるというRCP(Rakuten Communications Platform)。ここにコンテナ技術を導入している
全国でエリア化してから第2弾のロケットを
MMD研究所が2020年6月に実施したRakuten UN-LIMITの満足度調査では、総合満足度が80%に達しており、「プランが一本勝負の分かりやすさ、コストパフォーマンスや通信品質も満足いただいている」と三木谷氏は評する。
100万申し込みのペースについて三木谷氏は「だいたいそんなもんかなという感じ」と話す。米倉涼子さんを起用したCMを7月から展開しているが、全国で楽天モバイルが自社回線で使えるようになるタイミングで、「第2弾のロケットを打ち上げていく」と予告する。「5G技術も、SAで差別化してアンリミットとうまく組み合わせていくことで、さらに楽天モバイルの魅力を上げられると思っている。焦らず、しっかりとユーザー数を積み上げていきたい」
楽天はコロナ禍においてEC事業が好調だが、「単純にECでナンバーワンになるのではない」と三木谷氏。「モバイルで革新を起こして、新しいビジネスで将来、2000万人や3000万人のユーザーを獲得できれば、ポイントやデータを使ったさまざまなマーケティングが可能になり、ファイナンスの分野でも付加価値の高いサービスを提供できる」と、楽天エコシステムの拡充を目指す。
楽天カードの会員数は2020年6月で2000万を突破したが、「楽天モバイルも、楽天カードを上回る成長になるのでは」と三木谷氏は期待を寄せる。「(他キャリアと比較して)月間4000円、年間で5万円、4人家族なら年間20万円、5年で100万円を節約できる。経済メリットは、楽天カード以上に大きなものを提供できると思っている」
サブブランドは対抗できない
楽天モバイルのMVNOからMNOへの移行については、現在は「あまり急いでいない」(三木谷氏)そうだが、「ワンクリックで移行できる機能を開発し終えた」という。「秋にかけてMVNOユーザーがさらに乗り換えていただけるような仕組みを考えている」と予告した。
UQ mobileを中心に、キャリアのサブブランドが楽天モバイル対抗のプランを投入したことについては「そういう戦略に出ると想定していた」と余裕の構え。「(キャリアが)自分の収益を痛めることなく、サブブランドで対抗したいということだが、データはアンリミットでない。いろいろな形で制約が付いてくるので、対抗できない」と自信を見せた。
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