Qualcommとソニーの協業で変わるスマホのカメラ体験 Snapdragon 8 Gen 2で実現したこと:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
Qualcommのスマートフォン向けフラグシッププロセッサ「Snapdragon 8 Gen 2」では、AIの強化に加え、カメラの制御を担うISPも大きく進化させた。その一端を担うのが、センサーを開発するソニーセミコンダクタソリューションズだ。特にAIを用いたカメラ性能が向上しているという。
ビジネス面でもメリットあり、伝えやすいユーザー体験
Quad Digital Overlap HDRやマルチカメラ処理のような技術的成果を出しやすいことに加え、ビジネス面でもQualcommと連携しておくことは重要だという。「ジョイントラボだけではないが」と前置きしつつ、御厨氏は次のように語る。
「チップメーカーとの連携で、新しい機能をお客さまに提案した段階できちんと動作する環境が担保できるため、明らかに(それをしていない他社より)優位(に立てる)。それが直接的なオーダーにつながっているかというと定義が難しいが、提案した機能がすぐに使える状態になっていることは、確実にプラスになっている」
冒頭でQualcommのカトージアン氏が挙げていた通り、ISPはSnapdragon 8 Gen 2の中でも重要な機能の1つ。この分野で圧倒的に高いシェアを誇るソニーとの連携は、Qualcommにとってもプラスといえる。センサーとプロセッサのすり合わせは、「(Qualcomm以外のメーカーとも)平等にやっている」(同)ため、より深い協力関係を築いておくことで、プロセッサの差別化になる。
また、スマートフォンの技術が成熟したこともあり、単純な処理能力の向上だけではプロセッサをアピールしづらくなっている。Qualcommも、Snapdragonを発表する際は、数字ではなく、いかに“ユーザー体験”を伝えるかを重視しているという。カトージアン氏は、「私たちは先進的な技術から離れることはない」と前置きしながら、「ユーザー体験に結び付かないテクノロジーはある意味、無意味なもの」と語る。
「例えば、このモデムを使うと、このぐらい電波強度が改善すると言っても消費者には理解してもらえないが、ドロップコール(通話の失敗)を50%カットできると言えばすぐに分かってもらえる。同様に、この端末なら、あなたが目で見たものに近い形で撮影できると伝えれば理解できる。(中略)ユーザー体験の向上と開発者の参加を促すことは、最高の技術を生み出すことと同じぐらい重要だ」
実際、Snapdragon Summitの基調講演も、CPUのクロック周波数やAIのTOPS(演算回数)といった数字ではなく、感覚に訴えかける要素が多かった印象を受ける。「いかにきれいな写真を撮れるのか」「グラフィックスがどこまでリアルなのか」――Qualcommが伝えようとしていたのは、そんなユーザー体験だ。ただ、カメラはやはりセンサーやレンズがあってのもの。プロセッサだけでは全体像を描き切ることは難しい。カメラへの知見を深めるという意味でも、ソニーのようなセンサーメーカーとの提携はQualcommにとって必須だったといえそうだ。
(取材協力:クアルコムジャパン)
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