KDDIが語る「パケ止まり」対策 2024年度は5G本来の力を発揮、基地局数も大きな武器に(2/2 ページ)
KDDIが2月15日、5Gエリア展開と通信品質向上に向けた取り組みを説明した。2023年度末までの5G普及期は、4Gの周波数を転用することでエリアを拡大してきた。2024年度以降は普及期と位置付け、5G本来の力を発揮する環境が整うという。
人が密集するイベントでも対策 Starlinkもエリアの補完に活躍
KDDIは、コミックマーケットや各種イベントなど、人が密集する「非日常」の場面で大量のトラフィックをさばくための対策も行っている。例えば2023年末のコミックマーケットには2日間で27万人が来場。端末の接続回数は通常の10倍に及び、夏のコミケと比べても1.5倍だったという。KDDIは車載型の基地局と可搬型の基地局で対応しつつ、ノウハウを総結集した。
こうした対策が功を奏し、コミケ開催中のSNS(X)での投稿内容は、ポジティブな意見が56件だったのに対し、ネガティブな意見は8件だったという。ただ、「つながるのが当たり前」と考えている人はポジティブな投稿をなかなかしないので、ネガティブな意見の最小化に努めている。
KDDI 取締役執行役員 パーソナル事業本部 副事業本部長 兼 事業創造本部長の松田浩路氏によると、コミックマーケットの開催期間にpovoの申し込みが前週比で2.5倍ほど伸びたという。「2枚目のSIMとして使っていただいているのかなと感じている」
衛星通信のStarlinkも、エリアを補完するために基地局のバックホールとして、またはWi-Fiを経由する形で活用している。令和6年能登半島地震では750台のStarlinkを導入し、ピーク時には1日あたり1.5TBを超えるデータをさばいた。
コミックマーケットでも、車載型基地局のバックアップ回線としてStarlinkを導入した。フェスではWi-Fi経由でも運用。「20台のスターリンクのアンテナを持って、100台くらいのWi-Fiアクセスポイントを配備した。主催者の方はキャッシュレス決済で通信ができず、長蛇の列ができることを気にされるので、円滑に通信できるようにした。結果的に、物販の売り上げにも貢献できた」(松田氏)
この他、山間部での基地局や、山小屋Wi-FiとしてStarlinkを活用した。新しいユースケースとして、建設中の超高層ビルにStarlinkのアンテナを取り付けた事例もある。
2024年内には、衛星とスマートフォンの直接通信も予定している。2024年1月に、スペースXが対応衛星6機を打ち上げ、通信試験に成功した。まずはメッセージングサービスから提供する予定だが、提供開始時期は、決まり次第別途案内される。
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