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スマホ残価設定に「グループ細分化」案が浮上 Appleは「一律化」に猛反発、「価値が低い機種への不相当な補助」

総務省はスマホの残価設定プログラムの複雑化を受け統一基準の策定に向けた折衷案を提示した。大手3キャリアやGoogleは運用負荷の軽減から一律化を推すが、Appleらは機種ごとの設定を支持する。総務省は一律化を困難としグループの細分化を検討するが、公平な基準作りへのハードルは依然として高い。

 総務省が5月15日に開催した第7回「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」では、短期解約問題の対策に加え、スマートフォンの残価設定についての論点整理も行われた。

残価は機種ごとに設定すべきか、一律で決めるべきか

 携帯キャリアが提供している端末購入プログラムでは、2年など一定期間経過後に端末を返却すると、残価の支払いが免除される。この残価の設定方法が、議題の1つとなっている。現在の残価は、中古端末の業界団体、RMJ(リユースモバイル・ジャパン)が算出している、先行同型機種の買い取り実績データをベースにしているが、最終的な残価はキャリアが算定している。

 この残価の算定方法が複雑化しているため、統一された基準を設けるかどうかが焦点となっている。これまでの議論では、大きく「(1)グループ化を禁止して機種ごとに残価を算出する案」と「(2)全機種で一律の残価率を採用する案」の2案が出ている。しかし、(1)では中古市場で流通量の少ない機種の正確な残価率を反映できず、(2)ではリセールバリューの高い機種の残価が安くなり、リセールバリューの低い機種の残価が高くなるなどの不公平性が生じる恐れがある。

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機種ごとの残価設定か一律の残価設定の方向性があるが、どちらもメリットとデメリットがあるため、総務省は2つの折衷案を示す

 そこで、総務省は(1)と(2)の要素を含む「折衷案」を以下の通り考案し、キャリアやメーカーに意見を求めた。

  • 折衷案1:機種ごとの算出ルールを義務化しつつ、RMJのデータ以外も参照可能とする。先行同型機種がない場合は、スペックや価格が類似する他機種を参照して残価率を算出する
  • 折衷案2:全機種で残価率を一律で低減するモデルをベースにしながら、これよりも市場価値が高い機種については、RMJの公表データを参照して残価率を設定する

 折衷案1は現行ルールに近く、RMJのデータ以外も参照可能とする点が新しい。一方の折衷案2は現行ルールから大きく変わり、一律の残価率設定がベースになる。

大手キャリアやGoogleは残価率の一律化を希望も、Appleが猛反発

 ドコモとソフトバンクは、折衷案1、2ともに事業者の裁量が含まれることや運用負荷が増すことを理由に反対し、全事業者・全機種一律で平均利用期間に応じた低減モデルが最適との考えを示す。KDDIもおおむね主張は同じで、6年償却を前提とした一律の残価率低減モデルを基本とする案を示す。3キャリアからは、機種ごとの煩雑な残価設定から解放されたい意向が伝わってくる。

 楽天モバイルは大手3社と異なり、現行の算出方法を継続することが適当だとする。これは、RMJが公表したデータを参考にしつつ、端末をグループ化して残価率を設定する現在の方法が、柔軟な運用を可能にしていると考えているためだ。

 RMJは、折衷案1は中古市場の実勢を反映していることから、残価が恣意(しい)的に引き上げられないことを条件で賛成するが、折衷案2については、市場実勢が低い機種がグルーピングによって相対的に高い残価が設定される恐れがあることから反対の意向を示す。


2つの折衷案でもキャリアやメーカーで意見が分かれているが、双方の主張に変化はない

 端末メーカーはどうか。Googleは折衷案1と2いずれも反対のスタンス。折衷案1は残価のばらつきを助長して複雑になる恐れがあること、折衷案2は数年後の市場価値が高い機種を事前に選定することが困難であることを理由に挙げる。Googleは、残価率の全端末一律化が最適だとする。残価の算定に過剰な労力をかけることなく、複雑さと運用負荷を解決できる一定率を導入すべきと述べる。

 サムスン電子ジャパンは、折衷案1は各事業者の恣意的な運用余地を残すことから反対し、分かりやすさと運用の容易さから折衷案2を支持する。市場価値の高い端末はRMJのデータを参照することで、公平性を損なわないとの考えだ。

 Appleは、前回会合と同様、一律での残価設定に強く反対し、「一律(定率)での残価算定は、長くご愛用いただける価値を持った質の高い製品を創り出しているAppleのようなメーカーに対し、不当な扱いをするものであると考える」と主張する。

 その上でAppleは折衷案1を支持する。適正な残価算定を実現するために必要な柔軟性を有するというのがその理由で、全く新しい機種については、RMJのデータに限らない、現場に即したデータを参照して公正な残価を決定できるとする。

 折衷案2については「強く反対」する。この案では、一定の残価率がベースになるため、価値が低い機種に不相当な補助を与えることで市場をゆがめ、不公正な規制の介入になると主張する。


Appleは一律での残価率設定に強い反対を示す

 大まかにまとめると、大手3キャリア、Google、サムスン電子ジャパンは統一された残価率設定を支持し、楽天モバイル、RMJ、Appleは機種ごとの残価率設定を支持するという形で意見が真っ二つに分かれている。

総務省は機種ごとのグループを細分化する方法を提案

 機種ごとに残価を設定するとユーザーにとって複雑になり、事業者の負荷が増すというデメリットがあり、残価率を統一すると正しい残価を設定できなくなるリスクが残り、双方の言い分に理がある。

 総務省はこうした意見を踏まえ、論点を整理する。現在の残価設定は、各社の裁量によって機種のグループ化を認めているため、過度な残価を設定でき、端末値引き上限を超える割引が発生しうる。一方、残価率を一律にすると、本来価値の低い機種の残価率を引き上げることになり、これも必要以上に利益を供与することにつながる。従って、全機種の残価率を一律化する案は難しいとの考えを示す。


総務省は、端末グループを細分化することで、負荷を抑えながら市場価値に合った残価を設定できるとの意見を示す

 そこで一部で挙がっている案を参考に、端末のグループごとに共通の残価率を算出し、そのグループを細分化することでキャリアの裁量を排除できるのではないか、との考えを示す。

 総務省はグループ化の例として「iPhone」「Android」「タブレット」「スマートウォッチ」を示している。これをさらに細分化するとなると、例えばiPhoneならスタンダードモデル/eシリーズとPro/Pro Max、Androidならミッドレンジ、ミッドハイ、ハイエンドなどに分ける例が考えられる。ただ、同じ価格帯でもリセールバリューが異なる機種もあるので、完全に公正な制度とはいいがたい。


当初示していたグループ化の一例。今回の提案は、このグループ化をさらに細分化するというものだ

 キャリアの裁量を排除しながら、公正な残価率設定の基準作りが求められているが、そのハードルは極めて高い。総務省は「算出ルールの在り方は通信市場だけでなく端末市場にも大きな影響を及ぼすことや現場の対応に関わる負担なども考慮し、どのような進め方が適当であるかを含め、引き続き関係者の意見を聞きながら検討を進めることが適当ではないか」と総括している。

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