「Webコンテンツを現実空間に拡張」 セカイカメラのAPI公開(2/2 ページ)
セカイカメラのAPI「OpenAir for Publishers」が法人向けに提供される。企業のWebコンテンツをセカイカメラと連携させ、「現実空間に拡張できる」とし、グルメ情報や不動産情報を扱うパートナー企業などとの先行事例が公開された。
イベント後半では、APIを利用した情報配信で先行的にパートナーシップを結んだ、ぐるなび、ネクスト、カカクコム、東急ハンズ、リクルートの取り組みが紹介されたほか、Webベースのメモ管理ツール「Evernote」を提供する米Evernoteとの連携を予定していることも明かされた。
ぐるなびは約5万3000件の飲食店情報をエアタグ化し、配信を開始した。店のあるエリアにエアタグが浮かび、タップすれば写真やテキストで店の紹介や予算、クーポンの情報などが確認できるほか、URLをタップすれば、Webページに遷移して詳細をみることも可能だ。まずは最低限のオーソドックスな機能を実現した段階だが、「もっと楽しめることができるはず」と、企画に関わるぐるなびの吉田真由美氏(企画 Department 取締役企画部問長)は期待を寄せる。
グルメ情報としてはリクルートの「FooMoo by HotPepper」の情報もセカイカメラで見られるようになる。こちらはラストオーダーの近い店舗の情報を表示しないようにするなど、利便性を高めるための工夫が凝らされている。「今の場所で、いらない情報は削って表示したいと思った。2次会に行こうと思ったとき、ラストオーダーが終わっていることが良くあるが、そういう時にセカイカメラを使うと便利なようにした」(リクルート 街の生活情報カンパニー 領域戦略部 集客戦略グループ ゼネラルマネージャー 渋谷昭範氏)
さらに物件情報として、ネクストの「HOME'S」、カカクコムの「スマイティ」、リクルートの「SUUMO」の情報がエアタグになった。HOME'Sでは同サービスが有する物件情報の一部をエアタグ化。スマイティはすべての物件情報が正確な緯度経度を持っているため、正確な位置に情報が表示されるという。SUUMOは新築のマンションの情報をその場所に表示し、街で見かけた建設途中の物件の情報が分かるようになっている。
店舗や物件の情報以外にも、面白い取り組みが紹介された。東急ハンズは、各店舗が扱うグッズの情報を“それを使う場所”にエアタグとして表示させる。例えば、公園にはフリスビーを、バーベキュー広場ならばダッチオーブンを表示するイメージだ。「家でダッチオーブンを見てもあまり気持ちは盛り上がらないかもしれないが、森の中で寒い思いをしている中なら“欲しいな”と思う」と東急ハンズの長谷川秀樹氏(IT物流企画部 部長)は話す。
リクルートはHotPepperやSUUMOに加え、「カーセンサー」の中古車情報をエアタグとして配信を開始し、「じゃらん」の旅行情報も3月24日から配信予定と、4つのサービスをセカイカメラと連携させた。カーセンサーでは各中古車販売店舗の場所にエアタグが浮かび、内容を見るとその店舗で販売している中古車が写真付きで見られる。じゃらんは宿泊施設の空室情報をエアタグ化し、温泉や観光地の情報も順次提供していくという。さらに、じゃらんのキャラクター“にゃらん”のエアタグを「各観光地に1つずつ用意して、“にゃらんを探せ”といったものもやりたいと企画している」(渋谷氏)とのことで、実現すれば宝探しゲームの感覚でセカイカメラを使った旅行が楽しめるようになりそうだ。
Evernoteとの連携は、今年後半の実現を目指して作業を進めており、Evernoteに保存した位置情報付きの写真を、エアタグとしてその場所に投稿できるようになるという。機能の詳細はまだ明らかになっていないが、米Evernoteのフィル・リービンCEOは、「Evernoteはこれまで自分1人に閉じたサービスとして展開してきたが、セカイカメラとの連携は自分の記憶を人とシェアできるようにする初の試みとなる」と説明した。
モバイルARの多くがナビゲーション的なサービスとしてスタートした中、ユーザー参加型の“草の根AR”として注目を集めたセカイカメラだが、今後は企業による有用な情報、さらに“電脳キャラクター”のようなエンターテインメント性のあるサービスを盛り込んで付加価値の創出を図る。また、コンテンツが増加することでセカイカメラのAR空間では、処理速度の向上やフィルター機能の改善、情報の重み付けの仕組みがますます重要になっており、今後のバージョンアップではこうした機能が随時追加されていくはずだ。
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