すべての人に価値あるスマートフォンを――京セラが考える「本当の使いやすさ」とは:開発陣に聞く「DIGNO ISW11K」(2/2 ページ)
京セラが満を持して国内市場に投入するAndroidスマートフォン「DIGNO ISW11K」。おサイフケータイやワンセグ、赤外線などケータイでおなじみの機能を盛り込みつつ、防水やWiMAXにも対応した意欲作だ。その開発背景を担当者に聞いた。
カラーリングといえば、DIGNO ISW11Kはスマートフォンでは珍しいグリーン系の色をメインカラーにしている。これについて八谷氏は「性別や年代を問わずに好まれるため」と解説する。
「定番であるブラック系統、女性向けのピンク系統はすぐに決まりましたが、あと1色をどうするか。いろいろ議論がありましたが、ほかにあまりない色で、見栄えの良い緑系統を採用しました。さらにスペシャル感を出すために、陽の当たったオリーブの葉のような、深みがあってツヤやかな緑にしています。自然のものをモチーフにしており、どなたにも選んでいただけると思います」(八谷氏)
このオリーブグリーンの色味を量産品で出すために、かなりの苦労があったという。単に濃い緑として塗装すると、暗く黒っぽい色になってしまう。ある程度の明るさ(輝度)を持たせる必要があるが、明るくすると淡い緑になってしまう。
「3色とも塗料の調合そのものだけでなく、塗装時の吹き付け方も工夫しました。下地の処理も特別に変えて、通常よりも1工程手間がかかっています。オリーブグリーンはさらに手間がかかってしまい、結果的にもう1工程増やしました」(八谷氏)
カラーへのこだわりはグラファイトブラックとブロッサムピンクにも現れている。グラファイトブラックはツヤの消し方を変えた3種類のカラーリングを施しており、背面はソフトフィール加工という手に吸い付くような仕上げを採用した。ブロッサムピンクでは逆に、塗料にパールとガラスの粒子を混ぜて、キラキラ感を強めている。
八谷氏は仕上げにこだわる理由について、「スマートフォンの背面パネルは面積が広いため、塗装にこだわらないと、ボヤっとした表情の端末になってしまいます」と明かしてくれた。
Androidでも京セラらしく
同じOSを搭載するAndroidスマートフォンは、メーカーやキャリアが違っても、ユーザーインタフェース(UI)や基本的なアプリがほぼ共通という特徴がある。それだけに、ハードウェアや搭載アプリの変更で製品の差別化を図るしかない。
DIGNO ISW11Kではカメラのフィルター撮影や、京セラのフィーチャーフォンでおなじみのフォント切り替えなどの機能が盛り込まれたが、なによりも「すぐ文字」がAndroidでも実現されているのが特長だ。
すぐ文字は、メールやネット検索などの機能を選んでから文字を入力するのではなく、文字を入力してからどんな機能を使うのかを選ぶもの。簡単な操作でメモや思いつきなどを記録できる、京セラの携帯電話やPHSには古くから搭載されていた。しかし、スマートフォンへの搭載は必ずしも規定路線ではなかったという。
「もともとすぐ文字は、ダイヤルキーのある携帯電話向けの機能でした。小さい画面でメニューをたどらなくても、ダイヤルキーを押せば簡単に文章が入力できるようにしたい。そういう目的のものです。しかしスマートフォンでは、UIも画面サイズも違うので、『スマートフォンでもすぐ文字は有効か?』という声があったのは確かです」(黒木氏)
携帯電話とスマートフォンでは確かに操作の“作法”が異なる。十字キーでメニューを選び、機能を選択する携帯電話に対し、スマートフォンは目的のアイコンをタップすればアプリが起動する。ではなぜDIGNO ISW11Kにはすぐ文字が採用されたのだろうか。
「UIも変わりましたが、SNSなどの普及で、端末の使い方も多様化しました。Twitterの“つぶやき”など、スマートフォンでもすぐに文字を入力したいシーンは多い。となると、スマートフォンでもすぐ文字は必要じゃないか――という結論に至りました」(黒木氏)
とはいえ、携帯電話のすぐ文字とスマートフォンのすぐ文字では使い方が異なる。DIGNO ISW11Kのすぐ文字は、ロック画面からアイコンをドラッグ・アンド・ドロップすることで、すぐに文字入力ができるアプリだ。もちろん、ホーム画面にもアプリのアイコンがあり、ここからもすぐに起動できる。文字を入力したあとは、ランチャーから連携アプリを起動して、テキストを利用する。連携アプリはメモ帳やメールだけでなく、アドレス帳やネットの検索が用意されており、後からインストールしたアプリの登録も行える。
すぐ文字はあくまで代表的な例だが、このほかにも手書き入力、省電力設定、伝言メモなど、スマートフォン利用で気になる部分も、フィーチャーフォンの経験を生かした工夫が盛り込まれている。
まだISW11Kしか存在しないDIGNOブランドだが、黒木氏はバリエーション展開も検討しているという。今後は、コンセプトや想定ユーザーを絞ったモデルの登場も期待できる。
また、DIGNOブランドでの海外展開も視野に入れていると話す。京セラの海外向けスマートフォンは日本国内でも開発されており、同社にとってDIGNO ISW11Kが初めて開発したAndroidというわけではない。どのようなモデルで海外展開を果たすかはまだ想像の域を出ないが、先行している北米市場のフィードバックを受けたDIGNOシリーズが登場する日は近いかもしれない。
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