いよいよ子どもの「スマホ化」が始まった(1):小寺信良「ケータイの力学」
急速なスマートフォン化の流れは、子どもたちにも広がりつつある。ある女子高生向けサイトではユーザーの9割以上がスマホに機種変したという。Wi-Fiが使える点が評価されているが、それは従来のフィルタリングが機能しなくなることを意味する。
女子中高生向けポータルサイト、「ふみコミュ!」が今年4月に調査した結果によれば、この半年で携帯電話を機種変した中高生のうち、スマートフォンに変更した子が93.3%に上るそうである。衝撃的な数字ではあるが、この結果を純粋な調査として見るには、分母が少なすぎること、また調査対象地域が明らかにされていないことから、1つのコンテンツとして見る方がいいだろう。
これに続くアンケート企画では、原宿でのインタビューがいくつか掲載されている。これによれば、スマートフォンのほうが利用料が安くなること、Wi-Fiが利用できるメリット、「PocketWiFi」に代表されるモバイルルーターも利用できることなどが上がっており、子どもといえども高校生ぐらいになれば、普通にスマートフォンらしい使い方が理解できると言えそうだ。
ふみコミュ!は、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)の認定サイトではないため、フィルタリングが機能している携帯電話ではアクセスできない。そういう事情から、キャリアのフィルタリングが無効となる、スマートフォンでのWi-Fi利用へ誘導しているのではないかという見方もできる。
このようなポータルサイトが子どもにスマホやWi-Fiの利用を進めることに対しては、基本的には表現の自由の範疇であるという見方はできる。その一方で、結果的にフィルタリングが機能しない方向へ誘導することは、青少年インターネット環境整備法の理念に反するのではないだろうか。
スマホ以外の選択肢があるか
以前もこのコラムで指摘したが、青少年のインターネット利用に関しての安全性を考えると、フィーチャーフォンで実現された環境はかなり強力である。その一方でスマートフォンの場合は、Wi-Fiへの逃げ道があるため、事実上スマートフォンで構築された青少年保護の仕組みが機能しなくなる。
しかし実際に今、小学生向けキッズケータイを除いて、中高生にフィーチャーフォンを与えるという選択肢がありうるのか。
先月、主要携帯キャリア3社からこの夏に向けての新モデルが発表された。スマートフォンで最大勢力のiPhoneは、Appleの発表待ちであるため、基本的にはAndroid搭載スマートフォンの発表会といってもいい。5月末から市場投入される各社の新モデルのうち、スマートフォンとフィーチャーフォンの数を調べてみると、以下のようになる。
キャリア | スマートフォン | フィーチャーフォン | 新製品情報 |
---|---|---|---|
KDDI(au) | 6 | 3 | au 製品ラインアップ |
NTTドコモ | 17 | 1 | docomo 発売予定の製品一覧 |
ソフトバンクモバイル | 4 | 3 | SoftBank 新製品ラインアップ |
KDDI(au)、ソフトバンクモバイルはまだフィーチャーフォンという選択肢も考えられるが、NTTドコモドコモのフィーチャーフォンは、キッズケータイが1機種のみである。既発売モデルも併売されるため、市場からフィーチャーフォンが消えるわけではないが、選択肢は着実に減っていく状況にある。
次回は保護者のスマートフォンに対する見方をご紹介する。
小寺信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia +Dモバイルでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。
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