“パズドラ”登場でスマホのゲーム市場はどう変わったのか?(2/2 ページ)
幅広いユーザーに人気のスマホゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ」。なぜこんなに人気なのか、そしてゲームアプリ業界にどんな影響を与えたのか? パズドラ登場の以前と以後を比較した。
カジュアルゲームでも収益機会が生まれた“パズドラ以後”
パズドラが人気だけでなく、高い売上を上げるようになったのには、獲得したユーザーも大きく影響している。
カジュアルゲームのプレーヤーは非常に裾野が広いが、“旬”の時期が短い上にアプリ自体が無料であることも多く、お金を支払わずに遊ぶユーザーがほとんどだ。一方でユーザーの特化が進んだソーシャルゲームや、先に触れたキングダムコンクエストなどは、積極的にゲームをプレイするコアユーザーがお金を支払うことで高収益を上げている。
ではパズドラはどうなのかというと、カジュアルゲームとソーシャルゲームの中間ともいうべき層、つまり“ゲームに少額のお金を支払う”人達を獲得しており、それが高い売上につながっている。事実、App Storeでパズドラのトップアドオン(アプリ内課金で購入されるアイテムのランキング)を見ると、1000円未満のアイテムが上位を占めており、1人当たりの支払額は決して大きくない。つまり裾野の広い層から、少額の課金を獲得することで、総合的に高い売上を上げているのだ。
パズドラのヒット以降、スマートフォンで人気のゲームにはいくつかの変化が出てきている。1つは、カジュアルゲームの要素を取り入れたゲームアプリの、収益化に対するハードルが下がってきたことだ。特にカジュアルゲームを楽しむ多くのユーザーはお金を払うことに消極的だったが、パズドラのヒット以降、ユーザーがゲームに課金をするという意識のハードルが下がっており、コア層向けゲームに偏っていた課金の幅が広がってきているのだ。
大きな変化を実感する出来事といえるのが、LINEの「LINE POP」が高い売上を上げたことだ。LINE POPはユーザー同士でスコアを競い合う、タイムアタック形式の3マッチパズルだ。従来こうしたカジュアルなゲームへの課金は難しいと見られていたが、LINEによる友人間の積極的なコミュニケーションに加え、ゲームに対する課金のハードルが低くなったことが影響し、日本でもカジュアルゲームで高い売上を上げられることを実証した。
さらに最近では、英King.comが提供するパズルゲーム「Candy Crush Saga」が、積極的な広告展開の効果などもあって人気を高め、売上ランキングの順位にも名を連ねるようになった。LINE関連のタイトル以外で高収益を上げるゲームが出てきてたことから、今後カジュアルゲームの収益化が一層進むと見ることができよう。
ゲーム性の向上で対抗するソーシャルゲームベンダー
もう1つの変化は、カードバトル系ソーシャルゲームを提供していたベンダーの多くが、ゲーム性を高める方向に舵を切りつつあることだ。もっともこれには、パズドラの影響だけでなく、アプリのフレームワークでWebベースのゲームを動作させるもの(ガワネイティブなどとも呼ばれる)をApp Storeが登録拒否するようになった技術的な理由や、2012年5月に起きた“コンプガチャ”にまつわる騒動でカードバトルと相性のよかったガチャの面白さを訴求できなくなったことなど、いくつかの要因が重なりあっている。
最近の傾向で顕著なのは次の2つだ。1つはパズドラ同様、ゲーム的な要素を取り入れてゲーム自体の楽しみを高めたもの。そしてもう1つは“ギルドバトル”などによって対戦の楽しみを強化し、ソーシャル要素を高めたものだ。
前者の場合、「ドラゴンコインズ」(セガ)のようにコインゲームを組み合わせたものや、「ドラゴンポーカー」(アソビズム)のように、ポーカーの要素を取り入れたものなど、さまざまなものが登場している。最近では「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」(KLab)が、“音ゲー”にカードによる育成システムを取り入れたことで、元となるタイトルの人気とともにコアなファンを獲得し、注目を集めた。
「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」は、音楽ゲームにカードによる育成などの要素を組み入れているのが特徴
(C)2013 プロジェクトラブライブ! (C)KLabGames (C)bushiroad All Rights Reserved.
スマートフォン向けとしては早い段階でギルドバトルを取り入れた「運命のクランバトル」。CMなども実施している
(C)Pokelabo, Inc. /(C)SEGA. All Rights Reserved.
後者のギルドバトルとは、何人かでチーム(ギルド)を組み、ギルド同士のバトルを1日に何度かプレイできるというもの。スマートフォン向けでギルドバトルを打ち出したゲームとしては、アソビズムの「ドラゴンリーグX」や、ポケラボの「運命のクランバトル」などが代表例として挙げられるだろう。
こうしたゲームの多くは、従来同様少数のコアユーザーから収益を上げるというビジネススタイルから、今の所大きく変化している訳ではない。だが人気パズルゲームをRPGとして展開した「ぷよぷよ!!クエスト」(セガ)や、“クイズ”という分かりやすい価値を取り入れた「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」(コロプラ)が、パズドラに比較的近いユーザーの消費動向を示すなど、中間層の獲得に成功するタイトルも生まれてきている。
パズドラのヒットには、ゲームとしての面白さはもちろんだが、そうしたゲームがヒットする土壌があったことが大きく影響している。かつて困難だったカジュアルゲームの収益化が可能となったように、今後もスマートフォンアプリを利用するユーザー動向の変化が、ゲームのヒットに大きく影響しているとみられる。フィーチャーフォンの時代から、モバイルコンテンツの動向変化は非常に早い周期でやってくるだけに、変化をうまく読むことができた企業が、次の大きなトレンドを生み出すことになるだろう。
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関連リンク
- 「パズル&ドラゴンズ」(ガンホー・オンライン・エンターテインメント)
- 「Angry Birds」(Rovio Entertainment)
- 「探検ドリランド」(グリー)
- 「キングダムコンクエスト」(セガ)
- 「サンシャイン牧場」(Rekoo Japan)
- 「怪盗ロワイヤル」(ディー・エヌ・エー)
- 「ドラゴンコレクション」(コナミデジタルエンタテインメント)
- 「おさわり探偵 なめこ栽培キット」(ビーワークス)
- 「LINE」(LINE)
- 「Candy Crush Saga」(King.com)
- 「ドラゴンコインズ」(セガ)
- 「ドラゴンポーカー」(アソビズム)
- 「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」(KLab)
- 「ドラゴンリーグX」(アソビズム)
- 「運命のクランバトル」(ポケラボ)
- 「ぷよぷよ!!クエスト」(セガ)
- 「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」(コロプラ)
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