中華“おサイフ”も秒読み段階!──2013年下半期の中国市場は「LTE」「NFC」に注目せよ:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
移動体通信事業者がスマートフォン中心にビジネスをシフトする中で、2013年後半は、中国でもLTEとNFCが本格的なサービスを開始する予定だ。
デュアルSIMを求める中国ユーザーの理由とは
中国移動のLTE対応モデルは、TD-LTEとFDD-LTEのデュアルLTEモードにも対応するが、このデュアルLTEモードをサポートするチップセットは、QualcommやMediaTekなど国外勢だけではなく、HiSiliconなど中国メーカーからも多数登場する予定だ。スマートフォンも7月以降になってTianyuやOPPO、Meizuなど中国メーカーからTD-LTE対応モデルの発表や発売予定のアナウンスが相次ぐなど、商用サービス開始に向けて準備は整いつつある。中国移動 会長の奚国華氏は、9月にも11モデルのスマートフォンを投入する考えだが、10月の国慶節に合わせて4G免許を正式交付、というシナリオもあるかもしれない。
一方、中国聯通と中国電信(チャイナ・テレコム)へのLTE免許交付は、中国移動のTD-LTE開始後となる見込みだ。両社は、FDD-LTEの事業展開を希望しているものの、中国政府はTD-LTEの採用を義務図けるとしており、両社は現時点でのLTE投資に積極的ではない状況だ。だが、3Gの先を見越して4G顧客獲得競争に力を入れたい中国電信は、四川省などでFDD-LTE方式のテストを開始している。中国電信 会長の王暁初氏によると「スマートフォンは、TDとFDDのLTEに対応するデュアル、データ端末はTD LTEだけに対応するシングルSIMモデル」とすることで、TD-LTEの採用を促す政府に従いつつ、FDD-LTEをビジネスの中心とする考えのようだ。
中国でも始まる「おサイフ」サービス
スマートフォンの普及とともに、新しいサービスも中国で始まろうとしている。それが、NFCを使った電子マネー決済サービスだ。中国移動は、2013年から本格的にNFCを使ったモバイル決済サービスを強化しており、中国でもスマートフォンで小売店での購入支払いや交通機関での乗車券利用場面の普及が始まろうとしている。
中国のモバイル決済サービスは、2010年5月に開催した上海万博に合わせて、中国移動が独自方式により商用サービスを開始したのが始まりだ。このときに中国移動が採用したのは、SIMを用いながらも国際標準のNFCとは異なる、2.4GHz帯を使った「RF-SIM」方式だ。TD-SCDMA同様に、中国独自技術を育成して将来は海外展開も視野に入れていたものの、当時のスマートフォンのおける処理能力の限界や店舗のPOS設置コストがかさんだことから普及は進まなかった。
その一方で、中国最大の決済会社でもある中国銀聯(チャイナ・ユニオンペイ)は、NFC方式で中国聯通や中国電信と組むなど、国内のモバイル決済サービスは「中国移動 VS 中国銀聯」という2方式が混在する状況になった。中国移動が独自方式に固執したのは、中国銀聯を通さないことで、決済手数料収入を自社で独占したいという考えもあったのだろう。
しかし、スマートフォンの普及とともに、AndroidやWindows Phone OSがNFCを標準でサポートする方向に向かったことから、中国移動もNFCの採用を決定した。2012年には、中国銀聯と組むことを正式に発表し、通信業界と決済業界の最大手が連携することで中国のモバイル決済サービスの普及は大きく前進することになった。
中国移動版“おサイフケータイ”は「手機銭包」と呼ぶ。すでに自動販売機や一部都市の地下鉄、バスなどで採用している。対応するスマートフォンも現在は複数モデルが登場していて、今後も中国メーカーからNFC搭載モデルが多数登場する見込みだ。
中国でも、交通機関の乗車券は非接触ICカードの採用が進んでいるほか、商店での非接触ICカード決済端末も中国銀聯が「Quick Pass」として広く展開している。地方都市ですら、レジでの現金盗難紛失や計算ミスをなくすためにショッピングセンターのフードコートでICカード食券をあらかじめ購入して利用するなど、キャッシュレス化は意外と進んでいる。中国のモバイル決済サービスはスマートフォンとNFCの普及によって2013年後半からさらに本格化していくだろう。
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