スマートフォン限定「地震津波の会」にみるウェザーニューズの“堅牢性”と“柔軟性”:動かすのは使命感(2/2 ページ)
ウェザーニューズの「地震津波の会」は年額3110円で津波レーダーなどの高度な災害情報を確実に利用できる。しかし、その価値は「情報」だけにとどまらない。
フラットな組織でサービスを短時間で作り上げる
これらのサービスは、テンプレートが決まっているわけでなく、災害の状況に合わせて必要なサービスをイチから立ち上げているという。これがなぜ可能なのかについて、ウェザーニューズ グループリーダーの西祐一郎氏は、「スタッフのやる気、モチベーション」と答えている。スタッフの使命感が支えているという認識が多くのスタッフに共通している。
緊急時に提供するべき情報やサービスのアイデアを、短時間で検討して立ち上げるには、組織として決断の速さも必要だ。ウェザーニューズでは、オペレーションフロアにパーテーションをほとんど設置せず、“端から端まで”見通せるオープンなレイアウトにしているほか、スタッフに上下関係を置かないことで、スタッフから多くのアイデアが出るようにしておき、かつ、決定が速くできるようにしていると西氏は説明している。「短期間でサービスを立ち上げるのはイニチアチブの文化。上司の命令で仕事だからやるのではなく、このサービスを自分がやりたい、自分で立ち上げたい、という動機から動き始める」(西氏)
通常、迅速に決定して短期間で成果を出すためには、明確なトップダウンの命令系統が必要と考えてしまうが、緊急時には、全スタッフが同じ目標に向いているので、意思決定も速いと西氏は説明する。もちろん、それに加えて、ウェザーニューズが蓄積しているサービス立ち上げのノウハウや、自社ですべてを用意した開発環境による作業効率の高さもある。
なお、オペレーションセンターやデータセンターの災害時バックアップとして、大阪(メインバックアップセンター)、名古屋(オペレーションバックアップ)を用意して、幕張のグローバルセンターにダメージが発生したときは、バックアップ拠点にすぐ切り替えるようになっている。
ウェザーニューズが相手にする気象は、ときとして予想を超える災害を起こしてしまうことがある。近年、その動きは極端で、わずか30分で成長した積乱雲が100ミリを超える豪雨をもたらすことも少なくない。急変する気象から災害を減らすためには、臨機応変にすばやく対応できる体勢を確保しなければならない。
ウェザーニューズは、ユーザー参加型のリポートと自力で構築した観測網によって、気象現況データをリアルタイムで収集することで、予報の精度を高めるとともに、いったん災害が発生しそうなときには、必要なサービスを短時間で立ち上げる機動力を発揮する環境と組織と士気を有している。ウェザーニューズのモチベーションと携帯端末を駆使するユーザーの参加意欲が連動したとき、さらに有効な気象情報サービスが誕生することになるだろう。
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