寺尾COOに聞く――ワイモバイルがSIMを単体販売する狙い、通信の世界で目指す世界(2/2 ページ)
ワイモバイルは、大手3キャリアに並ぶMNO(キャリア)だが、ソフトバンクのMVNOとしてSIMカード単体の販売も行っている。そこには、ワイモバイルが12月4日から提供する「シェアプラン」と大きなつながりがあった。詳細を寺尾洋幸氏に聞いた。
グループ全体の周波数を効率的に使う
―― シェアプランのような料金プランがあると、確かにそこを狙った端末は作りやすそうですね。勝手に作って、勝手に売るというところが出てきても不思議ではないと思いますし、実際SIMロックフリー端末も市場で増えています。
寺尾氏 周波数帯を考えると、ソフトバンクと旧イー・アクセスの電波は、グローバルのコアバンド(Band 1、Bnad 3、Band 8) です。ですから、いろいろなものを作りやすいですし、海外で作ったものを持ってきやすいと思います。
―― 周波数のお話が出たところで伺いたいのですが、今、ワイモバイルには複数のSIMカードがあります。旧イー・モバイルにそのままつながるものと、ソフトバンクの回線を使ったものに分かれていて、単体で販売されているのは後者です。ユーザーから見れば1つの料金プランで使えますが、この部分はどう整理していくのでしょう。
寺尾氏 グループ全体の周波数を効率的に使う流れの中で、ソフトバンクと旧イー・モバイル、両方が入ったものになっていくでしょう。実際、Nexus 6はソフトバンクと旧イー・モバイルの両方につながります(※発行されるSIMカードはソフトバンクのMVNOという位置づけのもの。Band 3はワイモバイルのものだが、ソフトバンクを経由してつながる)し、より合理的な方向になっていくでしょう。
お客さん目線で見ると、いいネットワークで、いいサービスが提供されるのがベストです。
―― MNOともMVNOとも言いにくい形ですね……。
寺尾氏 僕らは「相互利用」と呼んでいます。自身でインフラは作っていますし、ネットワークを借りている部分もあります。大きなくくりで言えばキャリアなんですけどね。結果として、今はソフトバンクのネットワークのいいところが出ています。彼ら(ソフトバンク)が「一番」と言っているネットワークで、一番の料金が提供できています。
―― 実際、MVNOをどう見えていますか。
寺尾氏 わが身を振り返ったときに、安さだけだとあっという間に行き詰ります。いい例がウィルコムで、AIR-EDGEというサービスを最初にやり、その後、だれとでも定額もやりましたが、3年、4年経つとコンペティターが必ず追いついてきます。そうなったとたんに、価値もなくなってしまいます。
MVNOのみなさんも、僕らもそうなのですが、常に新しい価値を生み出し続けられるかがポイントになってくるのだと思います。今日がよくても、明日があるのかは、こういうところで決まってくると思います。そこをどうするのかが非常に難しいテーマで、僕ら自身もそれを考えなければいけない立場の1人だと思います。
取材を終えて
このインタビューは、シェアプランの発表前に申し込んだもの。当初は「SIMカードの単体販売」という切り口で語ってもらおうと思っていたが、話を聞いてみると、こちらが考えていた以上に深い思惑があることが分かった。その後シェアプランが発表されたのは、周知のとおり。ここにつながる布石だったというわけだ。その先には、さまざまなデバイスがネットワークにつながる世界が想定されている。料金、サービス、端末でさまざまな挑戦をしてきたウィルコムとイー・アクセスを受け継ぐ会社だけに、ワイモバイルの今後にも注目したい。
一方で、周波数の利用方法については、疑問が残る部分もある。現状では、SIMカードによって利用できる電波が異なり、位置づけが少々分かりにくい。電波行政的に難しい面があるのかもしれないが、設備としてのネットワークは切り離してソフトバンクも含めた他社に貸し出しつつ、サービスはMVNOとして一本化した形で提供する方が、ワイモバイルらしさを発揮できるのではないかと感じた。実際、冬モデルではそうなりつつあるのだが、位置づけはより明確化してほしい。
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