総務省は10月19日、「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の第1回会合を開催。開催の背景には、安倍晋三首相が「携帯電話料金の家計負担が大きい」と発言し、料金の引き下げを検討するよう指示を出したことにあります。
会合の冒頭、総務大臣補佐官の太田直樹氏は「単に値段が高くなったから安くするというのではない。利用者の目から見て実際どうなのか、透明性、公平性を確保することを軸に議論いただきたい」と話しました。携帯電話業界に与える影響が大きいことから、このような発言をしたことがうかがいしれます。
つづいて総務省の担当者から、携帯電話市場の現状について説明がなされました。トラフィック量は従来よりも増加しているいま、実際のデータ使用量は1GB未満がほとんど。しかし、そうした利用実態に関わらず過去のプランを継続利用しているため、7GBの料金プランが選択されている状況であるとのこと。
MVNOにも触れ、現在の市場シェアが全体の2.1%でしかないことを明かし、さらなる普及に向けてMVNOが自由なプランを設定できるようにすることや、キャリアが持っている加入者データベースの解放に向けた話し合いを勧めるなどの方針も示されました。
ほかにも会合のなかでは、販売奨励金による過度な安売り競争や各種サービスのキャリ決済、端末代が実質的に通信料金から回収されているという構造の問題点についても説明。すでにこうした問題に対し解決が行われた事例として、イギリスのEEやアメリカのベライゾンがとり行なっているプランについても紹介しました。
これらの説明を受け、出席した有識者たちからは「iPhoneユーザと他の端末ユーザに対する割引に、どうして大きな違いがあるのか」「地方ではライトユーザがなかなかMVNOに出合えない。契約者に優しく、かつ欲しいものだけがシンプルに契約できる仕組みが提供されるべき」「これだけ高額な販売奨励金を出している国は他にないのではないか。諸外国の販売状況がどうなっているのか調査が必要では」など、さまざまな意見や要望などが出されました。
タスクフォースでは、今後、会合に出席した有識者たちから出された意見や要望をもとに、キャリア、MVNO、消費者団体などに対する調査やヒアリングを進め、年内には問題の解決に向けた方策を打ち出す予定とのこと。
日本国内のスマホ(移動通信)のインフラ基盤は諸外国と比較すると、非常に充実しているため、どこへ行っても繋がるというのは誇るべきポイント。一方で、MNPばかり優遇する状況が続くと長期利用者からの不公平感を生むため、ここのバランスはとる必要があると思われます。
次回以降、キャリア(MNO)やMVNO事業者も出席すると見られていることから、各社がどのような考えを持っており、どのような改善策を見出すのか? SIM通では引き続きウォッチしていきたいと思います。
(文:佐野正弘)
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