高速AFで明るく撮れる――「世界最強」を目指したGalaxy S7/S7 edgeのカメラ:開発陣に聞く
Galaxy S7/S7 edgeで大きく進化した機能の1つが「カメラ」だが、従来モデルから何が変わったのか? その中核をなす「デュアルピクセルセンサー」と「明るいレンズ」を中心に、Samsung Electronicsの担当者に話を聞いた。
Galaxy S7/S7 edgeで大きく進化した機能の1つが「カメラ」だ。開発者インタビューの前編では企画全般の話を聞いたが、後編ではカメラ機能に焦点を当て、カメラ開発グループ 主席のカン・ビョングォン氏と同主席のキム・ミョンウォン氏に話を聞いた。
「デュアルピクセルセンサー」のメリット
Galaxy S7/S7 edgeの有効約1220万画素CMOSのアウトカメラには、「デュアルピクセルセンサー」を搭載している。そもそもこのデュアルピクセルセンサーとは何なのか? このセンサーでは、1つ1つの画素が「撮像」と「位相差AF」の2つに分割されており、人間の左目/右目のように、2つの情報を駆使してAF(オートフォーカス)を行える。
Samsungの従来機では、ピントを合わせる位相差センサーが画素全体の0.7%しかなかったが、デュアルピクセルセンサーでは100%に向上し、全ての画素に位相差センサーが搭載される。おかげでAFが高速になり、暗い場所でもピントを合わせやすくなった。Galaxy S7/S7 edgeのデュアルピクセンサーは、キヤノンの一眼レフカメラ「EOS 70D」に採用されているものとベースとなる技術は同じで、スマートフォン向けにカスタマイズしている。
カン氏は「基本的な技術は(キヤノンと)似ていると思うが、モバイル用として独自に開発した。サイズが小さいモバイルカメラの中にデュアルピクセルセンサーを入れることが難しかった」と苦労を語る。また、キヤノンから技術提供を受けたわけではなく、Galaxy S7/S7 edgeのセンサーはあくまでSamsungが独自に開発したものだという。
今回、デュアルピクセルセンサーを搭載したことで、Galaxy S6/S6 edgeの1600万から1220万に画素数が下がってしまった。カン氏はその理由について「1つのピクセルの中にサブピクセルを入れるデュアルピクセルセンサーを搭載するにあたり、最適なセンサーサイズを考慮したため」と答える。つまり1600万画素を維持するには、さらに大きなセンサーが必要になるというわけだ。
「今回のカメラは1200万だが、実質的には2400万のデータを処理する」(カン氏)ため、端末にかかる負荷はGalaxy S7/S7 edgeの方が高いといえる。ミッドレンジ以下のスマートフォンで同様のセンサーを搭載できるかについては「高速処理が必要な部分があるので、ある程度のハードウェアスペックが必要になる」(カン氏)とのこと。
性能アップしたとはいえ、画素数だけを見るとスペックダウンしているので、Samsungはそれを補って余りあるほどの進化であることを、ユーザーにうまく伝えていくべきだろう。今後、Samsungのスマートフォン全てにデュアルピクセルセンサーを搭載するかについては「現時点で全機種に載せる計画はない。さまざまなニーズを考慮する」(カン氏)と述べるにとどめた。
デザイン面に目を向けると、0.46ミリというわずかな厚さながら、カメラレンズが出っ張っているのが惜しい。これはデュアルピクセルセンサーを実現するために大きいセンサーが求められたためのようだ。「デザインとカメラ性能は衝突する部分がある。Galaxy S6/S6 edgeでも(カメラが)出っ張りすぎているという意見があったので、ものすごく努力して抑えた」とキム氏は成果を強調した。
明るさもS6シリーズから大きく向上
新しいセンサーと合わせて注目したいのが、明るさの向上だ。Galaxy S7/S7 edgeではアウト/インカメラどちらもF1.7のレンズを採用し、F1.9のGalaxy S6/S6 edgeより25%明るさがアップしたという。さらに、画素ピッチ(サイズ)がGalaxy S6/S6 edgeの1.14マイクロメートルから1.4マイクロメートルに拡大したことで、より多くの光を取り込めるようになる。F値と画素ピッチ両方の進化により、Galaxy S6/S6 edgeと比べて、トータルで明るさが95%向上したという。
Samsungのスマホカメラが目指す方向性は「暗い場所で明るく撮れること」と「高速でAFができること」の2つであり、これらを満たす手法として、デュアルピクセルセンサーの搭載とF値/画素ピッチのアップに踏み切ったというわけだ。
SamsungはGalaxy S7/S7 edgeのカメラ性能を手軽に試せるよう、韓国のGalaxy Studioなどで、写真を入れた暗いボックスの中で、Galaxy S7/S7 edgeと他のスマホの写真を撮り比べられるデモを実施している。「iPhone 6s」と「HUAWEI P9」で試したところ、Galaxy S7/S7 edgeの方が撮影前と撮影後どちらも、明るく写せたことを確認できた。ただ、あくまで互いのスマホ画面を見比べた感想なので、正確に比較するには写真の実データを検証する必要がある。
料理をおいしそうに撮れる「フードモード」を搭載
暗い場所で明るく撮れることは分かったが、スマホの撮影シーンは暗所だけではない。日常生活の撮影シーンで、画質にこだわったところはあるのだろうか。キム氏は「料理の写真に力を入れ、フードモードを搭載した」と答える。具体的には「色をより豊富に出して、料理関連のAFを強化した」という。日本に限らず、海外でもSNSに料理の写真をアップロードするトレンドがあるため、料理に特化したモードを追加したそうだ。
細かいところでは、最大撮影サイズの比率を従来の16:9から4:3に変更したが、これは「SNSでアップデートをするときは4:3が多い」「人物を4:3で撮りたいというニーズがあった」(キム氏)ためだという。
写真展を開催して若い女性にもアピール
Samsung Electronicsは、Galaxy S7/S7 edgeのカメラ性能を一般ユーザーにも体験してもらうべく、韓国のソウル市内で「ハート7 DAY & NIGHT with S7(『ハート』は記号を使用)」という写真展を5月8日までの期間限定で実施していた。有名ブロガーや一般ユーザー10人が、韓国各地でGalaxy S7/S7 edgeを使って撮影した写真を展示するというもの。日本では原宿・表参道のような若者が行き交う通り沿いの建物(1フロア)に写真を展示し、中に入ると若い女性と男性がアテンドしてくれる。写真展の内装は白やピンクが基調となっていて、展示されているGalaxy S7/S7 edgeの実機もピンクゴールドが多かった。「ハート7」という名称からも、若い女性にアピールしていることがうかがえる。
ここでもGalaxy S7/S7 edgeのカメラを来場者が体験できるよう、先述の撮影ボックスを使ったり、スマホを三脚に固定して暗室で撮影を試したりできる。暗室ではiPhone 6sやHUAWEI P9とGalaxy S7 edgeを撮り比べてみたが、互いの画面で見比べた限り、確かにGalaxy S7 edgeの方が明るく撮れているようだった。
「現在のスマートフォンでは一番良いカメラ」
競合他社のスマホカメラは研究しているのだろうか。例えばHuaweiは新製品を発表する度にiPhone、Galaxyと比較しながら、自社の優れた部分をアピールしている。キム氏は「さまざまな比較サイトで弊社端末や他社端末の写真がアップされているので、チェックしている。『Galaxyのカメラのこういう部分が劣っている』という意見が書き込んであったら、改善しようと努力している」と答える。
デジタルカメラやスマートフォンの画質を評価しているフランスの「DxOMark」では2016年5月17日時点でGalaxy S7 edgeのカメラが、「iPhone 6s」や「Xperia Z5」を抑えて1位(88点)としている。キム氏も「現在のスマートフォンの中では一番いいカメラだと思っている」と胸を張る。また、機種名を伏せたブラインドテストでも、Galaxy S7 edge方が高画質という評価を得られたという。
Samsungが「世界最強」とうたうカメラの実力は、実際に検証してみないと結論は出せないが、「デュアルピクセルセンサー」と「明るいレンズ」は、使ってみたいと思わせるには十分な武器だと感じた。Galaxy S7/S7 edgeのカメラは、新しいステージに進んだといってもいいだろう。
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