Y!mobileのAndroid One「507SH」に触れて分かったこと――使いやすいが課題も:石野純也のMobile Eye(6月27日〜7月8日)(2/2 ページ)
ソフトバンクがY!mobileブランドで「Android One」を7月下旬に発売する。3月に発売した「iPhone 5s」と並ぶ主力商品に位置付けられる。Y!mobileの狙いを解説するとともに、実機のファーストインプレッションをお届けしたい。
実機を触って分かった507SHの「普通さ」
そんなY!mobileの主力機種に位置付けられたAndroid Oneの507SHだが、実際にはどの程度の実力を持った機種に仕上がっているのか。発表会後に、ソフトバンクから実機を借り、本稿執筆までの間、約1日利用できた。ここからは、そのファーストインプレッションとともに、Android Oneの将来性にも触れていきたい。
端末の形状は、au向けに導入された「AQUOS U」に似ている。寺尾氏のコメントにもあったように、比較的安価な端末に位置付けられているためか、金属やガラスといったハイエンドモデルにありがちな素材は採用されていない。触った印象は、樹脂だとすぐに分かるが、逆に柔らかい印象も与える。樹脂とはいえ、塗装に凝っているためか、あまり安っぽさは感じなかった。
ディスプレイサイズは5型で、ハイエンド端末に比べればコンパクトだ。普段は5.5型の「Galaxy S7 edge」を使っていることもあり、小さいと感じた。筆者は手も大きいため、実際、片手でもスムーズに操作できる。ただし、iPhone 6sと比べると、横幅がややある。Y!mobileのもう1つの主力であるiPhone 5sと比べると、その違いはさらに大きくなる。この点を考えると、iPhone 5sより、ディスプレイのサイズを重視したい人向けといえるだろう。
操作感は良好だ。ミッドレンジだが、チップセットには「Snapdragon 617」を採用しており、性能はややハイエンド寄り。メインメモリも2GBあるため、アプリもスムーズに動いた。「AnTuTu Benchmark」でのスコアは4万2793。10万を超えている最新のハイエンドモデルには及ばないが、普段使いには十分な性能といえる。ディスプレイの解像度が720×1280ピクセルと、最近の端末の中ではやや粗いこともあり、CPUやGPUにかける負担が小さくなることも、スムーズな動作に貢献しているはずだ。
UIは、標準的なAndroidそのもの。もしAndroid 6.0のNexusシリーズを使ったことがあれば、一切戸惑うことはない。逆にUIは、シャープらしい味つけがゼロだ。これまで同社のAQUOSシリーズを中心に使ってきていた人には、なじみがないかもしれない。特に、ホームアプリのスクロールの方向が違ったり、カメラのUIが少々不親切だったりする点は、慣れるまで時間がかかるだろう。
個人的には、シャープのUI「Feel Home」はAndroidの標準から少し離れすぎていると感じていたため、こちらの方が操作はしやすい。また、デザインという観点でも、通知やアイコンがゴチャゴチャしておらず、ディテールまで統一感のあるプレーンなAndroidの方が好みだ。例えば、細かな点だとシャープの標準UIは、アイコンと画面下に並ぶドッグの左右幅が合っていないなど、気になる点は多々ある。そのため、素のAndroidの方が、むしろ受け入れやすかった。
ただ、このプレーンさは、端末の「個性」という意味ではマイナスにもなる。507SHをしばらく使ってから受けた印象は、よくも悪くも「普通」だということ。他のAndroidスマートフォンを使ったときのように、「あんな機能があった」「こんなアプリが入っていた」という発見がない。もちろん、それがなくても普通にSNSやゲームなどのアプリを楽しむには一切支障がないが、逆に言えば、同じことはNexusシリーズでもできる。
ハードウェアではシャープらしい個性もあり、ワンセグに対応しているのは分かりやすいところだ。視聴するにはアンテナケーブルをつける必要はあるが、テストした場所の環境がよかったためか、付けなくてもきちんとテレビは表示された。アウトカメラが1310万画素で、インカメラは500万画素。こちらは、最近のミッドレンジモデルの標準的なスペックといえるだろう。
ラインアップをどう構築するかに課題も残る
端末単体としてみれば、面白い試みで、操作性も悪くない。細かな点では、これだけのCPUを搭載している機種で、Wi-Fiが2.4GHzのみだったり、ストレージが16GBしかなかったりするのは残念なポイントだが、価格が安いのであれば諦められる仕様でもある。
ただ、一歩引いた視点で見て、Android Oneがラインアップとしてそろってくるとどうか。近いスペックのハードウェアだと、端末同士の差は、正直なところ分からなくなる。ソフトウェアでの違いがなく、独自機能を実装しにくいとなると、あとはCPUの性能や、メモリ、ストレージの量の勝負になってくる。シャープのようにワンセグを搭載したり、カメラの画質にもっとこだわったりといったことは可能だが、メーカーごとの差別化は確実に今よりしづらくなるだろう。
初のAndroid Oneという話題性もあり、しばらくはユーザーの目を引く端末になることは確かだ。一方で、ラインアップの中のAndroid One比率が増えてきたときに、どう評価されるのかは未知数でもある。この取り組みの成否が分かるのは、そのときなのかもしれない。
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