オープンな姿勢で「創造と進化」を推進する――NTTドコモ 吉澤和弘社長に聞く(3/3 ページ)
NTTドコモは通信事業のみを提供する“土管屋”の枠組みを超えて、モバイルITを軸にした複合企業体になっている。スマホバブルが終わり、モバイルIT産業全体のビジネス構造が変わる中で、ドコモはどこへ向かうのか。社長に就任した吉澤和弘氏に聞いた。
5G時代を視野に、人工知能とエッジコンピューティングに取り組む
―― 2020年代を見据えますと、ソリューションプラットフォームの次に「人工知能のプラットフォーム」があります。IBMのワトソン事業などはその好例ですが、ドコモとして人工知能分野のビジネスにはどう向き合いますか。
吉澤氏 現状でいいますと、ドコモの人工知能への取り組みは、コミュニケーション系や位置情報系など個別のソリューションの延長線上で開発しています。その先にワトソンのような(汎用《はんよう》的な)共通基盤としてのAIプラットフォームを作るかというと、それはまだ検討中であり、明確な方針はお話できません。しかし、AIが自動運転やパーソナルエージェントなど、今後出てくるであろう新事業の領域でとても重要なものであることは認識しており、重点的に取り組んでいきます。
―― 自動運転のようにクリティカルな領域では、AIに求められる精度や品質も高くなります。キャリアとしては、エッジコンピューティング(※ユーザーのそばに情報を処理するサーバを配置し、遅延の少ない処理を可能にする技術)という事業領域も見えてきますね。
吉澤氏 自動運転は即時性が求められますから、当然ながらエッジコンピューティングは視野に入っています。AIやエッジコンピューティングは5Gの事業とも密接に関わってきますので、2020年前後を1つのターゲットにしています。
個別に見れば、先日発表した「タクシー向けリアルタイム移動需要予測」のような人工知能を活用したものが形になってきています。これらソリューションごとの人工知能活用のソリューションを積み上げながら、最終的にドコモの人工知能事業を全体的にどう形作っていくのかを考えます。
「オープンで楽しく、強いドコモ」を目指す
―― 吉澤さんは新社長として、ドコモをどのような会社にしたいですか。
吉澤氏 今の経営環境や市場環境を俯瞰しますと、今後はドコモ単独で実現可能な領域は少なくなっていきます。そのような中で僕は、ドコモを「オープンで、受け入れる会社」にしたい。さまざまなパートナー企業と良好な関係を築き、アイデアやイノベーションをわれわれが広く受け入れていき、多くの人と一緒に次の未来を築くようなドコモを作りたいと考えています。これからの時代は、オープンイノベーションの考え方がとても大切です。
またドコモ社内に向けては、やはり「ドコモは楽しい会社でなければならない」と言っています。ビジネスが楽しめる、新しい事業にワクワクできるような雰囲気を社内に作ることも大切です。
そして、それらを支える屋台骨として、「ドコモは強い会社」にならなければならない。当たり前ですが、事業の持続性を担保するには、しっかりとした収益基盤が必要です。オープンにイノベーションを進める上でも、パートナー企業からの恩恵にお返しをする上でも、きちんと利益が上げられる健全健康な経営基盤を築いていきます。
―― われわれユーザーは、ドコモから新しくてワクワクするものが登場することに期待してもいいですか。
吉澤氏 それは当然です。次のドコモのテーマは「創造と進化」ですので、新しいサービスを積極的に打ち出していきます。期待していてください。
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