+dはいよいよ「まちづくり」に――NTTドコモ、仙台市とICT活用の連携協定を締結
ドコモと仙台市が、将来にわたって活力のあるまちづくりを推進することを目的とした連携協定を締結。防災・減災に向けた取り組み、地域活性化の取り組み、近未来技術の実証に向けた取り組みを行う。ドコモが推進する「+d」事業の一環で仙台市に貢献していく。
8月29日、NTTドコモと仙台市が、将来にわたって活力のあるまちづくりを推進することを目的とした連携協定を締結した。
本協定の締結にあたり仙台市の奥山恵美子市長は、「NTTドコモとはこれまでもさまざまな提携事業を行ってきたが、今回の連絡協定の締結により、協業の関係をワンランクアップしたい。仙台は(東日本大震災の)復興から5年半が経過し、新しい都市としての魅力をつけていかなければならない時期になっている。そこでドコモが持つICTの知見や技術は、(新しいまちづくりの)大きな推進力になると考えている」と述べ、期待感を表明した。
NTTドコモ吉澤和弘社長は、「今回の連携協定は、個々の案件ベースではなく包括的な形で広く(協業の関係を)結ぶことで事業推進がしやすくなる。ドコモは現在、さまざまなパートナーと新しい価値を生みだす『+d』の活動を進めているが、今回の協定はまさにその+dの一環。積極的に仙台市に貢献していきたい」と、協定の意義とドコモの姿勢を語った。
今回の連携協定において、重点的な取り組みは大きく3つある。
1つは防災・減災に向けた取り組み。ここではドコモ・インサイトマーケティングが提供する「モバイル空間統計」を用いて、ドコモの携帯電話ネットワークを使った人口統計情報に基づく防災計画などを策定。より効率的で効果的な災害への備えを行うという。自治体の立案する防災計画にモバイル空間統計のビッグデータを活用することで、より人口動態の実態に即した避難所の設置や防災マニュアルの策定を行っていく。
また、災害時のICT活用では、Bluetooth Low Enagy(BLE)を用いた近接通信ネットワークサービスの実証実験を実施する。これはスマートフォンのBluetooth機能を用いて近接する端末同士が自営のネットワークを構築するというもの。基地局や伝送路などキャリアのネットワーク設備が被害を受けた被災地でも、ユーザーの端末同士がつながりネットワークを作ることで、コミュニケーションが確立できるという。既に東北大学ではWi-Fiベースの近接通信ソリューションの研究開発を行っており、今後はドコモの研究開発部門と連携してBLEベースの新たなソリューションを開発していくという。
2つ目は地域活性化の取り組みだ。ここではドコモがこれまでモバイルICTサービスで培ってきた技術やノウハウなどのアセットを用いて、仙台の地元企業との新たなビジネス創出やスタートアップ支援などを行っていく計画だ。ドコモでは以前から、ドコモ東北支社が中心となって災害復興支援の一環として地元企業との連携や協業に注力していたが、そういった取り組みがより強化されることになる。
そして、3つ目は近未来技術の実証に向けた取り組みだ。ここでは仙台市が国家戦略特区であることを生かして、ドローン(無人航空機)を用いた映像ソリューションの技術検証および事業化に向けた取り組みを行う。具体的には、災害発生時の被災状況の確認や生活インフラの点検などでの活用を検討している。今後は仙台市とワーキンググループを立ち上げて、ドローンの運営主体や実証実験の規模などを詰めていくという。
「今後のビジョンでいえば、仙台市での+dの取り組みを進めながら、そこで培った技術やノウハウの実用化や事業化を視野に入れなければならない。そういう意味では、この1〜2年が(事業開発の)勝負であり、2020年が1つの区切りではないかと考えている。着実に成果を上げていき、将来的には他地域展開なども視野に入れていきたい」(吉澤氏)
ドコモは以前から、さまざまなパートナー企業や自治体とドコモのアセットを組み合わせ、新たな価値を創造する「+d」事業を推進している。とりわけ、2016年6月に就任した吉澤社長は+d事業の推進を先陣を切って行っており、自治体連携にも積極的だ。モバイルIT産業全体でIoTをはじめとする新事業領域の創出・拡大が注目となる中で、ドコモの+dの取り組みがどこまで広がるか。その今後を期待を持って見守りたい。
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