業界に衝撃を与えた「LINEモバイル」の向かう道――嘉戸社長に聞く:MVNOに聞く(2/3 ページ)
3月に発表されたLINEのMVNO参入のニュースから約5カ月半、ついにLINEモバイルのサービスがスタートした。9月の2万台限定のスタートから、どのような反響があったのか? 本サービスにどのように生かしていくのか? LINEモバイルの嘉戸彩乃社長に聞いた。
1GBのカウントフリーがLINEのみの理由
―― 3GB以上のコミュニケーションフリーのプランには、全てSMSが付いています。これはなぜでしょうか。
嘉戸氏 これはパートナーさんとのお約束で、Twitterなどはアカウントの新規作成時にSMSが必要になるからです。お客さまが使う際の保証としてつけてほしいというために入れています。われわれ自身はSMS認証をスキップできるようにしていますが、今回はパートナーとの体制もあり、(このようなプランが)生まれています。ただ、やはりサービスを開始してみて、データ通信だけがいいというお客さまもいたので、ここはこれから一緒にパートナーさんとお話していきます。
―― 料金プランが1GB、3GB、5GB、7GB、10GBという刻みになっていて、1GBはLINEのみがカウントフリーになっています。これはなぜでしょうか。
嘉戸氏 1GBのところになぜTwitterやFacebookが入っていないのかですが、これは月1GBの方が何を使うかの割合を見ているからです。1GBの(プランを契約する)方はやはりLINEで、TwitterやFacebookはほとんど使わない。逆に、ここにTwitterやFacebookを入れてしまうと、ヘビーユーザーがこのプランに来てしまい、価格を上げなければいけなくなってしまいます。そうすると、1GBの使い方をする方にとって本当にいいのかということで、ここは切り分けています。一方で、3GBから10GB使うような方だと、その割合が一定化してきます。
―― なるほど。ユーザーの使い方を見て、本当に1GB前後使うような人が便利になるサービスを想定しているということですね。結果として、その方が安く提供できるため、お互いにとっていい、と。他のMVNOとも単純比較が難しくなりますが、これも狙い通りでしょうか。
嘉戸氏 単純比較だと価格競争だけになってしまいます。一方で、お客さまの利用スタイルを追求したのがこのプランです。
―― ちなみに、1GBで500円という金額は、黒字になるのでしょうか。
嘉戸氏 なってますね。500円といっても、(MVNO)最安値ではありませんからね。ただ、Webならいいのですが、リアル店舗にどう出していくのかというのはあります。人件費もかかってきますからね。その辺は、リアル店舗とお話しながらになります。
店舗展開は「あえて間に合わせなかった」
―― ちょうど店舗のお話が出たところで、うかがいますが、実際、店舗展開はどうされていくおつもりでしょうか。
嘉戸氏 ローンチ前からお話はしてましたが、今、ちょうど準備をしているところです。
―― そこに、LINEならではというような売り方は何かあるのでしょうか。
嘉戸氏 お話してみないというところはあります。一方で、(量販店などに)期待されているのは、やはり集客力です。通常のMVNOだと40代前後か観光客しか来ないというところに、若い人を集められると期待されているところはあります。
―― 最初から店舗展開しなかった理由はありますか。
嘉戸氏 あえて間に合わせなかったというのが、第一の答えです。認知されるのには2カ月ぐらいかかりますが、その間、店舗に出していると固定費がかかります。かつ、品質を考えると、その分の帯域を用意しなければならない。最初にお話した持続可能性という意味では、そこをちゃんと絞って、コストコントロールしなければいけないと思っています。
―― LINEモバイル独自の店舗を出すという計画はありますか。
嘉戸氏 ちょっとどうしようかなと、思っているところです。店舗数を稼ぐという意味だと提携でもいいのですが、モバイルの体験や店舗に来て楽しいという体験は、やはり自分たちで持たなければ(提供)できません。ただ、なかなか厳しいところもあって、店舗を持つと回線品質に影響が出てしまいます。
―― それは、どこかでコストを削らなければいけないからということでしょうか。
嘉戸氏 はい。結局同じ値段で提供しようとすると、どこかでコストを削らないといけなくなるので、最終的には回線に影響が出てしまいますが、それは絶対にしたくないですね。
超ヘビーユーザーに対する帯域制御は?
―― LINEモバイル開始後、大手キャリアが20GB、30GBのプランを出してきました。ここについては、追随するようなお考えはありますか。
嘉戸氏 お客さんの声次第ですね。DMMさんもイオンさんも(大容量プランは)出していますが……。どういう風に仕立てるかだとは思いますが、あまり脅威に感じてはいません。逆にすみ分けができるという意味では、いいことだと思っています。確かにずっと動画を垂れ流しにしたいというような方にはいいのかもしれませんが、(MVNOだと)その分、他に影響が出てしまいますから。
―― こうした料金なども含め、プランニングには相当時間がかかったと聞きました。
嘉戸氏 当初は1、3、5、7GBにLINEフリーを入れ、TwitterやFacebookはオプションにするという案もありましたが、それは本当にいいのか。最安を作ってオプションを入れるというのもありましたが、誰が使うのか見えず、総額がいくらになるのかも分かりづらい。そういったことをいろいろ検討して、1本にすることを決めました。あとは、ネットワーク設計もずっとやってきて、マックス(ピーク)のときの帯域をどう抑えるかも考えてきました。それにはユーザー属性がバラけていないといけないですし、超がつくヘビーユーザーも防がなければなりません。
―― 超ヘビーユーザーを防ぐという観点では、帯域制御を入れているのでしょうか。
嘉戸氏 敵意があり、攻撃と見なされるようなものは制限します。ただ、普通のコミュニケーションをしている限りでは大丈夫です。24時間LINEの音声通話を使っても問題はないというぐらいの考え方はしています。また、アプリ側にも制御があり、もともと動画もそこまで長いものはアップロードできません。LINE側で普通にやろうとすると5分以内になっているので、そこも大丈夫だと思います。
関連記事
- 「LINEモバイル」の本格販売が前倒しで開始 記念にポイントプレゼントや端末セットの割引も
「2万契約限定」で9月5日からサービスを開始した「LINEモバイル」が、予定よりも10日早く本格販売を開始した。それを記念して、全てのLINEモバイル契約者にLINEポイントをプレゼントするキャンペーンや、セット販売端末の割引キャンペーンを実施する。 - 万全の態勢で臨んだ「LINEモバイル」に死角はあるのか?
「思ったよりも、ずっとちゃんとしている」というのが、LINEモバイルのサービス内容を聞いた率直な感想だ。通信事業者としての姿勢を明確に打ち出し、ユーザーにもしっかりサービスの仕組みを説明しようとしている。そんなLINEモバイルに死角はあるのか? - LINEモバイルは「通信の秘密」「ネットワークの中立性」に反する?――LINEがコメント
「LINEモバイル」はLINE、Twitter、Facebookが使い放題になるのが大きな特徴だが、「通信の秘密」と「ネットワークの中立性」に反する(恐れがある)という問題をはらんでいる。LINEが、この2つの問題についてコメントを発表した。 - 「LINEモバイル」で格安プラスαの価値を――LINEがMVNOに参入した理由
LINE、Twitter、FacebookのSNSが使い放題となるLINEのMVNOサービス「LINEモバイル」が提供開始。LINEはなぜ、MVNO事業に参入したのか? 数あるMVNOサービスの中で、LINEモバイルはどのように差別化を図っていくのか? - 月額500円〜でLINEが使い放題、「LINEモバイル」9月5日に提供開始
MVNOサービス「LINEモバイル」の詳細が発表された。先行サービスは9月5日14時から申し込める。「LINEフリー」と「コミュニケーションフリー」の2プランを提供する。 - “LINE無料”を打ち出した「LINE MOBILE」の衝撃――業界には大きな課題も
LINEが3月24日に「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」を開催した。そこで披露された大きなサプライズが、MVNO事業の「LINE MOBILE」だ。月額500円から、LINEのサービスが使い放題となるというインパクトのある内容だが、課題も残っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.