「MONO」を投入する狙い/Galaxy Note7の抜けた穴は?――ドコモの冬春モデルを読み解く:石野純也のMobile Eye(10月11日〜21日)(1/3 ページ)
ドコモ冬春モデルで特に注目を集めたのが、一括648円という破格の値段を打ち出した「MONO」。購入サポートという仕組みを使って、価格面にまで工夫が及んでいる。一方、Galaxy Note7の販売が見送りになったのは、ドコモにとっても大きな痛手といえる。
NTTドコモは、10月19日に冬春モデルの全13機種を発表した。テーマになっていたのが「MORE」。日本語にすると「もっと」という表現になりそうだが、端末に関しては「MORE variety」として、よりラインアップの幅を広げていく方向性が打ち出された。中でも注目を集めたのが、「648円スマホ」として破格の値段を打ち出したドコモオリジナルブランドの「MONO」だ。
キャリア間の差別化を図り、格安スマホにも対抗
MONOは、ドコモ初となるオリジナルブランドのスマートフォンだ。ドコモの吉澤和弘社長によると、「価格は安いが、丁寧に作り込んだ」のが特徴。製造こそ中国メーカーのZTEが担当しているが、企画から内蔵コンテンツに至るまで、ドコモ色が貫かれている。端末は「スマホとして最低限必要なものを見極め、極力シンプルにした」(ドコモ担当者)。背面にガラスを、ボタンにはアルミを使い、上質感も演出する。
機能面では、「快適に使えること」(吉澤氏)に重点が置かれた。プロセッサは、Qualcommの「Snapdragon 617」を採用。ディスプレイは4.7型のHDで、メインメモリが2GB、ストレージが16GBとなる。おサイフケータイやワンセグには対応しないが、日本向けの仕様としては防水・防塵(じん)が取り入れられた。細かな点では、ストラップホールも備えられている。Androidとしては珍しいマナーモードスイッチが側面に搭載されているのも、MONOの特徴だ。
ただ、それ以上にインパクトがあったのは、やはりMONOの価格である。このモデルは、「端末購入サポート」を前提にしており、一括での購入価格は648円(税込)。ランチ代にも満たない価格で、スマホが買えるというわけだ。もちろん、648円は素の価格ではなく、端末購入サポートには12カ月間同一機種を使い続けなければならない縛りもあるが、月々サポートのように、データパックで金額が変わることもなければ、割賦を組む必要もない。
仮に12カ月未満で機種変更したとしても、解除料は1万5876円(税込)と、そこまで高い金額にはなっていない。少なくとも、7〜10万円する機種を割賦で買い、24回にわたって月々サポートを受けるよりは、安価(もしくは同等)でかつ縛りが緩やかだといえる。
ドコモがMONOを投入した背景には、端末での差別化が難しくなっている現状がある。例えば、冬春モデルのラインアップを見ると、LGの「V20 PRO」はauから「isai Beat」として発売され、「Xperia XZ」は3キャリアで展開されている。言うまでもなく、iPhoneもiPhone 5s、5c以降は3社共通の端末だ。このような中、auはisaiに続くオリジナルブランドとして「Qua Phone」「Qua Tab」を開発。LGエレクトロニクスや京セラなどが端末の製造を手掛けている。
MONOにおけるドコモの取り組みは、これを一歩進めたものともいえる。端末だけでなく、購入サポートという仕組みを使って、価格面にまで工夫が及んでいるからだ。648円で縛りも弱いとなれば、フィーチャーフォンを使っていたユーザーが、お試し感覚でスマートフォンにすることもできる。価格の安さから、スマートフォンデビューと同時にMVNOに流出してしまっていたユーザーを引き留める防波堤にもなりそうだ。吉澤氏も、「場合によっては、格安スマホに対抗できるのではないか」と期待を寄せる。
また、総務省のガイドラインを受け、端末価格は上昇傾向にある。正確にいうと、ハイエンドにはハイエンドの、ミッドレンジにはミッドレンジの価格が設定されつつある。このような値付けに誘導していくことが、ガイドラインの目的の1つだった。今はまだ過渡期で、端末価格は必ずしも性能に比例していないが、中長期的に見れば、その傾向が強くなっていくことは間違いないだろう。
ガイドラインは「実質0円禁止」という面がとりざたされているが、実際には、もともとの価格が安いモデルを割引で0円に近くすることまでは規制していない。吉澤氏は「ガイドラインには廉価端末の扱いも明記されており、卸値3万円以下は適用外。実際にこの端末そのものは非常に安い」と話し、価格の正当性を力説した。複数関係者によると、ドコモの調達価格は1万円台で、意図的に0円に近い価格を狙って企画された端末のようだ。MONOは、こうした販売制度や市場環境の変化を受け、生まれた端末といえるだろう。
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